20話 新パーティー結成
ゾンビを全滅させ、街の危機を救った翌朝。
一晩中、街を駆け巡ってゾンビと戦った俺達三人はヘトヘトになったが、ギルドマスターが用意してくれた冒険者の宿で昼過ぎまで眠った。
そして目覚めると、ギルドマスターが待っていた。
「よう、お目覚めか。昨夜は感謝するぜ。早速だが、あんたらに客人が来ている」
「俺達に? 誰です」
「このメディスン街で一番偉いお方さ。【オークランド子爵】というのだがね。客室に待たせてある。急いで用意してくれ」
貴族様か? まずいな、ここにはエルフィリアとジョイスロウ殿下がいる。
結局、ジョイスロウ殿下はケガを負ったことにして顔に包帯を巻いて。
エルフィリアは極度の恥ずかしがり屋で、フードで顔を覆って話を聞くことになった。
もちろん、こんな状態では話などできないので、主に俺が会話をする手はずだ。
そんなやり取りも決めて、ギルドマスターに連れられて客室へ行くと、太った貫禄のある貴族様が待っていた。
「いやいや~。どもども、おはようちゃん。街を救った勇者様達」
ビクッ
『勇者様』だと!? まさか、ジョイスロウ殿下の身元を知っているのか!?
「ま、本物の勇者様方はどうやらリッチ退治に失敗したらしいがのう。結果このような始末になった以上、ワシら街の人間がどうにかせにゃならんのよ」
なんだ、ただの軽口か。
冗談でも、ジョイスロウ殿下の前で勇者はやめて欲しいぜ。
ほら、顔が引きつっている。
さて、この変な口調の子爵様。
エルフィリアを見ると、目をギラリとさせた。
「むおっ、そこな少女! チミ、ものすごく可愛くはないかね!? どかね。わが館でメイドとして働いてはくれんかね? なぁに、ワシの専属メイドは7歳から14歳! チミが加われば、いっそう我がメイド隊は華やぐのだがねぇ」
「ロ、ロリコン?」
「チミチミィ~、子爵に向かって『ロリコン』はいかんのではないかね? ワシのモットーは『クリーンな政治』と『クリーンな貴族』。これは稼ぐ手段の少ない幼い少女にクリーンな仕事を与える、いわば福祉事業の一環なのだよ」
『幼い少女限定』な所で、いい訳できんわ!!
「いえ、妹は回復魔法と浄化ができる『光魔法』の使い手です。冒険者としてやっていけるので、お気遣いは無用です」
「フム。では、チミたちは冒険者パーティーなのかね?」
「そうです。結成したのは最近ですが、三人で組んでやっています」
と、いうことにしておくことに決めていた。
身元を明かせないエルフィリアとジョイスロウ殿下をどうにかするには、こうするのが一番なのだ。
「リーダーは? パーティー名は何というのかね?」
「リーダーはこっちのジョイ………」
ガスッ ドスッ
二人に両脇から肘打ちをくらって睨まれた。
やっぱり俺にリーダーをやれって?
勇者と聖女をさしおいて、田舎冒険者がリーダー!?
王子様と貴族令嬢を部下に、平民下っ端が定位置のこの俺が!!!
「俺、シーザー・ツェッペリです。パーティー名は【駆ける疾風】」
パーティー名は壊滅した古巣の【疾風の仕事屋】を偲んで、こういう名にした。
「フム。では話が早い。チミたちにクエストを頼みたい」
「アカラチア山のリッチ退治……ですね?」
「ウム。こうまで街に被害を出し、あまつさえ勇者パーティーを返り討ちにした以上、AAランク認定をせねばならん。もしこれがSランクとなった場合、ワシは街の人間に退避命令を出さねばならんのだよ。これだけは、どうしても避けたい」
たしかAランク魔物が危険度最大モンスター。
その上のAAは緊急討伐を要するものである。
ちなみにSランク魔物は災害指定モンスター。
討伐不可能とみなされ、近隣住民に避難勧告が出されるって話だ。
「この街にいるAランクとBランクのパーティーにはすでに依頼を出した。が、チミたちにも昨夜の活躍を考慮し、それに参加してもらいたい。どかね?」
「受けましょう」
この話が来ることは予想していた。
そしてエルフィリアとジョイスロウ殿下の意志はすでに確認済みだ。
エルフィリアは自分がシェインのパーティーを離脱したためにこの事態が起こったことのケリをつけるため。
ジョイスロウ殿下は、エルフィリアがそこでどうなったかを確認したいとのことで(いや、彼女はここにいるんだけどね)。
「即決かね。ウムウム頼もしい。大金を賭けて投資したサザンクロス侯爵家のシェイン様が失敗した上に、この街まで失ったらワシは破滅だよ。金に糸目はつけんから頼んだよ」
「ああ。シェイン様は40もの幻霊石を使ってガチャ神の儀式を受けたと聞いたことがあります。子爵閣下もそれに投資なさっていたのですか?」
「それはサザンクロス侯爵家のみの数だの。ワシら派閥の人間が集めた幻霊石はだいたい百ほどになるかのう。いやあ、損をさせられたものだよ」
ほ、本当は140連ガチャ!!!?
どこまで狂っているんだよ、あのサイコパス勇者は!!!
「ま、さすがに『たった一人の人間にこれだけの貴重な幻霊石を使った』となれば、王家や世間の評判は最悪だからのう。チミらも秘密にしてくれたまえよ。ガッハッハ」
ここに王族も貴族もいるんですが。
しかし本当に、またシェインの傲慢を見せられた気分だよ。
俺の評価も最悪だ!!!
ともかく、俺達はアカラチア山のリッチ退治に赴くことになったのであった。




