DAY36(土)11月4日
DAY36(土)11月4日
トモミから返信があり、今日の10時には会えるとのことだったから、用意をして出迎える用意をする、やってきたトモミは両親を連れており、その手には荷物があったから、今日引っ越しだとでも思ったのだろうか。
懐にいた五号の中にたまたま音声が入っていたから書いておく。
「ハラさん、こんにちは。」
「こんにちは、トモミちゃん、ご両親もおそろいで。」
トモミがお辞儀をしたが、トモミの両親はその場から微動だにしないで微笑んでいる、いっそ気味が悪かった。
「今日御呼ばれしたのは、トモミのことを預かってくれるからですよね。」
預かるとは言っているが、体の良い厄介払いの間違いだろう、とは思いつつも一応否定する。
「今日は最終確認のために呼んだのであって、今日中に引っ越しというわけではありません。
最短で明日にはこちらに引き取る用意がありますが、どうするかということですね。」
それにトモミの両親はあからさまに面倒くさそうな面持ちになるが、それをすぐに隠した二人は、にこやかに頷いた。
「はい、トモミにも了解は取ってありますし、すぐにでも引っ越すことができるなら、明日にでも荷物を入れてしまいましょう。」
その手に持っている荷物は一体何だとは思わなくはないが、トモミにも意志を確認する。
「トモミちゃん、これから生活の場がここになるかもだけど、いいのかな。」
トモミは諦めた顔で頷いた。
「わかりました、それでは、トモミちゃんに部屋を案内しますので、外でお待ちいただけますか?」
トモミから視線を移してご両親に向けたら、両親が軽くこちらを非難してきたから、一応中に入れる、その前にワンダーエッグとドリームエッグを卵の状態にして、一つの部屋に置いてからにしたかったから一旦、一人で家の中に入り、隠すものを隠してからサクラ一家を家の中に入れた。
「随分と広い家に住んでいるんですね。」
「はい、この家は元々事故物件で、安く購入できたんです、立地もいいですし、快適な住まいですよ。」
というのは嘘で、組織からワンダーエッグとドリームエッグを研究する際に余っていた豪邸をそのまま譲り受けただけだから、そのほとんどが研究のための部屋となっており、正直使っていない部屋はことごとく物置と化しているだけだ。
豪邸(笑)なところもあり、ただだだっ広いだけの部屋が二階にあったり、一階には居間はあっても応接室がなかったりと、なんともアンバランスな家である。
生活のための品は全て一階に集約されており、二階の私の部屋以外の全てのスペースは、ワンダーエッグとドリームエッグの研究のために使っている部屋がほとんどなため、二階がごちゃごちゃに対して、一階はわりとまともだったりする。
なお、一階にいるときには和室でゴロゴロしているのをよく見たりしている。
ちなみに、卵を隠したのは研究部屋で、鍵がついているのだ。
とりあえず、二階にあるトモミの部屋まで行き、扉を開ける、そこはそこそこに広い女の子の部屋が広がっていた。
「ここがトモミちゃんの部屋になる予定の部屋です、なるべくトモミちゃんが気に入るような感じにセッティングしましたが、なにか不都合があれば言ってください。」
トモミとその両親を入れたら、トモミは驚いた顔をしながらも感動した様子になり、両親もうなずいていた。
「このおっきなクマの人形、誰のですか?」
不思議そうな顔で聞いてきたため、少しだけばつが悪そうな顔をしてしまう。
「トモミが好きかなと思って、いらなかったら私の部屋にでもおいてね。」
正直、幼いころの記憶の中で、人形を買ってほしかったが、買ってもらえなかった、というものが私の中にあったから、ついトモミに巨大な人形を買ってしまったのだ、サンドバッグでもいいから可愛がってほしい。
「いえ、ありがとうございます。」
トモミは落ち着いた様子ではあるが、何やら感動した様子を感じたため、トモミのことを置いて両親と部屋を出る。
「トモミちゃんに部屋は与えなかったのですか?」
トモミから聞いたお願いを踏まえた上で私が聞くと、トモミの義父がにちゃりと笑いながら頷く。
「あぁ、そうですね、トモミには居間のソファで寝てもらっていましたから、部屋なんていらないと思って。」
「そうですか。」
なんか、トモミの感動が分かった気がした。
「それで、これがトモミちゃんの部屋を作るのにかかった費用です、これ、後で請求させてもらいますね。」
そう言いながらレシートを渡したら、それを見た両親がいきなり気が狂い始めた。
「こんなお金、トモミに出すわけがないだろう!」
「自分の子供なのに、出せないんですか?」
驚くと共にそこまで強く言うかという疑問が出る、比較的大きい声だったため、トモミに聞こえないか心配になった。
「俺の子じゃないのに、なんで出すと思った!」
それにため息が出る、再婚相手の子供だってことを理解しているのだろうか。
「わかりました、それなら払わなくてもいいです、義理でも家族をそのように扱うことに対して疑問を持ちますけどね。」
相手に睨みつけられるが、それほど怖くは無い、何に対してだかはわからないが、むしろかわいそうだなと思った。
「教育費などは話し合いでこちらに渡してくれるとも言っていましたが、そんなものがなくともトモミちゃんのことを世話することには変わりません。」
二人のことを見るが、心底どうでもいいと、目で言っていた。
「……が、正直、お金を出してくれると言っていたのはあなた方だったように思うのですが、それは聞かない方がよい……ということでしょうか?」
それに、男が鼻でせせら笑ったから、呆れてため息が出た。
「トモミの事を厄介払いできることに、これ以上ないほどの安堵があるが、それにお金をかけなくていいということも加わったら、本当にうれしいことだね。」
お金を請求してやろうか、どうせこいつらはトモミに金をかけるだけの価値がないと考えているから、一泡吹かせたくなった。
「ところで、トモミちゃんの事、どう思っているかお聞かせ願えますか?」
私が苛立ちを抑えながら聞いたそれに、トモミの義父が答える。
「厄介な子供だ、今となっては我が家にはいらない、邪魔なやつだ。」
歯に衣着せぬ物言いにため息が出る、トモミが自宅に戻れる日は来るのだろうか、もしかしたら、時間が立っても戻れないかもしれない、むしろ、ずっと我が家にいた方がいいのかも、肩を竦めた後に私は扉の方を向く。
「それでは、トモミちゃんと少しお話しますので、一緒に聞きますか?」
「えぇ、一緒に聞かせてください。」
男と話している間、ずっと黙ったままだったトモミの母親が口を開き、そういった、こんな糞男と結婚したのにはそれなりの理由があるのだろうな。
室内に入ると、一通り見渡したらしく、ベッドの梯子に上り、上から周りを見ていたのを、こちらが開けたと同時に降りたらしい、トンっという音と共に降りてきたみたいだった。
「どうかしましたか?」
「まだカーテンとか、カーペットとか、枕やシーツなんかを買っていなかったから、一緒に買いに行こうと思って、どこか行きたい場所はないか?」
そう言うと、遠慮をしているのか、びくついた感じになった、両隣を見てみると、トモミを睨みつける両親がいた。
それに、窮屈な思いをしてきたのかと思ったから、両親に提案してみた。
「どうでしょう、トモミちゃんに備品を買うためのお小遣いをあげるというのは。」
いうと、こちらを睨みつけた後に一言。
「トモミにはそのようなものはいらないでしょう、部屋を与えただけで十分です。」と、母親が言った。
「そうですか、それでは、トモミちゃんの家にあるトモミが普段使っている必要なものを全て持ってきていただけますか?」
そういうと、手に持っていたほどほどにある荷物をこちらに置いた。
「これがそうです。」
ほかにあるか聞いたら、あとは服があるとのことで、それらも後で持ってくるらしい。
「そうですか、それでは、明日にはこちらでも受け入れの用意ができますので、その時にでも。」
そう言った後に、トモミに向き直る。
「それじゃあ、一緒に買い出しに行こうか。」
「ど、どこに……?」
トモミが戸惑った顔で聞いてくるから、私はキョトンとした顔を作る。
「どこにって、家具屋、欲しい家具はないのかい?」
トモミはすぐに首を振って拒否した。
「ないです!十分です!」
それに、色々含みを込めた笑みを浮かべる。
「トモミに選んでもらうために色々と買うのを制限して、選ぶ余裕を持たせたんだけどなぁ、なーに、気にしなくていい、最終的にはご両親に買ってもらうんだから。」
「えっ?」
私が言いながらトモミの両親の方を見ると、両親が明らかに驚いたような顔をした。
「お母さんたちが買ってくれるの?」
「あぁ、まぁ。」
トモミが驚きつつの義父が曖昧に答えると、トモミが恐る恐る礼を言う。
「それは、あの、ありがとうございます。」
そういってお辞儀をするトモミにトモミのお母さんがトモミに近づき、遠慮がちに頭をなでる。
「それじゃ、行きましょうか。」
私がそういうと、トモミが戸惑ったように頷いた。
「はい。」
そうして私たちは、全員で私の車に乗り込んで様々なものが売っている某衣料品店や家具屋、その他さまざまなものが売っているようなデパートにやってきた、お値段は高いが、質のいいものを扱っているため、トモミとの選別にはもってこいだろう。
「お母さん、コタロウさん、これがいいです。」
そう言いながら商品をカートに入れていくトモミの事を困った顔で見る二人は、本当の両親という感じだが母親の戸籍ではそうなのかもしれないが、トモミの義父のほうはどうなのだろうか、もしかしたら、養子縁組をしていないのかもしれない。
「なんでも好きなものを買ってあげるってことだから、好きなものをカートに入れていいんだからね。」
私がトモミに言うと、男が怒ったように襟首をつかんでくる。
「おい、ハラ!そんなこと言ってねぇぞ!」
その顔は他人の子にお金を出してたまるものかといった感じのニュアンスが含まれていた。
「結局は私が全額払うんですから黙っててください、それとも、貴方が本当に全額払ってくれるんですか?」
私が睨みつけながら言うと、トモミの義父であるコタロウが動揺したような顔をした。
「そ、そうか。」
それだけを言って、手を離したコタロウはそのまま黙る、トモミは色々なところを見て、欲しいというものをかごに入れていく。
「ハラさん、本当にこんなに買っていいの?」
カーテン、シーツ、カーペット、枕をそれぞれカートの中に入れたトモミは不安そうに言ってくるのを、私は優しく頷きながら言う。
「もちろん、トモミちゃんがうちに来るんだからなんでも買ってあげるとのことだよ、ん?」
カートの中についてふと気になったから、中に入っている一つ一つの商品の値段を見る、よく確認してみたら、それら全てがこの店において一番安い物であった。
「トモミちゃん、本当にこんな安いやつでいいのか?」
心配になり思わず聞くと、トモミはまるで当然のことだと言いたげにうなずいた。
「はい、私なんかにお金を使わせるわけにはいかないので、一番安いやつでいいんです。」
質素といえば聞こえはいいが、一番安く、かつ見栄えが悪いやつを選んでいる時点で、自己肯定感が低いと言わざるおえない。
「もうちょっと、高くて好きな奴でいいんだよ?」
逆に私が心配になってしまい、恐る恐る高いものを買うように促すが、トモミは何を言っているのだろうかと言いたげに首を振る。
「いえ、これでいいんですよ。」
「そ、そうか。」
断言しているトモミを見た後に後ろを見ると、トモミの両親が当然のことのように頷いていた、トモミの趣味ではない上、適当に安いものを使わせるのが常になっているな。
「それじゃ、今回はこれでいいとして、他にいるものはないか?」
「特にありませんね、お気遣いいただきありがとうございます。」
私とトモミの間に壁が見える、壁が見えるが今はそれでもいいだろう、そんなこんなで会計を済ませる、両親と一緒に行き、トモミが離れた隙を見て私が全ての会計をした。
そのお金を請求しようかとも思ったが、正直トモミとその両親の関係性が見ているだけで、そんなことをしたらトモミのことを自宅に戻して、更にひどい仕打ちをすると言われるだろうなと思ったため、止めておいた。
家に帰り、それらを玄関に運び入れる、そのあとはこちらでやるからと言ったら、トモミの両親はお礼も言わずイチャイチャと帰っていった。
「それで、トモミはどうして帰らなかったんだい。」
残ったトモミに向かって純粋に疑問に思って聞くと、トモミは困ったように理由を述べた。
「手伝おうかと思って、これからここで住まわさせてもらうんですよね。」
申し訳なさそうなトモミに、少しでも心を許してもらいたくて頷く。
「あぁ、あと、敬語じゃなくていいからね。」
だが、未だにこちらを警戒しているような眼をしている気がしたので、どうしようかと悩んでしまう。
「……あと、私のことは絶対にお母さんと呼ばないこと!」
とあることを思いつき、宣言するようにトモミに言うと、トモミはそういわれると考えていなかったとでも言いたげな驚いた顔をした。
「なんでですか?ハラさん。」
不思議そうな顔をするトモミに、一つため息を吐く。
「その呼び方のままでいいからね、私未婚夫なしでいきなりお母さんにはなりたくないから、あと、関係性は弟子や助手であって、親子関係じゃないから、家族にはなるから別に甘えてもいいけど、それはそれ、部屋は自分で管理しな。」
あえて厳しめに言うと、トモミの顔が引き締まる、自分が本当はいらない子だと緊張させたところでニヤリと笑ってしまう。
「まぁ、そんなにかしこまらなくていいよ、本当のお母さんがいるのに、お母さん呼びは嫌だろう?」
それにしばらく考え込むような顔をしたので、もう少しヒントを与える。
「それに、母親や血縁という枠組みがなくても、私はトモミのことを見捨てないよ、絶対ね。」
そこまで伝えたことで、ようやく意味を悟ったのか、トモミが顔を崩した。
「……ありがとう、ハラさん。」
「いーよ、慈善事業じゃあるまいし、ほら、手伝うんだろ?家の中に入ればいい。」
「はい!」
そういって家の中に入った後は人型になれる卵を起こして手伝わせ、ご飯をトモミと一緒に食べた後に解散、そのあとは仕事をした。
これから家族が増えるのだ、食費やら諸々が心配だが、それは今は気にしないでおこうということで、仕事に励んでいたら、いつの間にかに深夜1時になっていたため、寝ることにする。
今日は訓練もあの後施したし、発信器からくる情報を解析もしたし、連絡が来ていないかも確認した、やることは一応やった、もし心配があるとすれば、明日起きられないことぐらいか。




