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可愛い先輩(男子)を惚れさせてしまった件について  作者: 自堕落 万歳


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3/3

後日談

「——————まぁ、そんなこともありましたねぇ、紫苑先輩?」

「なんかその呼び方、むず痒いんだけど…」



昔の呼び名で夫を呼ぶと、少し照れたような反応をされる。

もう立派な大人だが、そんな顔もやはり可愛い。

やはり、幾つになっても可愛いものは可愛いのだと思わされてしまう。

…なら私は、幾つになってもイケメンでいようかな。


込み上げてきた愛おしさのままに、夫と膝で寝ている小さなお姫様の頭を撫でた。








あの体育祭の日から、十数年。

色々なこともあったけど、私の隣には先輩がいた。

お互い恋愛経験が豊富じゃなかった事もあって、両思いまで時間はかかったけどその期間も今思えば掛け替えのない青春だったと思う。

流石に先輩が卒業間際の時は焦ったけど。


結局、告白もプロポーズもお姫様だっこも、全部したのは私からだった。

告白は壁ドン、当然ながら私がする方で、先輩がされるほうだった。

プロポーズに関しては特にノリノリで、紳士っぽく跪いて指輪を差し出したのを覚えている。

他の人からは「甲斐性がない人だね」と言われる事もあったけど、特にそれで嫌だと思った事はない。

代わりに私が特大の甲斐性を持っているのだから。

私の大きすぎる愛でお姫様だっこすれば全ては万事解決なのである。


それに、先輩の反応があまりにも可愛かったから。

私は可愛いものに弱い。

だから少女漫画のヒロイン顔負けのリアクションで返事してくれた時は、思わずこの日のために買った一眼レフカメラで連写したものだ。

そして襲いかけて鋼の理性で自分を殴った。偉い、私。

ちなみに、それは今でも私のスマホに百枚ほど保存してある。


私がヒーローで、先輩がヒロイン。

あべこべでも、それがまたいい。

私は先輩の可愛らしい反応が好きだ。

だから、私は先輩の色んな顔を見るために甘やかす。

先輩が好きだと言ってくれる、かっこいい私で居続ける。

イケメンムーブは案外性に合っていたから、全く苦じゃなかった。

むしろ、めっちゃエンジョイしてた。


大学に入っても交流は途絶える事なく、一途に付き合い続ける事ができたのは最早奇跡だと思う。

これも、先輩がピュアでいてくれたお陰だ。

そして、私が度々襲いかける度にちゃんと赤面してくれたお陰だ。

だから私はちゃんと大の大人になるまで待てが出来たのである。

変な虫は…まぁ、いたっちゃいたけどなんとか乗り越えられた。

ずっとラブラブというわけでもなく、喧嘩をする事だってあるけど先輩と結婚できた事は素直に嬉しい。


想いあっている人と未来を共にする幸せって、こういうことかー! と結婚式で叫んだだけの価値はある。

なお、それを聞いて顔を真っ赤にした夫はもちろん可愛かった。

写真を撮ったり、愛でたりしていたら親戚から白い目で見られたけど後悔はしていない。




結果こうして、夫とそっくりで天使な娘と出会えた訳だし。

マシュマロみたいな頬っぺたの愛娘は、もうすぐ五歳。

これからの成長がとても楽しみである。

娘の身体をトントンと優しく叩けば、瞼がピクリと動いた。

…さては、寝たふりしてたな?

ニヤニヤとしていると、まだ寝ていなかった娘が眠そうにしながらもこんなことを言った。


「ねぇ、なんでママとパパはだいすきどうしなの?」


一瞬息が詰まって、思考が止まった。

…これ、何処まで言えば良いんだろう。

おそらく私の親も悩んだであろう質問。

生々しすぎるのも良くないけど、ぼかし過ぎるのもそれはそれで…うん。なんか、アレだし。

でも、答えなきゃいけないよなぁ…

なんとかしてその問いに答えようとしたら、意外なことに夫が先に口を開いた。


「それは、パパがかっこいいママにドキドキしたからだよ」


夫は茶目っ気のある笑顔で娘にそう言った。

昔はその手の話題が出ると赤面したばかりだったのに、最近は成長したようだ。

照れた様子はなく、あっさりとしている。

それを見て、思わずクスリと笑ってしまった。


「ふ〜ん、そうなんだぁ! …ママは?」


今度は、私もちゃんと胸を張って答えられる。

何故なら私は、先輩を惚れさせた超絶イケメンだから。


「…ママはね、かわいいパパをドキドキさせちゃったからだよ」

「そっかぁ…いいなぁ、パパとママ。わたしも、そんなふうになれるかなぁ?」

「ふふ、なれるよ、きっとね」


聞きたいことを聞き終えた娘は、あっという間にすやすや眠り始めた。

その寝顔を二人で静かに眺める。


言葉を交わす事はなく、ただ穏やかな時間が流れていった。

どのくらいかは分からないが、しばらくして。




「おやすみ、先輩」

「おやすみ、羽奈」




それだけ言って、眠りについた。

必要以上の言葉は、私たちにはいらない。

言葉がなくても、お互い伝わるものはきちんと伝わっているから。


夜空に輝く黄色い月が、カーテンの隙間から私たちを明るく照らしていた。

比良瀬羽奈…見た目は可愛い系なので紛らわしいが、性格は男前。夫と娘がかわいすぎて幸せ。

千歳紫苑…見た目も性格も可愛い。妻がカッコ良すぎて供給過多なのを娘で癒している。

娘…母親があまりにも男前で、父親があまりにも可愛がられているものだから世の夫婦を見て困惑している。

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