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3限 《探索》

「・・・じゃあ、行こうか」

 誰も動き出す様子がなかった。それもそのはずだ、一番最初に動き出すという事は、意思とは関係なく目立ってしまい、注目を集め印象に残ってしまうのだ。変なやつに目をつけられたくもないし、しばらくは様子を見ていたが、このままじっと沈黙を守っているわけにも行かない。俺はリスクより時間を有効に使う事を選んで動き出した。

 俺とゆかりが勢いよく入ってきた開かれたままの扉から外に出る。外に出ると俺は大ちゃんに先頭を譲った。

「じゃあ食堂まで寄り道無しで案内を頼むぜ。」

「この大ちゃんに任せれば大丈夫よん♪」

「雄介、食堂に行った後はどうする?この実験に乗り気なくらいだし、なんか考えてる事とかあるのか?」

「なーんも♪」

 無邪気にテヘペロフェイスで答える雄介。あぁこいつラインとかでめっちゃスタンプ乱用しそうなタイプだな。案外大ちゃんと話し弾むんじゃないのか?よし、こっちにシフトしてもらうよう誘導しよう。

「だよな、目的が分からん以上何も計画しようがないよな。そういえば大五郎は雄介には興味ないのか?充分こいつもイケメンだお思うんだが?」

 俺の唐突な振りにマジであわてる雄介をよそに、即答で大ちゃんは答えた。

「あ~私金髪嫌いなのよ。」

「せーーーーーふ!」

「セーフじゃねぇ!」

 大ちゃんの回答を聞いて両手を広げながら本気で安心している雄介に適当な突込みを入れつつ俺は思考をめぐらせた。

 さっきの探索開始時の様子だと、おそらく食糧確保は何の問題もなく遂行できるだろう。食堂までの途中には保健室があっただけでほかには特に何もなかった。ふむ、特に名案が浮かんだわけでもないし、しらみつぶしに端から教室を見て回るか。手始めにさっきの保健室から。

そんなことを考えながら付いて歩いていると、程なく食堂に着いたようだった。

「さ、着いたわよん♪でもやっぱり誰もいないみたいねぇお料理のにおいが何にもしないわぁ・・・」

「とりあえず入ってみようぜ。」

「だな。」

 心底残念そうにため息をつく大ちゃんを横目に食堂に入った。確かに誰もいないし調理に取り掛かっていた様子もないな。

「手分けして食料になりそうなものを確保しよう。」

 俺の提案に思い思いに散っていく大ちゃんと雄介。おい、何でお前は動かないんだゆかりよ。

「おまえもだ。」

 俺がチョップの構えを見せるとしぶしぶといった様子で捜索に出かけた。あ、しまったな再集合の基準とか行ってなかった、まぁ何とかなるか。

「さてと、俺はどこを調べるか。といっても食材があるとしたら厨房くらいだよな。みんな最終的にはそこにくるか。」

 早速厨房にむかうと大き目の冷蔵庫に手を伸ばして開けてみた。

「なんで?」

 そこには水しかなかった。開かれた冷蔵庫の中にはコンビニで売っているような500のペットボトルに入った水が、それこそコンビニで陳列されているかのごとくずらっと並べられていた。しかし高校の食堂の冷蔵庫になぜこんなものが?普通は売店や自販機でいいだろう。

 疑問は尽きなかったが、とりあえず必要なものではあるので確保することにした。人数分の二倍くらいあればいいか。あ、入れ物がないな。

「こんなん見つけたぞ?」

「おわっ」

 いきなり耳元で声がした。雄介がいきなり声をかけるから手に持っていた水を落としてしまった。

「いきなり声をかけるな!」

「わりぃわりぃ♪ってか、こりゃすげーな、って戻すなよ!」

「落ちたやつはいやだ!で何があったって?」

「これだよこれ、ほい。」

 そういうと雄介は背中を見せた。見ると雄介は人数分のかばんを背中にしょっていた。人数分だったので大きく見えたが一つ受け取ると500のペットボトル二本入れてもまだ余裕があった。形状は茶色のウエストバックだった。それを雄介は肩から斜めにかけて背中に背負っていた、このサイズならそれぞれの非常食やほかのものも少しは入りそうだな。

「助かったがこんなものどこにあったんだ?」

「ん?掃除用具いれだけど」

 ほかのメンバーのかばんも受け取りそれぞれに水を入れながら質問する俺にさらっと答える雄介。

「まてまて、食材を探そうって話だったのになぜ掃除用具入れを開けた?」

「なんとなく!」

「いやそんな自信満々に言われても。」

「まぁ役に立つものが見つかったんだからいいじゃん。結果よければすべてよしだよ。」

 とっても楽観的なものをいうやつだった0。まぁ気持ちは分からなくはないが、やはり真っ先に掃除用具入れを開けようと思ったその行動は理解に苦しむな。ほかのメンバーはどうしているだろうか?

「大五郎とゆかりは何か見つけたかな?」

「ん?大ちゃんならそこにいるぜ?」

 雄介は俺のすぐ隣を指差した。指の先に目をやると新しいスラックスがしゃがんでいるために突っ張っている様子見えた。俺は観音開きの冷蔵庫を開きっぱなしで作業していたので気づかなかったが、いつの間にか隣に来ていたらしい。声をかけろよ、いろんな意味で怖いから。

 そして何か見つけたか確認しようと冷蔵庫の扉を閉めると目の前に大ちゃんの顔があった。

「ん~~~・・・ブファッ!」

 両手を顔の横で組みキス顔で迫ってくる大ちゃんの顔をコンマ1秒の反応速度で右ストレートを放つ俺。

「痛ひ・・・」

「あ、すまんつい条件反射で。ってそれより大五郎はなんかみっけたのか?」

「そおねぇとりあえず端から冷蔵庫を見てきたけど、違和感だらけだったわよ?どの冷蔵庫にも食材は入ってなくて非常食みたいなものがそれぞれ1種類ずつびっしり詰まっていたわ。私はその中でも荷物にならなくてそれでいて栄養が取れそうなカロリーフレンドとウィダーインジェルを人数分確保してきたわぁ♪」

 カロリーフレンドと言うのは四本入りのスナック菓子のような形状で1箱で400カロリーkcalも摂取できる優れものだ。ウィダーインジェルはゼリー状の栄養食で10秒で朝ごはんを済ませることができると謳っている程には摂取しやすい食料である。

 なるほど、一応大ちゃんも頭はそれなりに使えるようだ。大ちゃんの持ってきた食料もそれぞれのウエストバックにつめていると小さな悲鳴が聞こえた。

「きゃっ!」

 ゆかりの悲鳴だった。

 俺の脳裏には今朝の悪夢が鮮明によみがえっていた。しまったなぜゆかりを一人で行動させてしまったんだ!今朝の悪夢を踏まえて慎重に行動するつもりじゃなかったのか?俺は何をしてる!

 自分への怒りと言い知れぬ不安とでごちゃごちゃな考えをめぐらせながら俺は声の元へと走り出していた。

「・・・な、なんだよこれ」

 黒いハンドガン、一般的なタイプのハンドガンがずらっと並べて陳列されていた。俺がそこに到着したときゆかりはこの扉を開いて衝撃に悲鳴を漏らしてそこから動けずにいたようだった。それもそのはずだ普通食器棚を開いてこんなものが出てくるなんて思わない。無理もないこんなものさっきの札束よりたちが悪いぞ、何せ手に取れるんだから。

「何でこんなものが・・・」

「これ、本物だぜ?エアガンかとも思ったが本物だ。」

 俺の脇をすり抜けハンドガンに手を伸ばして確認する雄介。よく見ると食器棚の二段目にはハンドガン一段目には銃弾とホルスターが陳列されていた。

 水、非常食、少しサイズの大きいウエストバック、そしてハンドガンに銃弾。まるでサバイバルキットじゃないか。

「こんなんで俺たちに何をさせようってんだ?」

「なんだかいろいろ普通じゃないわねぇ。」

 そうつぶやきながら真っ先に銃弾をバックに入れハンドガンとホルスターを装着する大ちゃん。

「おい、何してんだよ?」

「何って、ハンドガンを装備してるのよ。大丈夫よハワイで何度も撃ったことも事あるから。」

「そうじゃなくて普通そんな危ないもの持たないだろう!」

「もうすでに普通じゃない事ばかり起こっているのよ?普通な事をしていてこの実験を乗りけれるとは思えないわね。」

 大ちゃんはいつものお茶らけた感じは出さず真剣に言い放った。大ちゃんの言うとおりだった、入学式は特になく、大金を支払うから実験に協力しろといわれ、挙句拳銃まで出てきた。これのどこに普通の要素がある?この後もどんどん異常性が増す可能性のほうが高いくらいかもしれない。であればその異常事態に対応するのに拳銃は必要なのかもしれない。だけど拳銃なんて使うタイミングがあるのか?どう考えても人に向けるというイメージしか思い浮かばない。どんな異常事態でもそんな場面だけは避けたいもんだね。だが、ここで拳銃を手にしなかったとしてこの先ゆかりを守りきる事などできるのだろうか、さっきゆかりの悲鳴を聞いて絶望しかけたばかりじゃないか、もうあんな思いはしたくない。持っているだけでアドバンテージにもなるし交渉事なんかを有利に進めるようイニシアチブを握るコトだってできるかもしれない。大丈夫だ、要は使いようだ。人に向けなければいいんだ。ゆかりの安全を確保するためだ。

「その通りかもしれないな。竜弥お前も持っておいたほうがいい。いざというときゆかりちゃんを守れなくなるぜ?」

「・・・あぁ・・・」

 雄介にも促され俺、雄介、大ちゃんの三人はハンドガンを装備した。ゆかりも恐る恐る手を伸ばそうとしたのだが、俺が止めた。ゆかりにはこんなものも手いてほしくはなかったのだ。


《がやがや・・っせよ・・・ここ・・・っけろ!》


「なんだか外が騒がしいわねぇ?」

「ちょっと見に行ってみるか?何か進展があったのかも知れねぇし。」

「余計な争いに発展しかねないからハンドガンは見えないように注意しよう。」

 俺たちはハンドガンが見えないようにホルスターの位置を直しつつ外へ向かった。

「外に出せよ!」

「ここから出せ!」

「くそー死んでたまるか!」

 俺たちが校舎の外に出ると4人の男子生徒が校門で騒いでいた。

「何かあったのか?」

 俺は一番近くにいた男子生徒に話しかけた。

「あぁ、一人死んだ!」

「なっ!」

 俺が詳しく話を聞こうとしたとき一人の男子生徒が吹っ飛んできた。よく見ると校門には特殊部隊のような風貌の二人が長いライフル銃のようなものを持って校門を閉め封鎖していた。おそらく男子生徒は封鎖された門をよじ登って出ようとしたところを殴り飛ばされたんだろう。

「あの門番がいる限り外には出られそうにないわねぇ♪とりあえず中でお話しましょ!」

 吹っ飛ばされた男子を担いだ大ちゃんに言われるがまま俺たちは校舎内へ向かった。大ちゃんのキャラクターに男子三人は面食らっていたがまぁ仕方ないだろう。

「で?一人死んだってのはどういうことなんだ?」

 とりあえず正面入り口から一番近かった職員室に入った。俺は一息ついた後に話の続きを促した。まだ名前も聞いていなかったが死人が出たというこれ以上ない非日常を突きつけられたのだ、それはもうすなわちこの校内が安全ではないかもしれない。もしかするとこのハンドガンを使わなければならないような事態が本当に発生するかもしれない状況を示唆する発言だったのだ。そして男子生徒はゆっくりと語りだした。

「・・・あぁ、確かあんたら真っ先に出てったチームだよな?あんたらが出てった後ほかのチームも徐々に出てってな、俺らを含めた四人はチームには入ってなくて体育館に残ってたんだ特にする事もなかったし適当なタイミングで帰ろうと思ってな。そしたらいきなり下りてきたんだよスクリーンが。で、そのスクリーンには《この注射器を自分に打ったものに特別ボーナス百万円を進呈する》ってかかれてた。」

 別にチームを作れなんていう指示は出てなかった。にもかかわらずほとんどがチームを組んだということに多少の違和感を覚えたが、ここは口を挟まず先を促した。

「普通そんな得体のしれねぇ注射器なんぞうたんだろ?」

 俺ではなく雄介のほうから質問が上がった。

「あんたらも気づいてたとは思うがずっと壇上にいたおたくっぽいやつ、あいつも残ってたんだ。んであいつは迷うことなく注射器を手に取った。そして自分の右腕に刺すと一気にそれを押し込んだ。変化はすぐに起きた、3秒ほどもだえた後すぐに動かなくなったんだ。俺は恐ろしくなってすぐ校門の外に出ようとした。そしたらどうだ、校門はふさがれ兵士みたいなやつらが外には出してくれないと来た。無理やり出ようとすればそこのやつみたいになっちまう。」

 なるほどな、確かにあいつはちょっと狂気に染まった目をしていたし、まんまとそのスクリーンの文字に躍らされても不思議ではないな。

「なるほどな、今の話を聞くとお前らその倒れたやつには触れていない、つまり生死の確認はしていないんだな?」

「ん、まぁそうなるな・・・」

「よし、じゃあ今から確認するぞ」

「そうだな、聞く限りそんなに時間もたっていないようだし今から行けば手当てできるかもしれんな」

 そういうと俺と雄介は女性陣に目を向ける。あ、一応もう大ちゃんは女性人というくくりでいいかと。

「私はタッツンの行くところならどこでも着いていくわぁん♪」

「・・・私も異論ないです。」

「よし決まりだな、じゃあさっそく・・・」


《ガッシャ―ン》


 意見もまとまり体育館へ向かう号令をかけようと思ったまさにそのとき、けたたましい音がすぐ近くで鳴り響いた。ガラスの割れる音だ、しかもすぐ近く、正面玄関あたりか?あの軍人っぽいやつらが銃でもぶっ放したか?でも銃声はしなかったな。

「なんだっ!?」

 混乱する頭を必死で整理しつつもそこにいた全員が条件反射で外に出ていた。

 土ぼこりでよく見えない・・・。職員室から出ると正面玄関のほうに目をやった、玄関枠はへしゃげガラスは砕け散って外の風が中まで入り込んでいた。加えて下駄箱も倒れていたようだった、下駄箱の上に積もっていた誇りや砂が舞っているためか視界が悪い。


《ヴヴウウウウウ・・・》


 それは声だったのか、身の毛が総毛立つようななんとも形容しがたい気配が砂埃の奥からしていた、そして徐々に砂塵が落ち着くとその姿が見えてきた。

「・・・なんだよ、あれ・・・」

「・・・鬼・・・」

 その姿を認めた瞬間俺たちいはきっと逃げることができた筈だ。それが恐怖なのか絶望だったのかは分からないが、俺たちは金縛りにあったようにそこから動くことができなかった。

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