第180話(終) エピローグ②:舞台裏のアイドル
「ミニライブ感想会するぞ〜〜〜!」
リモートで集っても、いつも通り会話の中心になる四条ルナ。
ただ、その日の集まりにブイアクトメンバーは1人も居なかった。
「マイ迷子の会、定期的に開いてるけど今日はさすがにライブのこと語りたいんじゃない?」
「もちろんいくらでも語れますよ。本当に良いライブだったので……気づけばスクショは500枚超えるほどに」
「勝った。私800枚」
「数字マウントははしたないですよ。結」
「先に枚数語り始めたのお兄ちゃんなのに?」
「また言い争って……兄妹喧嘩も仲良い証拠、ってことでいいのか?」
マイ迷子の会、つまり異迷ツムリのファンを名乗る者達の集まり。
メンバーは間宵解斗、間宵紬、四条ルナ、四条彰。
偶然にも兄妹二組揃った形になったが、この場で血縁は関係なく、同じモノを好む同志として語らう。
「ソロパートは1曲だけでしたが、やはりあの曲は涙無しには聴けませんね……」
「ニジカケはズルい。良い意味でツムリらしくない」
「ええ。普段アレな分、ギャップであの子の魅力を数倍引き立たせてくれる曲だ。けど、やはり異迷ツムリのファンとしては賑やかな曲も欲しいところ……2曲目が待ち遠しいですね」
「私はずっと一緒にいるから、ファンの誰よりも早く知れるけどね。ふふん」
「ふむ。羨ましくないわけではありませんが、私はサプライズも含めて楽しみたい派ですね」
「うん。正直そっちも羨ましい」
「……それぞれの立場で存分に楽しみましょうか」
「だね。ちゃんと楽しいからだいじょぶ」
間宵兄妹はすっかり打ち解けて、言い争いながらも互いの気持ちに配慮し、良好な関係を続けられている。
熱量強く語る2人に対し、それを静かに見守る2人は……。
「前から気になっていたのですが。結はともかく四条兄妹のお二人はマイ迷子と呼んで良いのですか?」
「え? 私がツムりん推してないわけないでしょ? ブイアクトはみんな私の推しなんだから」
「僕はマネージャーなのでちょっと視点が異なりますけど、応援する気持ちは変わりませんよ。ファンの声を直に聞けるのも参考になりますから」
自分達のために無理して付き合ってくれてないかと懸念したが、それぞれのスタンスでこの集まりを楽しんでくれているようだ。
ただ、過去の行動で少し気になることもあった。
「なるほど……しかしルナさん。推しと言うには中々の仕打ちをしてくれましたね。昨日の禊コラボ、見ましたよ」
「ん? なんか怒ってる? あれツムりんから参加したいって言っただけなのに」
「それにしたってもう少し手心を加えてくれても良いでしょう。なんですか、あの運動部も泣いて逃げ出す地獄の筋トレメニューは」
「ん。しっかり筋肉痛で体バキバキ」
ミニライブ後に行われたアルマ・グレイと異迷ツムリ3人でのコラボ配信。
2人の活動方針である『禊』にツムリも付き合ったわけだが。
「手心加えたら禊になりませんよって。それにツムりんは良い声で鳴いてくれるところも魅力なんだからしっかり虐めてあげないと♪」
「愉悦部め……まったく理解できないわけではありませんが、加虐も過ぎれば失笑を招く。今のファンは間違いなく幸せを望んでますよ。私と同じように」
「過保護だねぇお兄ちゃん」
「私はツムリの兄ではありません」
お互いの思想をぶつけ合う。
端から見ればギスギスした関係に見えるが、それだけ遠慮がなくなったということでもある。
今まで語る相手が居なかった解斗としても、このマイ迷子の会は良い発散の場になっていた。
「解斗さんの方は最近どうですか? アイドル事業は縮小させてるとか……」
異迷ツムリの話題が少し落ち着いたところで、近況について彰が聞いた。
「ああ。あの一件でウチの事務所も干され気味ですから。私の担当しているアイドル事業は終息させることが決定しました」
「そうですか……」
「心配は無用ですよ。無関係の所属アイドルは希望者を募って他事務所への移籍を斡旋しました。それも大方終えて、残ってるのは希望しなかった2人だけですね」
解斗の運営しているアイドル事務所、その一部のアイドルが起こした問題。
ブイアクト関係者の個人情報をリークした件について、株式会社レプリカは訴えを起こした。
その結果事務所の信用は失ったが、解斗自身は納得しているように話す。
彰は一人の友人として心配していたが、彼の姉が続けて質問した。
「その残ってる2人って、もしかして紬ちゃんの?」
「ええ。元スターライトの2人ですが……よく分かりましたね?」
2人と関わりがないはずだが、四条ルナの今までの行動を考えるとどこまで把握されているのか。
「なるほどねぇ……ね。もしよかったらなんだけど――――」
何か企むような笑みを浮かべ、彼女はとある提案をした。
………………。
「1年後、正式に事務所を畳むことが決定しました」
間宵解斗がそう告げた相手は、現在の事務所所属アイドル2名。
過去に確認した内容を再度問う。
「それでも他事務所には移籍しませんか?」
「いいよー。この事務所終わるならアイドル続けるのもなんだかなぁって感じだし」
「今モチベーション保ててるのも、ここが紬ちゃんの居た事務所だからって言うのもありますね」
「そうですか……」
間宵紬が所属していたユニット『スターライト』、元メンバーの月島沙織と日野綾女。
彼女達もまた紬に想いを馳せながら活動していた。
その信念を尊重しつつ、解斗は別歩行から提案した。
「ではこの事務所が終わったあとの話ですが……お二人はVTuberに興味はありますか?」
この提案は四条ルナからされたもの。
ブイアクトを護るためとはいえ、訴訟と無関係のアイドルが活動を断念することに罪悪感が残るとのことで、ルナも会社と相談した上で誘ってくれたようだ。
「ブイアクト5期生のメンバー募集。もちろんオーディションは受けてもらいますが、二次審査から受けられるよう計らってもらえるそうで」
「ええ……それ異迷ツムリの後輩になるってこと?」
「うーん……」
誘いに対し難色を示す2人。
彼女が口にした異迷ツムリという名に対し、どのような印象を持っているのだろうか。
「やはり苦手ですか? ツムリのことは……」
「いや全然? むしろ配信見てるけど」
「え?」
「事情は聞いてますから。紬ちゃんを名乗るのも辞めたみたいですし。それに私も頑張ってる女の子は応援したいので!」
意外にも好印象な反応で驚く。
今まであの子に対し当たりが強かったのは、不誠実な行いが許せなかっただけだと。
そう割り切れる2人が凄いのか、それとも異迷ツムリにそれだけの魅力があるということなのか。
「ほう……貴女達もマイ迷子の素質がありましたか……」
「えなにプロデューサー。なんか目つき怖いよ?」
「あ、そっか……プロデューサーさんにも好きなものがあるみたいで安心しました。いつも真面目すぎるくらいなので」
「む、心配させてしまってましたか……じゃあ、たまにで良いので私の趣味話に付き合ってもらえますか?」
「いいじゃん。長い付き合いなのに禄にそういう話してこなかったしね。アタシら」
仕事の関係でしかなかった自分達の交流を深めるきっかけになってくれる。
これも推し活が現代の趣味として広く伝わったおかげか。
「ま、後のことはのんびり考えさせてよ。今は最後までアイドル頑張りたいからさ〜」
「紬ちゃんと一緒に過ごした事務所で、ですね」
2人は間宵紬を仲間として、そして推しとして、ずっと忘れないでいてくれてる。
もちろん自分も同じ気持ちだ。
生活に必需ではない娯楽、しかし心の支えになってくれる存在。
そういう意味ではアイドルもVtuberも同じ。
「最後の1年くらい好き放題やってもいいよね? じゃーアタシらでまたユニット組まない?」
「良いですね! ユニット名は……『スターダスト』、なんてどうですか?」
私達の仕事は、誰かの心の支えとなること。
そんな私達の心の支えとして、間宵紬は今も生き続けている。
◇
「あのぅ……毎回思ってるんですけどぉ。あのオタク会合って私聞いてて良いんですかねぇ……?」
会合から解散した後、いつものミーティングの時間になる。
先刻、一方的に話し合いを聞かされたツムリはマネージャーに聞いた。
「? 結さんが参加する以上君も聞くしかないんだろ?」
「それはそうなんですけどぉ……盗み聞きしてるみたいで肩身狭くってぇ」
「ああ……気持ちは分かるけど、あの場の全員それを了承済みで語ってるんだ。悪いなんて思う必要は一切ないよ」
既に何度も経験してることに今更言及する少女。
罪悪感を盾に逃れようとしているけれど、要は照れ臭いのだろう。
いい加減褒められるのにも慣れて欲しいところだ。
「それに、トップを目指すつもりならもっと自信を持った方がいい。大人しく褒め殺されて自己肯定感の足しにしてくれ」
「うぅ……あれ? 私マネージャーさんに目標のこと言いましたっけぇ?」
「ん? ああ、姉さんからな」
「あの人ほんとなんなんですかぁ? 大事なことは隠すくせに人の秘密はしれっとバラしてぇ……」
姉に対する気持ちはまったく同感だ。
しかし意外な言葉が出てきて、少しだけ戸惑う。
「秘密だったのか? マネージャーとしては目標があるなら知っておきたかったけど……」
「あっその……夢見すぎって言われるかとぉ……」
「そんなこと言うわけないだろ。……むしろ、君自身が思ってることなんじゃないか? それ」
「……どうしてそう思うんですかぁ?」
聞き返してくるけど否定はしない、つまり心当たりはあるのだろう。
彼女はなんと答えて欲しいのだろうか。
「どれだけ一緒にいると思ってる? それこそ出会ったときからずっとそうだ。アイドルに憧れて、真似してみて、でも自分じゃ完璧にできないって思い込んで。アイドルになりたいって夢を夢にしてしまっている」
率直に自分の印象を言ってみる。
最初に出会った日に伝えたことを思い出しながら。
その頃から彼女は……。
「その考えは……間宵紬さんの影響、だよな?」
「……やっぱり、まだ変われてないですかねぇ」
「変わろうとしてるのは伝わってくるよ。けど君は……間宵紬が深く愛されてることを知ってる。夢を追いかける姿こそ、一番愛されるアイドルの形だと思ってしまっている」
間宵紬になることをやめても、一人のアイドルとして憧れてしまう。
自分の身近な人に愛されてるアイドルだから。
「ずっと続いて欲しい気持ちは分かる。けど……叶わない夢を追い続けるのは、きっと見てる方も苦しい」
アイドルの終わりに抗い続けてきた彼女を見てきたから。
無意識かもしれないけど、今も終わりを恐れているように見える。
夢が終わったら生きる理由がなくなるんじゃないかって。
「夢は叶う瞬間が一番幸せだよ、絶対に。終わったらまた新しい夢を探せばいい」
ようやく気付けるようになった。
気づけたおかげで、かける言葉を見つけられるようになった。
「じゃあ……頑張るって言ったら手伝ってくれますかぁ?」
「当たり前だ。例え何年何十年かかっても、君が最高のVTuberだって全世界に認めさせてやる。これも……」
「マネージャーの仕事だから、ですかぁ?」
「ん? ああ……その通りだ」
自分と同じように、彼女も自分のことが分かってきたらしい。
それだけ自分を見てくれてるということ。
自分に案内役を任せてくれるのなら、その信頼に応えたい。
この子が二度と迷わなくて済むように。
「ちなみに声真似って続けても良いと思いますかぁ? 少しでも悪い印象あるならやめた方がいいのかなぁと……」
「ん? 個人的には今のちょっとした特技くらいの立ち位置でちょうど良いと思うぞ」
「ですかねぇ。レプリカも居ないので歌の完全再現みたいなことはできませんけどぉ」
ちょっとした疑問にも真摯に答えたいと思ってる。
でもたまに、よく分からないことを言い出すときもある。
「それに私なんでも真似できるって思われてますけど、好きな人じゃないと上手く真似できないんですよねぇ」
「そんなことないんじゃないか? 僕の声真似してたこともあっただろ」
「え? あー……まあマネージャーさんがそう思うならそれでいいですぅ」
「ん? どういう意味だ?」
結局は違う人間なのだから、すべて理解できるとは思ってないけれど。
ツムリの言葉が拙いのか、それとも自分がまだまだ未熟なのか。
「マネージャーさんってたまにアホですよねぇ」
「え……まさかツムリにそんなこと言われる日が来るとは……。過去一番の屈辱だ」
「それどういう意味ですかぁ?」
口論になることもあるけど、嫌われてはいないと思う……たぶん。
一応この子もアイドルだし、好かれてるなんて勘違いをするつもりはないけれど。
ただ……これからも異迷ツムリのマネージャーで居られれば。
僕はそれだけでいい。
◇
「ツムリ、マネージャーのこと好きなの?」
1人になったタイミング。2人きりの世界で結は聞いた。
先ほどのやり取りを見れば、あの鈍感マネージャー以外なら誰でも気づく。
「うーん……ノーコメントですぅ」
反応から察するに自覚はあるのだろう。
何も言わないのは気恥ずかしさからか、それとも認めたくないのか。
「そう。私は好きだよ」
「そうなんですかぁ……んぇ?」
「結婚しても良いくらい好き」
「え、ちょ……え!? なに言ってるんですかぁ!?!?」
心底驚いたような反応をしてくれる。
自分でも驚いている。
こんな話、自分からすることになる日が来ると思わなかったから。
「ツムリのこと支えてくれてたの、ずっと見てた。私の話も楽しそうに聞いてくれる。あんな良い男、他に居ない」
「わぁ理由がガチだぁ……言いたいことは分かるんですよぉ? でもマネージャーさんに結ちゃん取られるのなんか癪ですねぇ」
「ツムリも好きでしょ?」
「うーん……結ちゃんとは好きの意味が違うと思いますけどぉ」
「いつから好き?」
「グイグイ来ますねぇ……」
茶化して逃げようとするツムリを問い詰める。
どうしても彼女の本心を知りたかったから。
「それで言うとデビュー配信の日ですかねぇ?」
「え、結構最初から?」
「あの頃から言ってくれてたこと思い出したんですよねぇ。「デビューするのは『間宵紬』ではなく『異迷ツムリ』だ」「演じやすいようにキャラを作ってしまえ」ってぇ。今思うと私、マネージャーさんのおかげで私になれたんだなぁって……」
言われてその頃の記憶が蘇る。
あの男は出会ったときからいつも異迷ツムリが欲しい言葉をくれてた。
おかげでツムリは今生きていて、それも彼に惹かれる理由の一つなのだろう。
「思ったより理由がガチ。やっぱり大好きでは?」
「だからぁ! これは尊敬とかそういう好きなので! ……それに、マネージャーとして支えてくれてるからこそ、あの人にはアイドルの私を応援して欲しいのでぇ。恋人とかはちょっと違うんですよねぇ」
「じゃあ勝負する? 私はマネージャーのこと、恋愛的な意味で堕としに行く」
「ぐぬぅ……じゃあ私も負けません。マネージャーさんにはアイドルの私を一生推させてみせますぅ」
普通なら、同じ人間から日によって異なる想いをぶつけられては混乱するのだろうか。
でも私達は同じ身体を共有しているだけ。
今は互いに別々の存在として認識している。
「でも案外、マネージャーなら両立できちゃうかも? 私達のことちゃんと別々に見てくれてるから」
「それは確かにぃ……冷静に考えるとマネージャーさん、なんでも素直に受け入れすぎじゃないですかぁ? 理解力というか器が大きすぎるというかぁ」
最初は私一人だったけど、後から生まれたとか関係ない。
私達はどっちも本物だ。
理解できない人もいるだろうけど、大切な人にだけわかってもらえればそれでいい。
「それはそれとして、恋愛と推し活は別。ツムリのことは変わらず超好き」
「ありがとうございますぅ。私も結ちゃんのこと大好きですよぉ」
「ん、ファンサありがと。そろそろ時間だよね?」
「あ、ほんとですねぇ」
マネージャーだけじゃない。
お兄ちゃんも私とツムリの両方を好きでいてくれる。
「じゃあ、配信の準備してきますねぇ」
ツムリは友達として私のことを好きだって言ってくれる。
私もツムリを好きだって言い続ける。
「うん。いってらしゃい」
私の世界は好きで溢れてる。
私が今幸せに生きてるってこと、届いてくれてるといいな。
世界で一番大好きな、私の妹に――――。
◇
何事にも必ず終わりはある。
人の命も永遠ではない。
でも、語り継いで貰うことはできる。
私を糧に誰かの物語が始まるかもしれない。
だから私達は良い作品を目指す。
みんなの心に残るハッピーエンドを目指す。
みんなに惜しんで貰えるバッドエンドを目指す。
――――私は、どんな終わりを迎えるのだろうか?
「というわけでぇ。ミニライブ振り返り付き合ってくれてありがとうございましたぁ」
《888888》
《改めてミニライブ超良かったぞ》
《思い出してまた泣けてきたんだけど、どうしてくれる?》
雑談も交えて数時間、コメントの反応を見るに今日の配信も楽しんでもらえたみたいだ。
たくさんの人に応援してもらえ、良い満足感を得られる。
「こんなに喜んでもらえるとまたライブしたくなりますねぇ。ほんと、愛されすぎて困っちゃいますよぉ。へへ……」
《ん? なんかちょっとイラッとした》
《最近なんだか調子乗ってないかい?》
「え、え? でも私のこと大好きなんです……よね?」
《ちょっと前まで元気なかったから励ましてただけやで》
《もう甘やかさなくても大丈夫そうだな》
《おっ通常運転に戻していい感じ?》
「いやいや今のままで良いですってぇ。優しいままのほうが嬉しいに決まってますしぃ」
《またまた~ホントは待ってたんでしょ?》
《ヲタツムリはイジってなんぼだからな》
《塩対応コメント、再開です》
「むぅ……そんなイジワル言うならもういいですぅ! 今日の配信は終わりです!!」
《あっ逃げたwwちょっと言い過ぎたか?w》
《まあそろそろ終わる時間だしちょうど良いか?》
《今日も配信楽しかったぞ! ありがとう~!》
愛を伝え合いながら、ときにはふざけ合う。
怒ったフリを見せるのもエンタメだって互いに分かってる。
でも、今日はなんだかこれで終わる気分になれなくて、こっそりマイクを付け直す。
「…………あのぅ、マイク切ったはずなのでこれは独り言なんですけどぉ」
《あ、おかえりw》
《マイク切ってるなら幻聴かぁ》
「最近はメンタル結構平気になってきたんでぇ。ホントにお気遣いしてもらわなくて大丈夫ですぅ。さっきのも本気で嫌がってるとかじゃないんでぇ、勘違いさせたらごめんなさぁい」
《りょーかいよ。本気で嫌なときもちゃんと言ってくれていいぞ》
《こっちもただの独り言だけど、元気になってくれて良かったぞ》
「ホントに……いつも見てくれてありがとうございますぅ。いつも大切に思ってくれて、いつも愛を伝えてくれて……私も、みんなのこと大好きですよぉ」
《あの、、、そういう不意打ちズルいと思う》
《おい。俺も大好きだ;;》
《……こちらこそありがとうだよ》
終わり間際にちょっとしたファンサービスを送る。
終わっちゃったら寂しいから、せめて幸せな気持ちで終わらせてあげたい。
今日が終わって寂しくなっても、私達にはまた明日がある。
けどいつか……また明日が来ない終わりもきっと来る。
――――私は、どんな終わりを迎えるのだろうか?
異迷ツムリの活動が終わるとき、それは私自身の終わりを意味する。
「えっと……これどう終わりましょうかぁ。なんか気まずくなってきましたねぇ」
それでも、私は最後の瞬間まで語り明かしたい。
みんなの好きを聞いて、私の好きを語り尽くして。
そんな幸せな日々をずっと続けたい。
そんな私だけの推し活ができる舞台。
それがこのVtuberの世界。
「……え? 終わりの挨拶どころか最初も挨拶してない? あー……確かに忘れてましたねぇ」
この電子の海では誰もがネットリテラシーという名の仮面を被ってる。
名を変え、顔を変え、身体を変え、仮面舞踏会に出かける。
全部隠しながら、愛だけを曝け出す。
「じゃあ最後にまとめてやっちゃいますかぁ」
偽物だけど、ここではこの姿こそ本物。
偽物だけど、本物の幸せを届ける存在。
それが私達、偽物世界のアイドル。
「――――本日お送りしましたのは私。迷子に差し伸べる虹の架け橋、ジメジメ七色ボイスこと異迷ツムリでしたぁ」
私の仕事はファンに愛を届けること。
私の趣味は推しに愛を届けること。
「それではぁ……おつムリですぅ~」
私はアイドルVtuber異迷ツムリ。
今日も私は少しだけ、世界に幸せを彩る。
『レプリカのアイドル~声真似系VTuberが天下をとる話~』、これにて完結でございます。
最後まで描き上げられたことを心より嬉しく思います…!
本作を面白いと感じていただけた読者様へ、よろしければ布教するような気持ちで・ブックマーク・☆評価、レビューなどしていただけると続編、新作執筆の励みになります!
感想、質問コメントなどもいただけると物凄く喜びます。
私にとっては、私の作品を愛してもらえることこそが至上の慶びでございます((*_ _))
投稿開始から約2年、番外編含め205話。
ここまでのご読了、本当に本当にありがとうございます!
長い間応援いただけた読者様へ。最大級の感謝を贈らせてくださいm(_ _)m




