友人 1
これは、ぱきペキ商店街に住んでいる、高校一年生、沙和里 太洋の他愛のない日常を、適当に書き留めたものである。
☆
ある朝、いつもの様にいつもの時刻、何時もの電車に乗るべく歩いていると、何時もの声がかかる。
「おっはよ!」
北斗野 賢志郎、スーパーパピプペポの経営者の息子である。彼とは高校に入り知り合いになった太洋。
「おはよー」
気の抜けた返事に、朝からめんどくさそうに言うなよな、と話すが、いつもの事なので気にしていない様子の賢志郎。駅までの道をしばらく歩いていると、レンガ調タイルを貼ったマンションから、出てくる高校生。
「よっ、オッハ!」
二人に混じる彼は『赤井 彗星』彼とも高校生になってからの知り合い。数学のプリント見せてくんない?と彼は二人に話している。
「別にいいけど……、賢志郎に教えて貰ったら?テストに出るってたし、やっといたほうが後で追試とか、めんどくさくないと思う」
「たいよー、お前はめんどくさいか、そうでないか、どっちかなんだな……教えて……うーん、教えて貰って覚えてるかな……」
「公式覚えたらいいだけだろ?簡単じゃん」
賢志郎がこともなげに彗星に話す。
「かんたん?ムリ!」
朝の空気の中、他愛のない話をしながら、最寄り駅に向かう三人。
☆☆
「そういやさ……前から聞きたかったんだけど」
ホームで待っている間に、賢志郎が太洋に聞いてきた、何を?と聞き返す。
「俺のクラスでも話になってるんだけど、お前はどっちかいいの?」
「どっち?何が?」
「桃香ちゃんか、茉莉ちゃんどっちなのかなぁって」
「あー!俺も知りたいたい!たいよー教えろよ」
二人の会話に彗星が入ってきた。
「?何を知りたいの?」
興味津々な二人の顔を見ながら、ワケがわからない太洋。二人はあれこれと話し始めた。
☆☆☆
「俺はさぁ、桃香ちゃんなんだよな、かわいいじゃん」
桃香推しの北斗野 賢志郎。
「俺は!断然!茉莉ちゃん派」
茉莉推しの赤井 彗星。
黙って聞いている太洋、二人は盛り上がる。
「あの!夢と希望が溢れてるブレザーぱっつん!」
「ジャージを着たらカッコイイ茉莉ちゃん最高!」
「は?ジャージ?桃香ちゃんのが似合ってるし!」
「何言ってんだよ、スラリとしたスレンダーライン!凛々しい茉莉ちゃんのが似合ってる!」
「そうかぁ?出るとこ出たほうが良くね?」
「おとー!エロ発言!出るとこってどこですかー、けんしろう君」
二人はじゃれ合う様に言葉を重ねていく。
☆☆☆☆
……、ピロロンロンロン〜ピロロロロ〜ピロピロピロン。電車が到着します。白線の内側間でお待ちください……
朝から何を話しているんだ?コイツラは……、と頭が痛くなる太洋。もしかして友達選ぶのを間違ったのか?と思いつつ、ザワザワといつもの様に車両に乗り込む。
「そいや……何で一緒に登校しないの?」
つり革にぶら下がりながら賢志郎が聞いてくる。
「あー、桃香は朝は車、茉莉はもう一本後か?わからん」
「そっかー、桃香ちゃん、やっぱ痴漢とか心配だもんなぁ、茉莉ちゃんはその点心配無いよな」
その答えに彗星が反論をする。
「はい?聞き捨てならねえな、世の中にはチッパイ教徒も大勢いるんだぞ!」
その答えに賢志郎が応戦をする。
「イヤ!断然オップァイ教徒のが多い!」
「チッパイは天使だ!」
「オッキイのは神だ!」
はぁあ、何を朝から、公共交通機関で盛り上がってんだよ、とつり革にぶら下がり二人の会話に素知らぬ顔をしていると……、
「おい!お前はどっちだ!」
二人が声を揃えて聞いてきた。太洋は答える。
「普通がいい」
ちゃんちゃん。