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悪役令嬢は、王国最後の日に笑う。  作者: ももにく


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第7話 王家の罪


王都は、炎に包まれていた。


城門は破られ、民衆と兵士が衝突している。


怒号。


悲鳴。


鐘の音。


そのすべてが重なって、まるで王国そのものが叫んでいるようだった。


私は一人、王宮の地下へ向かっていた。


「アデリア様!」


背後からセレナの声がする。


「来ないで」


私は振り返らなかった。


「でも……!」


「あなたがここにいると危険よ」


「あなたも危険でしょう!」


「私は慣れているから」


「そんな理由――」


セレナが追いついてくる。


私はため息をついた。


「……仕方ないわね」


二人で地下への階段を降りていく。


地下へ進むほど、外の騒ぎが遠ざかっていく。


やがて、古びた鉄の扉が現れた。


扉には王家の紋章。


私は持っていた鍵を差し込んだ。


カチッ。


扉が開く。


そこには、大量の書類が保管されていた。


「何……ここ」


セレナが呟く。


「王国の記録よ」


私は棚から一冊の古い本を取り出した。


表紙には何も書かれていない。


ページを開く。


そこにあったのは――


百年前の王国崩壊記録。


「百年前にも……反乱が?」


「ええ」


私はページをめくる。


そこには、一人の少女の名前が書かれていた。


『聖女エレノア』


「聖女……?」


セレナが顔を上げる。


「この国には、昔から聖女が存在していたの」


「私だけじゃない……?」


「違う」


私は首を振った。


「あなたで七人目」


セレナの顔が青ざめる。


「七人……?」


「そして」


私は次のページを見せた。


そこには、六人の聖女の名前と、その最後が記録されていた。


一人目――病死。


二人目――行方不明。


三人目――国外追放。


四人目――処刑。


五人目――処刑。


六人目――死亡。


そして最後。


七人目――セレナ。


「……どうして」


セレナが震える。


「どうして、みんな死んでいるんですか?」


私は答えなかった。


代わりに、一番最後のページを開いた。


そこには、たった一行。


『聖女は王国を救うために必要である』


「……救う?」


セレナが呟く。


私は首を横に振った。


「違う」


さらにページをめくる。


本の最後に隠された紙が出てきた。


そこには、王家の印章。


そして――


『聖女の魔力を利用し、王都地下の魔導炉を維持する』


セレナが息を呑んだ。


「魔導炉……?」


「この国の魔法文明を支えているものよ」


私は続ける。


「王都の地下には巨大な魔導炉がある。王国中に魔力を供給している」


「じゃあ、聖女は……」


「燃料」


セレナの顔から血の気が引いた。


「そんな……」


私は黙っていた。


これが、王国の罪。


聖女は国を救っていたのではない。


王国を維持するために、利用されていた。


「でも、それなら……」


セレナが顔を上げる。


「どうしてアデリア様が悪役にされるんですか?」


「簡単よ」


私は一枚の書類を取り出した。


そこには、私の名前。


そして――


『次期聖女供給管理者』


セレナが絶句する。


「アデリア様……?」


「私は公爵令嬢として、この仕組みを管理する役目を与えられていた」


「そんな……」


「だから、ゲームのアデリアは聖女を嫌っていた」


私は記憶を思い返す。


ゲームのアデリア。


聖女を見るたびに怒り。


聖女を王太子から遠ざけ。


何度も嫌がらせをした。


でも。


今なら分かる。


あれは嫉妬だけじゃなかった。


「アデリアは、聖女を殺す役割を与えられていたのよ」


セレナが震えた。


「じゃあ……あなたは……」


「私はそれを変えるために悪役になることにした」


「え?」


私は笑った。


「聖女を虐める悪女になれば、みんな私を警戒する」


「……」


「私が権力を握れば、王家が隠しているものを調べられる」


「だから……」


セレナの目に涙が浮かぶ。


「全部……わざとだったんですか?」


「全部じゃないわ」


私は苦笑した。


「本当に腹が立ったこともあるもの」


「……ふふ」


セレナが初めて笑った。


その瞬間。


地下が大きく揺れた。


ゴゴゴゴゴ――!


「何!?」


天井から粉塵が落ちてくる。


私は顔を上げた。


「魔導炉が暴走してる」


「止められるんですか?」


「……分からない」


私は立ち上がった。


「でも、止めなきゃ王都が消える」


そのとき。


背後から声がした。


「止める必要などない」


振り返る。


暗闇の中から、一人の男が現れた。


黒いローブ。


王家の紋章。


そして――


見覚えのある顔。


「……財務長官?」


男は笑った。


「惜しいな、アデリア嬢」


「何が?」


「私が王国を壊そうとしていると思っていたことだ」


男はゆっくりと手を上げた。


「王国を壊すのではない」


その瞬間。


地下の奥から、巨大な魔力の奔流が吹き出した。


男は笑う。


「新しい王国を作るのだ」


私は剣を抜いた。


「……そう」


そして、初めて本気で笑った。


「なら、あなたの計画を全部壊してあげる」


その瞬間。


王都全体を覆うほどの魔力が、地下から噴き上がった。

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