DAY37(日)11月5日
DAY37(日)11月5日
今日は天気が良く、トモミの事を迎える日としてはなかなかにいい日になった。
トモミの親が車でトモミのことを10時に連れてきた、そして、トモミの事を後部座席から下ろし、両親は大量の荷物を玄関付近に適当に投げ捨てる様に置いたあと、一言二言だけで車を発進させてそのまま家に帰っていった、まぁ、家が近いからいつでも家に帰れるし、そこまで感傷的にはならないか。
ワンダーエッグに記録が入っていたから記しておく。
「ハラさん、これからよろしくお願いいたします。」
「あぁ、こちらこそよろしくね。」
今日から一緒に暮らすということになるが、トモミのその顔からは緊張がありありと見て取れて、それにこれからの事への不安やその他諸々が心配なのだろう、ということを考えたら仕方ないかと思い直し、トモミのことを家の中に入れる。
その際にワンダーエッグに荷物を回収、複数のごみ袋やそのあたりの段ボールといったものに入ったそれらを持たせながら家に上がったからか、トモミがその荷物の一部を奪いとるように受け取り玄関を上がった。
複数回往復してトモミの荷物を二階に上げる、その際に成体の人型をとれる卵たちに手伝ってもらっていたが、それをトモミは申し訳なさそうな顔をして戸惑いを見せていた。
トモミの部屋は階段を上がり廊下を曲がって突き当り右側の部屋で、広さは6畳、子供の部屋としては申し分ないだろう。
ちなみに私の部屋とは、中としてはつながっていないが、部屋を出てすぐのところに私の自室がある、なお、研究室は階段を上がってすぐで、その卵を寝かせたり研究したりする部屋は8.2帖ある部屋を使っており、研究室内には別のそれぞれの部屋に続く扉が3つはあり、その中の一つが卵のメンテナンス部屋である。
そして研究室内にある別の部屋に続く扉には、一部屋を除いて研究室内からしか入れず、そこの一つに資料室があるみたいな感じだ。
そんなことは置いといて、荷物の中でもトモミの部屋に置いた方がいいものを運び込んでから一階へ行き、適当に紅茶を入れて出す。
「それで、これからのことで何か質問はあるかい?」
ダイニングと地続きに存在するリビングのソファに座りながら聞くと、先に向かいのソファに座っていたトモミが意を決したように聞いてきた。
「今まで色々とありすぎて聞けませんでしたが、私のアリスはどうなりましたか?」
それが何のことかわからず一瞬思考が停止する、思い出すためにしばらく目を中空にさまよわせ、記憶を呼び起こす。
「ありす?……っと…………あぁ思い出した、トモミのドリームエッグか、もちろんしっかり順調に治療しているよ。
今は前に来てもらった研究室で寝ているね、見てみるかい?」
言い終わって紅茶をすすると、トモミが頷いたから、コップをソファ近くのテーブルに置いて立ち上がった。
「それじゃ、見に行こうか。」
共に治療ポッドがある場所に行くと、そこにはほとんど傷がふさがっているトモミのドリームエッグがあった。
「アリス!」
トモミは治療ポッドに駆け寄り、そこから離れたくないと言いたげな様子をしばし見ていたから「気が済んだら戻っておいで。」とだけ告げて私はリビングに引き返してきた。
そのまま約20分、紅茶のティーバックで同じものを何杯か出しながら飲みつつ待っていたら、トモミが戻ってきた。
「気が済んだかい。」
「はい、これからは一緒に居られるから、ジッて見ていなくてもいいかなって思いまして。」
その顔は、憑き物が落ちたかのように晴れやかだった。
「そうか。」
微笑みを浮かべながら言った後に、ふと思ったことがあった。
「ところで、新しい食器類もあった方がよかったよね、買わずにすっかり忘れていたけど。」
すぐに使うだろう荷物をほどいたが、そこにトモミの食器類は一切なく、この家には基本客人用の食器類というものが乏しく、基本専用の食器というものが私のものと卵のものだけなのだ。
客人用になると、全て紙皿や割りばしとなり、コップ類しかまともなものがない。
「そうですね、ないままでは不便ですね。」
トモミは何も問題ないけれども、できれば専用のものを持ちたいな、という顔をしたままの会話の後すぐにご飯の時間となったため、いつも作っているものを作るため料理を始める、それを横からトモミが見ているが、正直ここ最近は料理を作るのが面倒くさくなっているのもあって、結構大雑把になっているのだ。
「えっと、味付けとかしないんですか?」
「あぁ、卵用だからね、コンロ三つと電子レンジ、及びオーブン大活躍だよ。」
言いながら適当に切った食材を耐熱容器に入れて加熱する、そうしている間に三種類のグループ分けをしてある食事を作る。
色々としている間に1時間が経過していて、そうしてようやっと料理が出来上がった。
「さて、人の食事も作るか。」
そう言って、適当に味付けをした汁と、いつ買ったか忘れたが乾麺のそばをゆでたやつを適当に盛り合わせて出す。
「ちゃんと消費期限切れていないやつ使ったからおいしいと思うよ。」
「ちゃんと消費期限が切れてないやつを使ったからおいしいとおもうよ……?」
その発言を拾ってこちらに疑惑の目をむけてくるのはやめてほしい。
「気にしないで食べた食べた!今回は割り箸で勘弁ね。」
サブで使っている大き目のどんぶりの中に盛られたそばを見てたトモミだが、周りにワンダーエッグとドリームエッグが全て集まって椅子や所定の場所が埋まっていくのに驚いた顔をしていた。
「どうかしたのかい。」
「いえ、こんなにいたんだとか、色々ありますが、この状況に少し驚いただけです。」
「そうか。」
確かに全ての個体を見せたことはなかったかと思い出し、それだけの会話の後、みんなでいただきますをしてから食事を始める、その時に十分すぎる問題が起こったが、弁明として正直、人型の卵たちの箸の持ち方なんてあまり気にしたこともなかったから、ついこの間といい今といい、箸を使わずに素手で食べようとしている。
一応テーブルマナー教えたんだけどなぁー、なんて思っていたら、それにトモミが言及してくる。
「ハラさん!今までこの子たちにどんな教育を施していたんですか!?」
「どんなって……こいつらは動物と同じなんだよ?確かにお箸の使い方は覚えさせた方がいいかもしれないけれど、私も忙しくてね、そこまで気が回らなかったんだよ。」
そんな意味不明な言い訳をしながら会話をしている間にも、出された食事を素手で掴んで食べていくうちの子たち。
「この子たちの名前は?」
「なまえ?あぁ、椅子に座っているのは私の方に座っているのがリオン、カゲリ、テラ、トモミ側に座っているのはイルル、テリクス、シンだよ。」
私が箸をおいて指で指しながら教えていくと、それぞれがトモミの方を見て、それぞれの反応を示す。
そんなやつらにトモミが張り切ってお箸の使い方をレクチャーし始めたから、私も自分の両隣にやることとする、不思議そうな顔をしている人型の子たちに必死になってレクチャーしているトモミは、今まで未開の土地で過ごしていた人たちにナイフとフォークを教える西洋人のごとき形相で、必死さに笑ってはいけないのに笑ってしまった。
そんな昼食を終えて、しこたまトモミに怒られまくり、幻滅した等を言われ、私が今後の改善を宣言したのちに、お箸を使う前に既にべたべたになっていたみんなの手を洗ってやってから、トモミと共に食器を買いに出かける。
その道中なにか話すことはないかと言葉を探したが、結局話はせずにホームセンターについた、ホームセンターで無難なお茶碗やお箸、マグカップなどを購入したが、私とは違うものを選ぶように言ったら、安価なかわいらしいお茶碗を買っていたため、お箸は値段を気にせずに買わせたが、それでも比較的に安価なものを選んでいた。
マグカップはさくらトモミのイニシャルがピンク色で書いてある白いマグカップを選んで買ったようだった。
ほかに買うものはないかふらふらしてから帰途に就く、帰る前に見つけた子供用のお箸やスプーン、フォーク、お茶碗をワンダーエッグとドリームエッグのために買った、トモミ曰く、「動物から人型になったのならば、人間としての道理を教えなければ生きていけない。」だそうだ。
それに肯定するとともに、なぜか習得できなかったテーブルマナーのことを思い、疑問が浮かんだが、トモミの言い分に理解を示し、トモミが言ったものを一つ一つ選びながらワンダーエッグとドリームエッグに買い与えることになった。
ちなみに、色もそれぞれ違うものを買った。
家に帰り、買ったものを食器洗浄機で洗えることを確認してから洗う、食洗器可の食器類かを確認せずに買っていたため焦ったが、全て大丈夫そうだった。
全ての洗い物を食洗器に入れ終えて、起動させた後一息ついてからトモミの部屋の片づけを手伝う、買っておいたタンスの中に全ての洋服は入ったし、一応部屋の中に元から存在したクローゼットの中も綺麗にしておいたから、その中に制服も入れられたみたいだ。
そんなこんなで、できるところまで片づけを終え、ごみ袋も段ボールもあと1つでほかは収納を終了した夕食の時間、これも手作りで料理を作っていく、それをトモミは手元を見ていて、トモミのことをほかの警戒心の高い卵たちが監視するように見ていた。
一通り出来上がった料理の内半分を明日の朝食に、ほかは全て今食べることにする、全てのもののそれぞれ専用のお皿に移した食事が温かい空気をはらみ、室内に漂う。
そして、ささやかながらにトモミのことを迎えた歓迎会が開催された。
私がこれから家族となるトモミのことを全ての卵に宣言、トモミに自己紹介をさせると、それら全てを登録したらしい卵たちが、急激にフレンドリーになり、それぞれが笑顔や無表情での歓迎を始める。
トモミはなんともむず痒そうな顔をしていたが、これからの生活、トモミは我が家の卵たちと共に過ごしていくということで、トモミの所有する卵に変化が訪れるのは当然の必然、イレギュラーは研究にはあまり望ましくないが、今回はいいサンプルが手に入るということでいいだろう。
食事を交えた歓迎会も終わり、お風呂の時間、その時に事件は起こった。
「ハラさんなにこれ!なんですかこれは?!」
トモミが風呂場に行ったかと思ったら、廊下にある扉が開いた音の後にバタバタと私の元へと走ってくるトモミの足の音が聞こえた。
トモミが怒鳴りながら私のすぐ近くまで詰め寄るが、トモミの怒りは風呂場近くの脱衣所に集約しているようで、まさか自分のズボラさがこんな時にあだになるとは思わなかった、私の見た目上の服のほとんどはドリームエッグに服装を任せているとはいえ、下着やその他洋服の洗濯物が山になっているのを忘れていた、それをトモミに指摘され、本日何度目かのガチ説教をされた。
「ごめんなさい……これからは気を付けます……。」
正座をさせられた私は、まだ脱いでいない状態のトモミに頭が上がらない、それどころか既に上下関係ができつつあるように感じた。
「そうしてください!全く、ハラさんを一人にしておくとロクなことにならなさそうですね!」
中学生に家事についての怒号を浴びせられる28歳、適当な生活をしてだらしなくしていたことが悔やまれる。
「朝にテレビで確認したところ明日は天気もいいらしいので洗濯!お願いしますね!」
「は、はい!」
私の声が上ずりながらの了解を聞き取ったのか、一通り注意を言うだけ言って、トモミはお風呂に入りに行く、中学生こわ~。
トモミがお風呂に入っている間に卵の解析をしたり連絡が入っていないか見たりした、そこには特になにも来ていなかったり、解析も順調で異常値を示しているハジメが唯一回復系の系譜をたどっている状態を除けばいたって普通の数値を示していた。
ハジメ以外にも気になる数値もあったが、それもあまり気になる範囲ではない。
そんなことをしていたら、一号がトモミが出たことを教えてくれたため風呂に入りに行く、出た後に卵たちを適当に休ませるために卵を置いている部屋に皆で行く、そこにトモミもついてきた。
私が合言葉を言って全ての動物型をした卵を元の卵型に戻して寝かせている間、トモミは自分のドリームエッグを治療ポッドの外から熱心に見ていた。
「もうすぐで治るから、心配しなくていいよ。」
心配しているだろうかと思い、安心させるように告げるが、言葉をかける前にトモミは既に安心しきった顔で卵を見ている。
「あんなにバッキバキだったのに、もうこんなに治ってるんですね、本当にありがとうございます。」
トモミは見るのをやめないまま、この中に入れる前のことを思い出しているのだろう、目が思い出すかのような色をしたままお礼を言ってきたので、その後ろ姿に気にするなと言葉をかける。
「さて、そろそろ自分の部屋に行きな、明日も早いんだろう。」
「そうですね、もう寝ます。」
トモミと共に部屋を出て、私は出た部屋の扉の外で立ち止まり、トモミが廊下の先にある自室へと歩いていき、振り返りざまに「おやすみなさい」というトモミに対して手を振り「おやすみなさい」を告げ、トモミが自室の扉を開けて入り、閉まったことを確認した後に研究室へと戻る。
明日はトモミの学校が終わったら担任と顔を合わせるために学校に行かなければ、あと、トモミから言われた洗濯もやらなければ、そして、Childと接触をするために連絡が来ていないかを見なければ。
今月は先月よりも忙しくなりそうだ、そんなことを思いながら解析を進めて、夜も更けたからもう寝る。




