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21・ 災いはいつも唐突に。

 

 翌朝、執務室にいます。


 本日付で辞令が下され正式な形でピザ出店準備室へと出向となった、ラビちゃんとウルちゃんが給仕長に連れ添わ

れてやって来ました。二人とも給仕服姿も可愛らしいですが、例のお揃いの調理服が、とっても良く似合っています。

 正式な席なので、勇者は叩き出しました。それにしても昨日、あれだけ酒管長と派手に殴り合ったというのにピンピンしていて、当たり前のような顔をして長椅子で寝そべっているのですから驚きです。

 堅苦しい挨拶は抜きにして、


『ラビ室長、ウル副室長。よろしくお願いします。これからもマリの事を助けてあげてね』

『ロキエル様。助けるなどと、とんでもないです。ご迷惑をおかけする事になるやもしれませんが、マリ様のご指示通り出来るだけの事はさせて頂くつもりですので、こちらこそ何卒よろしくお願い致します』


 うん、ラビちゃんデキた娘です。


『っス!』


 うん、ウルちゃん元気いっぱいです。

 二人とも落ち着いた様子です。給仕長のにこやかな表情から察するに、さては給仕長をペロンとひと舐めしてきましたね。改まって挨拶をしているものですから、珍しい事にマリが緊張しているので、可笑しくて仕方ありません。


「ほら、マリもご挨拶」

「よーしゅく、お、お願いしまっしゅ」

「ヨーシュク、オ、オネガイシマッシュ」「ヨーシュク、オ、オネガイシマッシュッす」


 マリのカミカミの日本語を聞いて、ラビちゃんとウルちゃんの返す言葉も可笑しなことになってしまいました。しかも、マリは頭を下げ過ぎてサイドテーブルにオデコをぶつけて、痛そうにしています。皆さん笑いをこらえるのに必死です。


 それはさておき、お仕事のお話です。


『昨晩、総料理長が試食会のコース料理に加え、ピザも是非試食したいし、コンフィの作り方も最初から見学させて欲しいとの事で、五人ほど連れて来ると仰られました。給仕長も、ピザの試食をするなら、どういうお料理なのかホールスタッフ候補に知っておいて欲しいとの事で、ニ、三人連れて来たいと仰られたので、マリに伝えると『イソガシ~! デモ、ラビ、ト、ウル、イル、ダイジョーブ!』と、言いながら、とても楽しそうでしたよ。さっそく二人には改めて初仕事として、手伝ってもらいます』

『かしこまりました!』『かしこまったっス!』


 二人が返事をするなり、マリが跳びついて腕を絡ませ、三人揃ってもの凄い勢いで転がり出るように、執務室を後にしました。その姿態に唖然とした表情の給仕長と顔を見合わせ、二人して吹き出してしまいました。


『あの娘たちは、元気いっぱいですね。いつでも駆け足で。給仕の行儀作法として容認できる事では無いのですが、見ていると胸のすく思いがします』


 給仕長が小さく首を横に振りながらため息混じりで、感心したように言いました。


『えぇ、本当に。ところで給仕長は、これから如何なされます?』

『あの娘たちの様子を窺ってから、一度給仕部に戻り、ホールスタッフ候補の娘たちを連れて、頃合いを見て、改めて開発室の方へお邪魔させて頂きたいのですが』

『分かりました、では、後程』


 優雅に一礼して執務室を後にする給仕長を見送って、私も、ちょっとした書き物を済ませてから、開発室へ向かおうとした……その時です。


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