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ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね  作者: 迷子猫
平和と日常

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19/45

17 幸せな時間

 エリスさんに聞くと花火開始まで十五分前となったらしい。 まあ、そんなお知らせを聞いても、この現状は変わらないだろうが。


「お前、それ私のだ!」

「お腹が空いてるから私の!」

「どういう理論だ貴様!?」


 そう、現在目の前で行われているのはマレンとアンの食べ物争奪戦。 マレンが持っている食べ物をアンが奪おうとしている、アンが悪い。けど、止めれない。 そう、止めれないのだ。

 ――何故なら。


「エリスさんこれ、いつ終わりますかね?」

「正直わかりませんね、二人共もう音も消えてる気がしますから」

「ですよね、なんか音が遅れて聞こえますから」


 マレンとアンの争奪戦は殴り合いにまで発展し、現在二人は音を置き去りにするほどの速度で殴り合っている。 ちょっと前までのマレンならそんなことはできなかったのだが、あの魔王幹部に負けそうになったのが相当悔しかったのか、あれから特訓をし始めたらしい。

 毎月毎月、化け物になっていくマレンを見て、俺は正直驚きもなかった。だけど、まさか音が消えるほどとは……。


 ねぇ、確か音ってめちゃめちゃ速いよね?この二人、当たり前のように音速超えてるわけよ。止めたくても止めれないし。


「いい加減その肉を離せ!」

「それはこっちのセリフ!」

「私の金で買ったんだ!」

「正確には私のお金ですけどね……」


 横で自分の金だと主張するエリスさん。 まあ実際そうだけど……。

 だけど、このままじゃ花火どころの話じゃなくなる、何か手を打たなければ。


 あっ、そうだ。


「二人共! 半分こにしたらどうかな?」

「「は?」」

「ほ、ほら!仲良く食べれば花火も楽しいでしょ?」

「ふむ……」

「あー……」


 ……どうだ?


 俺が心配で顔をしかめた瞬間、二人は露骨に嫌そうな顔をしていたが、数秒後に諦めたのか二人共、手を差し出した。 どうやら俺の作戦は成功したらしい。


「さ、流石ですソウマさん……」

「まあ、こういうのはなんか慣れですけどね……」

「まあこの原因の二人のうち一人はソウマさんが連れて来たものですけどね」

「アンって俺のせいなんですか!?」


 その後、結局ご飯を半分こしたマレンとアンは一緒に座りながら食べ、なぜか仲良くなっていた。




 二人の食事が終わり、花火あと数分という所まで経過していた。


「花火、俺の世界と何か違うのかな?」

「ソウマさんの世界はわかりませんが、おそらくビックリされると思いますよ」

「へぇ、そんなに……」

「この地域の花火は世界一だからな!」

「なるほど、それは楽しみだ」


 そして数分後、花火開始というアナウンスが響き渡る。 一体、どこにアナウンスの機械があるのかは分からないが。


「そろそろ始まるぞ!」

「どんな感じなのかな?」

「終始そのテンションですね……」


 ――ヒュ〜バゴォーン!


「うぉ……」


 正直、この花火に俺は度肝を抜かれた。 俺の世界との花火とよく似ている、ただ違う部分が多すぎる。

 爆発した花火が空中を舞い、四方八方に動く演出なんて、俺の世界の技術では不可能だ。  他にも、爆発した花火の色がどんどん変色していく。赤から青に、青から緑へと、どんどん変色していく。


「すごいな……」

「ソウマ!」

「ん?」

「ふふふ……」

「え? んっ!?」


 自分の名前を呼ばれ、反射的に反応すると呼んだのはマレンで何をするのかと思っているつかの間、当たり前かのように己の唇と俺の唇を重ねてきた。

 一瞬にして、脳が幸せとも感じる感覚に陥り、絶対に離れたくないと本能的に感じてしまう。


 は? なに、これ……?


 やっと脳が冷静に戻り、俺は慌てて唇から離れる。 もう少しやりたいという気持ちはぐっと堪えて。


「な、ななな何するの!?」

「やっぱり、こそこそするよりも大胆でやるのが私に合ってるな!」

「何言ってるの……?」


 己の照れを隠すようにガハハと笑うマレンの横で俺は訳のわからないまま、固まる。 そして幸い、二人にはバレていないのか特に何も言ってくる気配はない。 いや、エリスさんはもしかしたら気を遣ってる可能性もあるが。


 その時、エリスがこっそりこちらを見ていたのは俺には気がつけなかった。

 そして、誰にも聞こえなような囁くような声でこう呟いた。


「ふふ、マレンさんだけではなく、私にもチャンスはありますか?期待してますよ、ソウマさん……」


 そんな優しい声は誰にも聞こえなかった。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 祭りが終わり、数日が経った。

 マレンからのキスやアンとの出会いがあったからか、正直まだ心は疲れている。 そして俺は、新たな趣味を見つけた。

 それは――。


「今日は……」


 俺はエリスさんにお願いし、日記帳を貰い、書いていた。

 そう、新たな趣味は日記を書くことだ。 その日あったことや些細なことでもいい、その日の全てを書いている。


『拝借。 今日は普通の日だった、本当に特にあまりなかったが、マレンがいつも通り可愛いかった。明日はメイド五人の手伝いをしてもいいと思っている。 やっぱり俺もこの屋敷の居候?に近い存在に近いと思うから、何か手伝えることがあれば積極的に手伝いたい。 今日はここで終えよう。もう眠い』


 俺は日記を閉じ、ベッドに入り、電気を消す。


 明日はどんな日かな?


 そんなことを考え、目を閉じようとした瞬間――。

 勢いよく、俺の部屋の扉が開く。


「ご主人様ー!! 一緒に寝ましょう!」

「お願いだから寝かせてくれ!!」


 アンが現れ、俺の睡眠は見事に邪魔にされた。






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