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ロスヴィータは小さく吐息を漏らした。ロスヴィータなりに、魔法が使えそうなメンバーの負担などを頭の中で計算しているのだろう。ロスヴィータから視線を外せば、エルフリートたちとの距離をある程度保って追いかけていた先頭グループが待機地点に集まってきている。
彼女たちはエルフリートたちが待たないと言っていたにも関わらず、こうして集合をかけた事に不安を抱いているらしい。そわそわとして落ち着きのない様子を見せていた。
落ち着いているのは、エイミーたちくらいだ。戦争を経験しただけあって、これくらいはどうという事もないのだろう。戦争経験組が全員いるかと思えば、そうではない。もしかしたら、バルティルデやマロリーの役割を知って分散してくれているのかもしれない。
少なくとも、ここにドロテがいないのには理由がありそうだ。
「つまり、補助魔法の効き目が弱まるタイミングでかけ直しを行い、持続させるという事だな」
「その通り」
エルフリートは少女たちにそのまま待つようにとジェスチャーで指示を出す。彼女たちはエルフリートの笑顔を見て、あからさまにほっとした表情をした。
「だが、補助魔法はいくつも担当させるわけにはいかないだろう」
「そうなんだよねぇ。だから、絞るしかないんだ」
エルフリートは何を優先すべきなのか悩んでいた。速度はほしいが、身体強化の前に結界補助もほしい。エルフリートのような器用さはないだろうし、ロスヴィータのように目の前に現れた障害物に瞬時に対応する事もできないだろう。
そうなると、頼りになるのは結界になる。だが、結界は維持が難しい上に維持の必要ないものは基本的に一回限りで壊れてしまう。
「身体強化だけでいけるのか?」
「さすがロス、私が一番悩んでいるところを突いてくる……」
遅れはとっているものの、さすがは先頭グループといったところか。待機中の彼女たちは疲労しているようには見えない。どうやらまだ余裕はあるらしい。速度さえ出せていたら一緒に移動する事も可能だっただろう。
戦争経験組がこのグループに揃っていないのも、速度が出せなかった理由の一つかもしれなかった。シャーロットはいるが、アイリーンがいない。魔法を使うことに長けている二人が揃っていないというのならば頷ける。
「誰が何を使う事ができるのか、どれくらいやれるのか、新人全員はまだは悪しきれていないんだよね」
「これが初めての実践的な訓練だ。仕方ないだろう」
「うん。それはそうなんだけど」
エルフリートはロスヴィータの言葉に頷きつつ、彼女たちが戦力になるだけの能力を有しているのかに不安を覚えていた。
エイミーやアイリーンたちの能力は把握できている。彼女たちだけであれば、後れを取る事もなくついてくる事ができていただろうという事も想像できる。だが、彼女たちの能力で全員の移動を補助するとなると話は変わってくる。
そもそも、エイミーはロスヴィータと同じ系統で魔法は使えないから戦力外だし、ドロテとリリーは自分への強化ならぎりぎりできるというレベルだ。それも、ないよりはまし程度の可愛らしい補助魔法だった。
つまりドロテとリリーも戦力外だ。
となれば、アイリーンとシャーロットだけで全員を補助する事になる。それは現実的ではないと言わざるを得ない。
「うーん、環境破壊はしたくないから、あんまり雑な事はできないんだよね」
「自然破壊が、という点でも大切にしたいところではあるが、それ以上にこの国の防衛力に関わるからな……」
「そうなんだよねぇ」
エルフリートたちがなるべく慎重に動いているのには、重要な理由があった。戦争未満として処理されたものの、この地域は緊張がまだ残っているというのが実情だ。
別の山でも良かったのだが、一番新人に優しい地形でもある為に外せなかったのだ。
様々な事情が絡み合い、制限付きでの訓練をするしかない今、重要視する順番を変えるわけにはいかないのだった。
「身体強化を重視しようかな。速度は余裕があればって感じ」
「……まあ、そうなるだろうな」
「怪我がないのが一番大切だもんね」
「ああ」
脚力の強化は後回しにして、先頭を行く騎士にだけ露払い――障害物の対応の事をそう言って良いのか分からないけど――ができるようにすれば良いだろう。
「補助魔法の欠け方にも効率を求めれば、何とかなる……と思う」
「そうか」
会話をしている内に騎士の数が増えていた。どうやら続々と合流し始めているようだ。だが、アイリーンの姿はまだない。代わりにドロテが合流している。
やはり、分散して移動してきているようだ。先輩としての自覚をもって行動できるようになった少女たちに、エルフリートは頼もしさを感じていた。




