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第14話

 病院を連れ出された僕は瑠璃の横を歩きながら一つ呟く。


「瑠璃、デートって恋人同士でいくものだと思うんだけど...。」


「はい、だからお兄様と行っても何の問題もありません。」


「兄弟だよね?」


「はい。家族であり、兄弟であり、恋人です。」


 前半は正しいが、後半が明らかにおかしい。どうしたんだろうか。今日は瑠璃が最初からトップスピードで暴走している。


 まぁ最近会えていなかったし、兄弟として一緒に過ごしたいのかもしてない。せっかくの機会だし、今日くらいはデートに付き合ってあげようかな。


「というか病院はいいの?病院服のままだし。」


「それは大丈夫ですよっ!私はお兄様の傷を治すくらいすごいんですよ!病院なんて直ぐに黙らせれます!!


 いや、実際問題それは良くないんじゃ。


「それにお兄様の怪我自体は私が治しましたし、あの病院で入院していたのは脳に何か異常が残っていないか検査するためだったんですよ。だから大丈夫です。」


 僕を不安にさせないようによ気遣ってくれたのか、あの病院にいた理由を教えてくれた。


「わかったよ。それでどこに向かっているの?」


「内緒です!でも初めはお買い物に行きます!!」


 いや、それはもうデートじゃなくて普通の兄弟のショッピングだよ....。

 僕はてっきり映画館でもいくのかと思っていた。瑠璃は昔から映画が好きだったし、何よりデートといえばここ!みたいな場所に連れて行かれるんだと思ってたから少し意外だ。

 こうして僕らは初めに病院服から違うのに変えるためにショッピングモールに向かうことになった。




 瑠璃に連れられ大型のショッピングの一角にある服屋の前にたどり着くと僕はその場で立ち尽くしていた。

「ここ女性服のお店に見えるんだけど?」


「はい!是非と思いまして!」


「是非じゃないよ?!何回も言うけど兄弟で弟だからね!そんな服着ないからね!

幸先が怪しくなってきた。」


「えー、いいじゃないですか、お兄様。」


「だめに決まっているでしょ。それにお店の人の迷惑にもなるから普通の服屋に行くよ。」




 僕はそのままるりを引っ張ってメンズとレディースの両方が入っている有名なユニフロに訪れた。

「お兄様、これなんてどうですか?」


 瑠璃はだいぶ素直になってくれたようで僕に来て欲しいと服を持ってきた。

—ハイビスカスの書かれた黒のアロハシャツを...。

 我が妹ながらちょっと服のセンスが心配になってきた。


 そして次に持ってきたのは、これもまた何ともいえない青紫色のジャケットだった。


「お兄様、これも着てみてください!」


「これもちょっとなぁ」


(さすがお兄様です!こんなに何でも似合う人っているのですか?!本当にかっこ良すぎます!!)


 他にも何着か持って来られて着ることになったけど、どれもあまり僕が気に入るようなものは無かった。

 これならまだ病院服の方がマシかもしれないと思い始めた頃、次に瑠璃が持ってきた5着の中に結構な拾いものがあった。


 それはピンク色のジッパーがついていないタイプのパーカーだった。


「おぉ、これ着心地いいよ。サラサラした肌触りで気持ちいいし。それにポッケが正面で繋がってないのがいいね。」


 ただ.....


「すごく、とても、最高にお似合いで《《可愛い》》です!!!お、お兄様が可愛すぎてやばいです.......。」


 そう、このパーカー着てみて初めて気づいたのだけど、フード部分に猫耳がついてるんだよね。

 でもなぁ。色合いがピンクでフードに猫耳が微妙なところだけど、他の部分のデザインは結構気に入ったしこれの白色を買おうかな。


 僕は猫耳パーカーと途中で見つけたジーパンを買うことにした。


「春、僕は会計に行ってくるからちょっと待っててくれる?」

「え、お兄様、私が先ほど来ていた物も全て買いましたので大丈夫ですよ。」


「い、いつの間に...。それに今まで着たのって言うと結構な量になるけど。」


「こう見えても私稼いでいますから!」


 えっへんと仁王立ちしている姿は大変可愛らしいけど、使った金額を考えると取捨選択しないで何でも買ってしまうところを咎めるべきなのか、可愛いところを褒めるべきなのか悩むところなんだよなぁ。





「お兄様タピオカですよ。一緒に飲みましょう。」


 僕らがフードコートにやってくると瑠璃がタピオカを買ってきてくれた。今日完全に瑠璃のヒモになっている気がするが.....次のどこかは僕が出そう。

 

 カップは透明で薄いピンク色の液体とタピオカが結構入っている。それに装飾にも凝っていて、表面に猫のラテアートが施されている。ついつい写真に撮りたくなるような見た目だ。


 しかしなんでストローが二つ刺さっているんだろう。それにカップの側面には大きくハートマークが書かれている。これってもしかして....。


「瑠璃、これって...。」


「はい!ここのカップル限定のタピオカです!」


 イチゴミルク味かな。さすが瑠璃といったところで僕の好きな味をチョイスすることで断り辛い。僕もイチゴミルクにタピオカが入ったジュースは飲んでみたいし、非常に悩むところだ。


「さぁ、飲みましょう。」


「先に飲んでいいよ。」


「お兄様?せっかくストローが二つあるんですよ。それともお兄様は私とお飲みになるのが嫌なのですか。」


 ここはフードコートなんだ。丁度お昼時で食事をする家族が多く視線を集めやすい。

 こんなに人が多いところで一緒に飲むの?!絶対僕らに注目されるって!!


「の、飲みます。」

 しかし、葛藤は虚しく、寂しげな表情を浮かべて僕を見ている瑠璃を見て数秒とかからず諦めることになった。僕にはその選択肢が取れないので兄の威厳というものはとっくになくなり、瑠璃のいう通りに一緒に飲むことにした。


 やばい、すごく恥ずかしい。周りの視線が気になって余計恥ずかしい。顔から火が出そう。ひとまず一旦離れっ。


 え、なに?ストローが口から離れないんだけど何かに体が覆われて固定されているような感じだ。本当にびくともしないんだけど。


 二人で飲み干すとやっと犯人が結界を解除したのか僕はストローから口を離せるようになった。犯人は大変ご満悦のようだ。


 そして当初考えていた通り映画館に行き、僕らは家に帰ることになった。



 家に帰って、楽しかったけどやっぱり疲れたなぁ。主に気疲れだけど。

 早速お風呂に入って疲れを癒そう。僕の家のお風呂は無駄に広い。お父さんがお風呂好きなんだ。のぼせやすいけど。


 ふぅ。やっぱり暖かいお風呂に入っていると心地いい。


「お兄様、入りますね。」



.........僕への困難はまだ続くようだ。



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