01 ゲームに来たよ
あれは何でもない日だった。特別暑くも寒くなく、人通りだって普通だった。
強いて挙げれば今日は祭りがあってカップルが比較的多いことだろうか?
そのカップル達は制服デートをしているのか高校の制服を着ている。
声がうるさい。
周りを一切気にせず大声を出すカップル、耳栓をしていても貫通しそうな声。
リア充なんか爆発してしまえ。
うるさいな……ちょっとは遠慮って言葉を知らないのか?
俺は外のカップルに腹が立ちながらもスマホでゲームを開く。
その時、見たことない演出が入りアバターがひょこっと横から顔を出してた。
そのままアバターは口を開き、こう言った。
「そこの君、一緒に魔王を倒さないか!」
「は……?」
次の言葉が出る前に俺の足元に変な魔法陣が現れた。
視界には砂嵐のようにノイズのが走り、自室の景色が溶け込むように切り替わる。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「暗……」
気付いた時には木の板であったはずの自室から固い石の床へと変わっていた。
そして、電気を付けていたはずなのに薄暗い蝋燭にって……本当にどういうことだ?
「ようこそおいでくださいました、召喚されし者……。貴方様はこれから魔王を倒され、元の世界へと帰るのです」
「は、え……?」
「まだ少し困惑されてるようですね、でも大丈夫ですよ。 この世界の魔王はそこまで強くありません!」
いやそんなことを言いたいんじゃないとツッコミを入れたいが、言葉をぐっと堪えて状況を整理する。
魔法陣が現れて、いきなりここに……。
「待て、本当にどういうことだ?」
「安心してください、サポートは全て私が致しますので」
水滴が落ちたような声が聞こえて顔を上げると、埃やシワも一つもない水色のフードを被り、セミロングの銀色の髪と美しい黒色の目の美少女……いや、美女がそこに立っていた。
「あ、あの……これって?」
「貴方は現実の世界から召喚されたのです」
「いや、もうちょっとこう……説明を……」
「はい、貴方は召喚されて魔王を倒すのです」
ああ、だめだ……まったく話が通じない……。
俺が求めている答えが一切返ってこない。
俺はなんで選ばれたのか、俺は何をしたらいいのかを聞きたい。けど、この美女は言葉しか繰り返さない。
俺が意味の分からなさに頭を抱えていると遠くから声が聞こえた。
「ちょっと、そんなんじゃ相手が分からないでしょ? ちゃんと説明してあげて」
声が聞こえる方に顔を向けると俺は言葉を失った。
ここの空間が時が止まったかのような感覚に陥った。
だが、残念ながら時間は進んでいく。
「は?え?……『マレン』……?」
その相手は俺が見覚えがあるというほどじゃない。もはや親の顔をより見たと言っても過言ではない、そこには俺が毎日のように使うアバター『マレン・ガーデン』がいたのだ。
「あれ、私の名前を知ってるの? この子に教えた?」
「い、いえ、教えた覚えは……」
俺よりは少し小柄で、百六十前後ぐらいに見える。腰近くまで届きそうな黄金の金髪。極め付きには全てのものを見透かすような白色の目がこちらを見ていた。
全てのステータスがゲームでのアバター『マレン・ガーデン』だった。
「ふん、まあいい。それよりも君!」
「え?あ、はい!」
「一緒魔王を倒さないか?」
「いやだからさっきから何、その魔王討伐誘い!?」
「む、何かおかしいことでも言ったか?」
「おかしいでしょ! まず俺名乗ってないし、なんで召喚されたのかも、なんで俺なのかも、この世界はどうなってるのかも!」
「そ、それはすまなかった……」
あっ案外聞き分けが良いんだな……これは勢いに任せて酷いことを、謝らないとな。
俺は熱くなった頭を深呼吸をして冷やす。
そして今できるだけの笑顔で口を開こうしと瞬間、バゴォーン!とものすごい音と共に水色フードの美女が姿を消した。……は?




