08 慌ただしいお買い物③
き、気まずい……。 かれこれ一時間はマレンさん無言なんだけど……。
そう、この金髪少女マレンは褒められたことが嬉しいのか恥ずかしいのか、分からない感情に囚われている。
人生で初めて褒められたマレン。
(ど、どうしたらいいんだ? なんて言えば……)
「……あ、あのマレンさん?」
「ッ!? な、なんだ?」
俺が静寂に耐えきれずに話しかけるとマレンさんは肩をビクつかせ、壊れたロボットのように振り返る。
「このままお互い無言っても気まずいので、何か喋りませんか?」
「……そ、そうだな」
「それで、新しいマントはどうですか?」
「う、うむ。 よく私に合っている、動きやすい」
「やっぱり動きやすいのが一番いいのですか?」
「そうだな、動きにくいといざとなったとき困る」
ふ、ふぅ……。 なんとか場を直すことができたな。 このまま上手くいけば……。
そう思ったのもつかの間、今の瞬間を狙ったかのようにもの凄い轟音と共に遠くの店から煙が上がった。
「む?」
「な、なんだ!?」
「とりあえず向かうぞ」
「あっは、はい!」
俺はマレンさんに担がれながら煙の場所に向かう。
そして、そこには――。
「あっははは! この街は俺達のだぜ!!」
「なんだ、コイツら……」
「……」
「え?ちょっ!? マレン!?」
すると無言でマレンさんが前出る。
「……誰だ?」
「あ゙? てめぇこそ誰だ?」
「私はマレン・ガーデンだ、さぁ名乗ったぞ?」
「あはは!馬鹿正直だな! いいだろう、俺の名は"アル・ナスル"。 魔王の幹部だ!」
「ッ!?」
「!?」
その言葉に俺達二人は空気が凍ったかのようにフリーズした。 魔王?あの弱い魔王?
どういうことだ? 魔王って弱過ぎるんじゃないのか? そんな魔王に幹部? いや、今はそんなことを考えている場合じゃない……。
「まぁまぁ、俺は魔王の幹部なわけなんだが、こう仲間がいないんだよ。 せっかくだ、お前ら二人仲間にならないか?他にも魔王幹部はいるんだが、どうも俺達は仲良くならなくてな、それに幹部一人一人には部下がいるだろ?そこでお前らを俺の部下にならしてやろうかとな。 どうだ?部下に入ったら月に金貨十枚は保証しよう。悪くないだろ? しかも女の方は美人ときた、男はまぁまぁだが、全然許容だ。魔王様もきっと喜ぶ! 今すぐ連れて行こう!ああ、そうしよう!!」
「……」
「……」
な、長い……。 コイツ長過ぎる、絶対相手のこと何とも思ってねぇな!? マレンさん横であくびしちゃってるし。 しかも俺、金貨の価値分からないしな……。 それに、今さらっと俺のことディスった?
俺の考えと同じなのか、マレンさんはゆっくり魔王幹部に歩みを寄せる。 その拳はプルプルと震えている。
「おぉ、なる気になったか?」
「"長い"」
その言葉が聞こえた途端、マレンさんの腕は消え、アルは消えていた。
「……は?」
「行くぞ、ソウマ」
「え、え……?」
「どうした?」
「どうしたって……さっきの魔王幹部ってやつは……?」
「何、吹き飛ばしただけだ」
「魔王幹部を!?」
魔王幹部が弱い? いや、マレンさんが強過ぎる、のか……?どっちにしても魔王幹部を一撃!?
「……せっかく楽しかったのに」
「え? 何か言いましたか?」
「ッ!? な、何も言っておらん!」
マレンさんは非常に小さな声で呟いたのを上手く聞き取れず、聞き返したら、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。 その様子を見た俺はさらに聞き返すをやめるが、なにやら聞き逃すのは勿体ないと感じた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
大食いやマントや魔王幹部などの慌ただしい買い物が終わり、帰ることとなった。
だが、ここで大きな問題が起きる。
「さあ、帰るぞ」
「あ、あの……」
「ん? どうした?」
「なんですか? その荷物……」
「ああ、オススメと言われてな」
現在マレンさんの手には、ぱっと見で十を超える手荷物。 店員のオススメと言われたと言っているが断ることもできるだろうに。
「だとしても! もうちょっと加減ってことを知りませんか!?」
「店員から似合うと言われて、ついな」
「どんだけ口車に弱いんですか!?」
「もう買ってしまったのだから仕方ないだろう」
「は、はぁ……確かにそうですが、どうやって帰るんですか? そんな荷物いっぱいで」
「問題ない」
「え?」
その時、マレンさんが拳を握ったと思ったら手にいっぱいの荷物が一瞬にして消えた。 え?どういうこと?
「では行こうか」
「ちょちょちょちょ!? なに普通に終わらせようとしてるんですか!?ちゃんとその原理を教えてくださいよ!」
「面倒くさいなお前は」
「貴女には言われたくありませんよ!?」
マレンさんは小さくため息をつきながらも渋々口を開く。
「これは"収縮魔法"だ」
「収縮魔法?」
「ああ、収縮魔法は文字通り、ありとあらゆるものを収縮する。 どんなサイズにも」
「どんなサイズにも……」
「早く帰ろう、お腹が空いた」
「あんなに食べたのに!?」
ぐぅ〜
と大きな音が鳴り響いた、言わずもがな音の正体はマレンさんのお腹。
そして、顔を見ると分かりやすく耳まで真っ赤になっていた。




