表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ少女の弟子にされたんだが。  作者: ぱりぽり土鍋
第八章 再会と未来
166/168

集束への足音

「いくぞ……エドガー」


 青白く輝く魔力を持つその剣。


 ネムの言葉と共に、剣先に特にその魔力が凝縮され、凝集し――放たれる連続の突き。


『――くッ』


 エドガーはそれに反応し素早く右手を振り、一瞬にして広がる砂。

 その結合をお互いに強めるように魔力が走り、防壁を展開される。


 しかし――。


 ――ガギガギガギッ!


 ネムの剣先はそれを貫く。


「――ハァツ!」


 ――ガギャァァァァンッ!


 三つの穴が空き、そこから光が漏れ――砕けた。


「――エドガーッ!」


 壁の向こうから突き出される閃光。


『――ネムッ!』


 ――ギュォォォォォォン!


 エドガーの右手に凝集する鋼鉄。


 黒の剣が生成され、それによりネムを迎え撃つ。


 ――ガキンッ!


「――ッ!」


 ぶつかる黒と白の剣。

 火花が散り、二人の顔を照らすが――次の瞬間にはお互いに次の行動へ移っている。


『――ガァッ!』


 エドガーの右足。

 滑り込むように足払い。


「――ㇱッ!」


 一歩下がり、回避。

 そして流れるように一歩踏み出し、その反動を利用して素早くエドナ―の胸元にレイピアを振う。


『――ギッ!』


 ――ギャリギャリッ!


 ネムのレイピアがエドガーに触れる直前、エドガーの黒剣がそれを受け流した。


 一進一退の攻防。


 ネムの突きに合わせ、エドガーが剣を振い。

 エドガーの斬撃に合わせ、ネムのレイピアが空に線を刻む。


 演舞のように一進一退の攻防を続ける二人。

 お互いに傷を負うことなく、その均衡は完璧。


 しかし――だ。


(――ここだ) 


『――』


 す、とエドガーは目を細める。


 ネムの刺突。

 それは剣先に極大の魔力を込めた、エドガーですら貫くであろう一撃。


(なら、俺は――受けてたとう)


 勝利とは何だ?

 勝つにはどうすればいい?

 ただ、強ければよい。

 相手より強ければよい。


 今までそれを受け流すことで回避していたエドガーは……。


 ――ギュゥゥゥゥン。


 一瞬で黒剣に収束する魔力。


 それを――。


『――ガァァァァァァァァァァ!』


 真正面からぶつける。


 ――ギィィィィン!


「――なッ!」


 エドガーが振るったのは、力任せの一撃。


 しかし、それは十分。


 ネムの剣先はエドガーの魔力に覆われた剣を貫くことが出来ず、止まる。


(――しまった――!)


 停止。

 ネムの一瞬の動作の停止。


『――悪いな』


 その瞬間、エドガーは短く言った。


「――なっ」


 ――ネムの視線の先。


 エドガーの左手。


 ……二本目の黒剣。


「――ぐッ!」


 ガギィン、と一本の剣をネムは裁くことはできるが、二本目は当然不可能。


『――ラァァアアアアアアアアアアアアア!』


 ――ギャン!ギャンギャイン!


 ネムのレイピアを削っていくエドガーの剣。


(まずい、このままでは――!)


 がりがりとネムのレイピアに黒剣を叩きつけるエドガー。

 ネムは攻撃に転ずることが出来ず、防戦一方になってしまう。

 そして、当然――防御に使用しているレイピアはその衝撃に耐えられない。


 ――ガギンッ!


「――ッ」

『終わりだ』


 砕けるレイピア。

 迫るエドガーの黒剣。


「――させない」


 しかし、その瞬間、ネムをフォローするようにアンジェが蹴りを放つ。

 その視界外からの蹴りはエドガーの胸の傷に打ち込まれ――。


『――くッ』


 しかし、その傷を守るようにエドガーは胸の前で十字を組む。


 ――ドギャッ!


 蹴りの勢いで下がるエドガー。


「――ふぅ」


 すたっとその場に着地するアンジェに――。


「――助かる」


 ネムは短く礼を言う。


 エドガーの飛び道具をチェルシーが後ろで捌き、ネムが前衛、アンジェが中衛。


 しかし、(あやう)い。


 何時壊れてしまうかもわからない、ギリギリのバランス。


『……』


 静かにこちらを向き佇むエドガー。


 そして、彼は右手を上げ、手の甲を上に。


 そして、ぶわり、とその手から闇が溢れ出す。


 それは地に落ちると――。


 ――ギュイギュイギュインッ!


 その周囲に、再び真っ黒のランスが地面から生え――。


『――さァ、還レ』


 その全てが、根っこから先まで、ぼきぼき……と折れていく。

 ばらばら、と空中に広がる細かい破片。


「――なッ」


 ぼろぼろと崩れ落ち出来上がったのは――鋼鉄による波。


「――こ、こんなのやばいよ!」


 チェルシーが意識を集めるとともに、瞬時にボコボコッと盛り上がり、盾になる土。


 ――しかし。


(――無理、だぁ!)


 ――ドガぁッ!


 あっけなく黒の波は土壁を崩壊させ、ネムへ、アンジェへ、チェルシーを飲み込まんと迫っていく。


「――任せてください」


 そんな三人の前に――トッ、と一つの影が現れた。


 空中を揺れる金髪。


 その女性は一気に十個の赤い液体の入った瓶を放り投げ、割る。


「――ぐっ」


 それは瞬時にお互いに絡み合い、四人を包み込むドームを形成。


 ボロボロになりながらも、なんとか四人を守ることに成功した。


『――ほう』

「……はぁっ……はぁっ……はぁッ」


 そしてその黒の流れが過ぎ去った後、四人は膝をつき息を荒くしていた。


 魔力がほとんど底を尽き、あと数度も魔術を使ってしまっては魔力欠乏により気を失ってしまう。


 ――しかし。


 四人の目からは光は消えてはいない。


『頑張ったな、お前ら。こんだけ戦えるだけ褒めてやろう……』

「……く、くくく……」


 ――それどころか、笑っていた。

 

 当然、それは敗北を意味するものではない。

 

 むしろ、目的は果たした、と言うかのよう。


『……何がおかしい』

「いや、ね」


 その時、すぅぅぅぅ……と、アンジェの額の瞳が、消える。


 それはつまり――。


「……もう勝ったと思ってるのかな、と思って」


 ――勝利の合図。


 四人がゆっくりと立ちあがると同時に後ろを振り返る。


 その人影に、エドガーがフッと笑った。


『――なるほどな』


 それは、最後の相手。

 そして、最愛の敵。


「――さて、次は私達と踊りましょう、エド」

「――ええ、きっと楽しいですよ」


 ――四人の背後から現れたのは、二人の女。


 アリサと、レティシア。


 銀髪の女性と、黒髪の女性。

 二人は共に紅の瞳を輝かせ、エドガーに相対する。


 そんなエドガーの前に立ちふさがる二人とすれ違う瞬間、アンジェがぽつり、といった。


「――胸の傷の奥。魔力の殻を破って」


 それにわかったわ、とアリサが呟き、レティシアが頷くと――。


『……さあ、終えよう。俺達の物語を』


 エドガーの右目が輝き、最後の戦いが幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ