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異世界帰りの元勇者は現実世界でも天才でした。  作者: 坂元たつま


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王都の真実と知恵の逆転劇(ロジック・クーデター)

マサトとマリア王女は、地下通路を抜け、香坂サヤが待つ研究室へ急いだ。背後では、転送ビーコンが破壊されたことによる警報音が鳴り響き、ISTOの警備隊員たちが動き出す気配があったが、マサトはそれらを無視した。彼の知性は、最優先事項である王都の混乱の収拾に集中していた。

 偽りの王女の計算

研究室に戻ったマサトは、香坂サヤに指示を出した。

「香坂さん、俺たちが地下にいる間に、偽のマリア(リディア)は、王都の軍隊と国民を完全に掌握しようとしているはずだ。彼女の次の行動は、**『本物のマリアの死』**を偽装し、王位を完全に奪うことだ」

香坂は、ISTOの心理戦術を知っていた。「その通りよ。リディアは、**『恐怖と論理』**で人々を支配する。彼女は、王女の権威を利用して、マサトくんを『王女を誘拐したテロリスト』として指名手配し、王都の軍隊に攻撃させるつもりだわ」

「その通りだ。彼女の計画は、論理的には完璧だ。だが、彼女は**この世界の『感情』**を理解していない」

マサトは、マリアに王女としての威厳を取り戻すよう促した。

「マリア様。今、最も必要なのは、軍隊の指揮系統を取り戻すことではありません。**国民の『信頼』**を取り戻すことです。国民は、偽りの王女と本物の王女を、何で見分けるか?」

マリアは、強く頷いた。「わかっています。それは、王家の証と、**私と民との『絆』**です。私の声と姿は真似できても、その絆は真似できません」

 情報戦の舞台

マサトは、王宮のメインタワーに設置されている**王都全域への広報用の魔導具(一種の拡声器と映像装置)**を、一時的にジャックする計画を立てた。この魔導具は、王家の緊急事態にのみ使われるもので、その制御盤は王宮の最上階、偽のマリアがいるであろう場所の近くにあった。

「香坂さん。王宮のメイン魔導具の周波数を解析し、**『二重の偽情報』を流します。まず、偽のマリアが流している『マリア王女はテロリストに暗殺された』という情報を、『テロリストは捕獲された』**という情報に書き換え、軍隊の行動を一時停止させる。そして、その間に、本物のマリア様が、広場で国民の前に姿を現す」

「成功確率は?」香坂が尋ねた。

「85%だ。残りの15%は、リディアがその偽情報に気づき、すぐに新たな情報を流す可能性だ。俺たちの猶予は、**最大10分**しかない」

マサト、マリア、香坂は、地下を離れ、王宮の最上階を目指した。ラッセルとソフィアは、偽のマリアの指令によって王宮の広場に足止めされていたが、マサトは彼らを信じていた。彼らならば、必ず偽のマリアの言動に矛盾を見出し、行動を起こすはずだと。

 屋上での再会:知性の対決

マサトと香坂は、王宮の最上階の制御室にたどり着いた。そこには、案の定、**偽のマリア(リディア・ヴェルナー)**が、数名のISTOの警備隊員と共に待機していた。

「まさか、自ら上がってくるとはね、勇者マサト」

偽のマリア(リディア)は、冷笑した。「そして、サヤ。裏切り者。私のプロトコルから逃れられると思ったの?」

香坂は、感情を抑えて言った。「リディア。あなたのプロトコルは、愛と信頼という、最も重要なファクターを見落としている。だから、あなたは永遠に失敗する」

「愛?そんなものは、脳の化学反応だ、サヤ。私は、その脳の化学反応さえも再現しているわ」

リディアは、マサトを指差した。「マサト。お前は、この世界を救った英雄だ。だが、お前の知恵は、この脆い世界では危険すぎる。ISTOの支配下に入れば、お前は最高の環境で研究を続けられる。来い」

「断る」マサトは剣を構えた。「俺の知恵は、誰にも管理させない。そして、あなたが王都に流した**『偽りの情報』**は、もうすぐ覆される」

「偽の情報?私は真実を話しているわ。本物のマリアは、すでに地下で静かに眠っている。お前は、王女の死を隠蔽しようとするテロリストだ」リディアは、冷静に反論した。

 王都に響く真実

その時、マサトと香坂が仕掛けた情報が、王都全域の魔導具から流れ始めた。

「緊急指令解除!王女を誘拐したテロリストは、王宮地下で拘束されました!兵士は直ちに広場での待機を解き、通常の警備に戻りなさい!」

この「偽の緊急指令」が、王都の軍隊の動きを一瞬で停止させた。ラッセルやソフィアは、この不自然な指令に気づいたが、マサトの言葉を信じ、部隊を動かさないよう指示した。

「卑怯な手ね、サヤ!」リディアが香坂を睨んだ。「だが、すぐに次の指令を流す!お前たちの時間は終わりだ!」

リディアが制御盤に手を伸ばした瞬間、マサトは動いた。

「あなたの**『論理的な次の一手』**は、すでに解析済みだ!」

マサトは、リディアに肉薄し、剣で直接攻撃するのではなく、制御盤に繋がる光ファイバーケーブルを正確に断ち切った。

プツッ。

王都全域への通信が完全に途絶した。

「これで、あなたは、ただの**『偽物の王女』**だ」

 真実の王女の帰還

通信が途絶したことで、王都の広場に集まっていた兵士と国民は混乱に陥った。その時、マサトの計算通り、本物のマリア王女が、ラッセルとソフィアの助けを借りて、広場に姿を現した。

広場に集まった国民は、二人の「マリア王女」が同時に存在するという光景に、一時騒然となった。

しかし、本物のマリアは、王女としての権威を最大限に発揮し、声の限りに叫んだ。

「王都の民よ!私は、マリア・フリードリヒ・アウラである!目の前の私は、王家の紋章を汚す偽りの存在だ!」

偽のマリア(リディア)は、王女の権威を使い、マリアを指差した。「あちらこそ偽物だ!本物の私は、地下で暗殺されたはずだ!」

その時、マリアは、王家の伝統に則ったある行動に出た。

「私は、国民一人ひとりの心の声を聞く、真実の王女である!私が王位に就いた時、王都の貧困地区に住む**『孤児院の老女の名前』と、『その老女が私にくれた一輪の花の色』**を覚えている!」

これは、王家の人間しか知りえない、国民との個人的な交流の記憶だった。リディアは、王家の歴史や公的な記録は完璧に把握していたが、王女個人の感情的な記憶までは、再現できていなかった。

リディアは、その問いに答えられず、初めて顔に動揺の色を浮かべた。

「それは…王家の機密とは関係ない…!」

マリアは、勝利を確信し、続けて言った。

「私の命を救い、私をこの場に連れてきてくれたのは、かつて魔王を討伐した勇者マサトだ!彼こそが、真実の証人である!」

国民は、真実の王女の言葉を信じた。彼らにとって、マリア王女の「優しさ」と「信頼」こそが、何よりも確かな王家の証だったのだ。

 敗北と消滅

王都の広場の混乱が収束に向かう中、王宮の最上階では、リディアが敗北を悟り、最後の抵抗を試みた。

「マサト!お前は、ISTOの管理から逃れられない!この世界の全てを、我々が支配する!」

リディアは、自身の体に仕込まれていた自爆装置を起動させた。彼女は、マサトを道連れにし、彼の「知恵」を永遠に葬り去るつもりだった。

「香坂さん!リディアの体内のエネルギーを解析しろ!自爆装置の解除周波数を!」

香坂は、瞬時にリディアの体内の装置の周波数を解析した。

「0.8秒で起動する!周波数は…複雑すぎる!無理よ!」

マサトの次元知性は、その周波数が、彼が異世界で解析した**「自己消滅魔法」**と酷似していることを理解した。

(解除は不可能!しかし、転移は可能だ!)

マサトは、リディアの自爆の瞬間、彼女の身体を**「次元の扉」のエネルギーの奔流に流し込む**という、極めて危険な最適解を導き出した。

マサトは、残りのISTO隊員が投げた閃光弾の光を利用し、最後の力でリディアの体の一部に触れた。その瞬間、マサトは、リディアの自爆エネルギーを利用して、極小の次元の窓を開き、彼女の身体を**「虚無の次元の狭間」**へと押し込んだ。

ボフッ。

リディアの身体は、光となって消滅した。彼女の自爆は、王宮の最上階を破壊することなく、虚無の中に吸い込まれていった。

マサトは、その場に崩れ落ちた。彼の知性は、限界を超えていた。

王都の混乱は収束した。マサトは、**「知恵」と「信頼」**という、この世界の最も強い力を使って、ISTOの最初のクーデターを打ち破ったのだった。

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