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37・ これだから男って奴は。

  

 何時までも主役がコソコソ隠れていては困ります。


「ねぇ、マリ。メイドさん達にも何か作ってあげれば?」 


 私が声を掛けると、


「う゛~」


 マリは余計に縮こまってしまいました。

 その姿を見て、給仕長がマリの側に近寄って片膝をつき、


「マリサマ、ワタシカラモ、オネガイシマス。マリサマノ、オイシイ、オリョウリデ、ミナヲ、オドロカセテ、クダサイ」

「わかった」


 むっきー! 何故、給仕長の言う事は素直に聞く!


「給仕長さま、お魚だったらすぐできる!」

「アノ、トンデモナク、オイシイ、オサカナ、デスカ!? ミンナヨロコビマス、ワタシモイタダイテ、ヨロシイデスカ?」


 給仕長は大袈裟に両手を広げて目を見開きました。どいつもこいつも、あざといったら、ありゃしねー。


「うん! もちろん!」


 マリは満面の笑みで返しやがり、早速とばかりに氷蔵庫に駆けていきます。


 転んじゃえ!


 取り出して来たのは黒鯛です。マリ曰く「お魚パラダイスで一番、おいしそーなやつ!」だそうです。マリはあっという間に、その黒鯛を捌くと、切り身にして串を打ち、バットに並べ、そのまま焜炉の前に立つラビちゃんの許へ行き、


『ラビ、ヤキヤガレ!』


 えー! 無茶振りすぎます。

 ピザ作りが「簡単」とは言いません。素人の私には分からない難しい部分もあるのでしょうが、ピザ作りに比べると技術力が必要に思えますし、ラビちゃんにそこまでの事を望んでいる訳ではありません。


「エ、マリサマ……デモ」


 ラビちゃんが逡巡するのを、


『シッパイ、イイ、ススマナケレバ、ススマネェ!』


 マリは毅然とした態度で撥ねつけました。


「……ハイ!」


 ラビちゃんはじっとマリの瞳を真正面から受け止めて、力強く頷きました。惚れ惚れするような良い横顔です。


『皆さーん。マリ様のご指示で順序を変えて、黒鯛の「シオヤキ」を作りますので、ご覧下さーい!』


 ラビちゃんは皆に聞かせるというより、自らを鼓舞するかのように言いました。

 その言葉に引き寄せられるように、調理部の皆さんがラビちゃんを取り囲みます。総料理長も席を立ち、その輪に加わります。皆さんに見つめられて、緊張しないでしょうか? 心配です。

 メイドの皆さんはラビちゃんが色々なお料理が作れる事に、素直に感心していますが、給仕長は初めて娘のピアノ演奏発表会に来たお母さんのように、今にも泣きだしてしまいそうな、心配で仕方ないといった表情をしています。

 魔王様と勇者は、ラビちゃんなら大丈夫と信頼しているが故なのでしょうが「面白い事になったぞ、お手並み拝見」とばかりに顔を見合わせ、ニヤついています。 

 不謹慎すぎます!

 ウルちゃんは、と、目で追うと、作業の手を止めて、泰然自若として両腕を組み仁王立ちでその場を動かず、じっとラビちゃんを見詰めています。


 さすがウルちゃん、大物です!


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