第165話
お待たせしました
1日の時間をもっと伸ばしてくれ……
「離せー!私をこんな目に遭わせてタダで済むと思ってるのかー!」
中央神殿会議室。その中央で喚きながらプランプランと揺れるドラゴンの神殿のトップ。その周囲には怖い目の神官が取り囲んでいる。
この状況になった理由を簡単に説明するとヘルゲート・ガーディアンを倒して中央神殿に戻ってきて報告。ドラゴンたちのおかげで倒せたと知ったこの阿呆王族が意気揚々と演説を始めたので簀巻きにして吊るし、こいつのやった唾棄すべき行為を報告。今から全員で魔女裁判するところ。ちなみにお偉いさんは皆こっちの味方。中央神殿のお爺ちゃんなんか『存分にやりなさい』と朗らかに言ったからね。
「大体!私が薬を作った証拠はあるのか!証拠を見せろ!」
「証拠ならありますよ?ほらこれ」
ご提案に答えて私はストレージから薬を取り出した。この状況を想定して残してあるんだよね……ついでに説明文はスクショして他の神殿のまとめ役に共有済み。
「ご丁寧に偽装までしてありましたけど……私みたいな薬作りに長けてる人には通用しませんよ?」
「ぐっ……そ、そんなもの私を貶めるための偽装だろ!弱小のスライム如きが……『ボコ』ゔっ!?」
あ、ごめん。いきなり悪口言われたから腹パンしちゃった。手が滑ったね……クティアさん笑い堪えてるな。
「偽物を疑っているならプロに確認してもらっても良いですよ?偽物じゃなかったらあなたの罪が確定するだけですけど」
「この……」
私の言葉に何も言えなくなったのか阿呆王族は黙り込む。しかし目は全然反省の兆しも無く、ドラゴンの神殿所属の神官たちに助けろと言わんばかりの目線を送った。だけど残念……ここにあんたの味方居ないよ?
「カエラ様。流石の私たちも庇いだても手助けもしませんよ……はっきり言って我々も怒っていますので。さっきもココロさんが殴ってなかったら私が殴ってました」
「いや、別に殴ってもいいんですよ?むしろ私じゃなくて被害者の方が殴るべきですし」
薬を飲んで苦しんだドラゴンたちの分をね。アレの治療本当に大変だった……あの系統の状態異常は薬での治療が面倒臭い。だからあんな副作用の薬は破棄するべき……薬を作る人ならね。
「ちなみにドラゴンの神殿以外が怒ってる理由分かってます?」
「知るかそんなもの。どうせ私への嫉妬だろう?ドラゴンの神殿という偉大な神殿の長なのだから」
「そんなわけないでしょ。皆あんたに関しては呆れしか感じてないですし……ナルシストにも程がある」
呆れ過ぎて怒りが何処か行きかけたわ。皆が切れてる理由なんて……パートナーを大切にしないその価値観にだよ。自分のパートナーに対してあんな薬を使うことすら知ったら不快に思うのに、それを他人のパートナーに騙して使わせる……普通にブチ切れるわ。特に神殿所属プレイヤーはパートナーのことを家族だと思ってるプレイヤー多いし。
「ということでこれからリン……反省会を開始するわけなんですけど。何からいきます?」
「痒みを引き起こす薬草でも貼り付けようよ〜。解毒薬無いから1回貼ると3日は痒み引かないけどね〜」
「クックックッ……この方はどうも命の価値が分かっていないようですし。棺桶に入れて旧ノーステルマに放置してみますか?死にかければ命の価値も分かるでしょう」
「とりあえず反省の色が見えるまで1人1発ずつ殴ろうぜ。回復薬あるし全員で殴っても死なないだろ……1周してもダメだったらもう1周すれば良い」
そろそろストレスも溜まってきたし、言葉による説教はやめて暴……物理的な話し合いにすることにした。とりあえず出てきた案を全部試そうかと思っていた時、何やら部屋の外が騒がしくなってきた。ん?なんだろう?
バン!カッ!カッ!
会議室の扉が勢いよく開くと見るからに高貴な男性が入ってきた。見るからに神官じゃないね……あと何処と無くそこの阿呆と顔が似てる気がする。もしかして……
「あ、兄上!助けてくれー!」
吊るされてた阿呆が入ってきた人物の顔を見ると助けを求め始めた。やっぱり王族……しかも兄か。面倒なことになったね。
(こいつも簀巻きにして吊るすか?いや、下手に王族に手を出すと面倒だし……この阿呆は自業自得だからノーカン)
私を含めたプレイヤーが睨みつける中、阿呆の兄はどんどん近づいてくる。そして私たちの前に立った。
「貴殿らがあのヘルゲート・ガーディアンを打ち倒した者たちか?」
「そうですけど?まぁ、戦いの方はそこの吊るされてる人のせいで大変な思いをしましたけどね」
私は嫌味を混ぜて返答する。これに対して怒るかと思ったけど、相手は様子を変えることなく平然としていた。
「そうか。我が国の悩みの種であったアレを倒してくれたこと感謝する。我が名はレディオス・リオ・シンフォニア、この国の王太子であり……そこの愚妹の兄だ」
……愚妹?自分の妹に対して言うような言葉じゃなくない?私がそう思っていると王太子様は横を通り過ぎると阿呆の前に立ち……腰の入った右ストレートを阿呆の腹に叩き込んだ。
「ゴフッ!!?あ、兄上……何故……」
「何故だと?言われずとも分かっているだろう……それとも言われないと分からないほど愚かなのか?」
王太子様の背中から赤黒い怒りのオーラが立ち上る。そのあまりのオーラに私たちも威圧される。王太子様は阿呆の頭を右手で掴むと力を入れ始める。
「貴様、私の代理の癖に色々やらかしてくれたようだな……最近は私も忙しく確認がおざなりになってしまっていたとは言え、自分の部下のパートナーへ危険物を与えるような愚か者とは思わなかったぞ」
「い、痛い痛い!!あ、頭が潰れる!!?」
阿呆の哀れな悲鳴と頭蓋骨がミシミシ言う音がずっと聞こえてくるね。あまりの王太子様のお怒りようにこっちの怒りが引いてくるね……てかあの阿呆代理だったんだ。それでよく大きい顔できてたね。
「貴様の権限は今を持って戻させてもらう。しばらく城で反省しろ」
「あ、あ、あ……」
頭を締め付けられ過ぎたのか阿呆は単音しか喋れなくなってた。王太子様は溜め息を吐くと帰り始める。あれ、阿呆は連れて行かないんだ。
「そこの阿呆は3日後に引き取りに来よう。それまでに死んでいなければどう扱おうが構わん……ああ、王族に対する不敬罪も気にしなくて構わない」
とんでもない免罪符を残して王太子様は帰っていった。後には権威の全てを失った哀れなヒツジとギラリと目を光らせたオオカミの集団。
「それじゃあ……覚悟してくださいね?」
「だ、誰か助けてくれー!」
その後、日が昇るまで中央神殿からは可哀な悲鳴が聞こえ続けたという。オオカミたちが満足するまで……私は用事あったから途中で切り上げたけどね。




