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死なずの魔物使い~失業したからテイムしよ~  作者: 桐谷瑞浪
第一章 魔物使いと幼女神
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#02 テイマー幼女は女神らしい

ホッカイロという町があるから謝罪案件とかかな。ハラハラする!っていうキャラだ。

「はうあー。迷っちゃったですチ~」


 ミュス・カパキは道に迷っていた。


 俺がそんなミュス、――もといマスターに出会ったのは、そんなある日の昼下がりだ。


 ▽


 雨無垢の森。

 そこはパープの町から西に三キロほどの地にある森だ。


 晴れてさえいれば、なんて事のない初心者ご用達の狩りスポット。


 だがそんな事など知らない俺、パーティー追放からわずか二日後にて雨無垢の森の真髄を見るの巻だ。


 そう、その日は雨が降っていた。


 雨なんて、と思うだろう?

 まあ、確かにDランク冒険者であれ雨ごときに屈していてはツケどころか本格的な負債という修羅場を見る羽目になる。


 普通なら、な。


 ▽


「雨……か」


 俺がやけくそで適当に受けた依頼。


 それは〈雨無垢の森にいるポイズン・トード、つまり毒持ちカエルの胃袋をゲットする〉というモノだ。


「ま、一人でも余裕っしょ」


 気軽な気持ちで俺は、森に分け入った。


 冒険者くらいしか立ち入らない、ひと気が少ない場所。


 そのためゴブリンがあちこちで「グル~」と呻いているのと鳥や虫の鳴き声を除けば、なんとも静かなものだ。


 しかしそんな事を気にしている場合ではない。


「ポイズン・トードか。はあ、せめてツシュルがいれば楽勝なんだがな」


 俺はそう言い、いつもの癖で周りに目をやる。


「……そう、だった」


 もう、俺には頼れる仲間はいない。

 話しかけても全ては独り言に還元されていく。


 ▽


 そりゃグリーン・ロックで仲間を募る手もある。

 ――システムとしてはな。


 だが忘れちゃいけない。俺は底辺Dランク。

 成績最下位の底辺社員と積極的に友だちになりたい社会人なんているか?


 つまりは、そういうわけさ。


 ランクの仕組みは単純だ。

 俺たちと同じくAからDにランク分けされている魔物を倒して、その証となる魔物の核、――いわゆる魔核をギルドに持ち込めば良い。


 ただしそれだけだと、魔核を盗まれたら盗賊すらAランクになれちまうから工夫がある。


 いわゆる、更新制度だ。


 一定の期間内に魔核の納品がなければ、その冒険者はランク落ちする。


 ▽


「お。ポイズン・トードっぽいな、アイツ」


 ゴブリンやスライムといったザコ魔物と比べると見つけにくかったが、森に入って十五分ほどでターゲット発見だ。


「げこ、げここ!」


 出会って早々、黒カエルは何か緑っぽい液体を吐きかけてきやがった。


 ちなみに黒カエルとは、ポイズン・トードは長いので俺が名付けた【見た目のまんまネーム】である。


「っしゃあ、って。なんか気分わる……っぷ」


 緑液体はどうやら、毒だ。


 ポイズンと聞いて「確か毒だよな?」とは思っていたが、まさか液体に含めてくるとは出来る魔物だ。


 ▽


 雨が激しくなってきた。


 するとその直後、衝撃の事態が起きた。


「げご、げっここ!」


 黒カエルは一瞬で何かに貫かれ、瀕死になっていたのだ。


「げっ、胃袋ゲットならずか?」


 不死の特性により、かろうじて時間経過で解毒を完了した俺。

 心配したのは、起きた事より失った物なのだ。


 そして、周囲がにわかにザワザワしたのに気付いた頃には後の祭りである。


「コイツら、もしかして……トレント!」


 トレント。

 ネット小説をかじっていた俺には、その存在に見覚えがあった。

 ひと言でいうなら木の魔物。

 そして更に言うなら、――。


「やっぱり、動くのかよ」


 木々に生えた枝が次々にぐんと伸び、そのほとんど全てが俺を貫通した。


「ぐげっ」


 確かに俺は不死だ。

 だが痛覚無効なんて所持してねえんだからな、と言ってやりたいほどの激痛が全身を駆け巡った。


 ▽


 どうやら、黒カエルを突き刺したのもコイツらの仕業のようだ。


 痛みに耐えて黒カエルを見ると、先ほど枝が刺さるのは見逃したが、もっと強烈な光景が飛び込んできた。


(食ってやがる……!?)


 トレントは、大口を開けて黒カエルを丸飲みにしてしまったのだ。


 明らかに植物なのに動物性タンパクの摂りすぎな感は否めない。

 しかし俺は「食虫植物を考えれば、あり得なくはないかな」なんて不思議と納得した。


「つまり、……げふぉ! ……次の狙いはおそらく」


 枝が刺さり過ぎて普通に吐血しながらも俺は思考を働かせた。


 周りは阿鼻叫喚だ。

 先ほどまでは森の番人だったスライムもゴブリンも、今やトレントの餌食だ。


 そしてそこから更なる衝撃の光景が。


 ▽●○●○


「よ、幼女……だと!?」


 なぜか年端もいかない幼女が、食べてくださいと言わんばかりにがっつり気絶していた。


 いや、そこの読者くん。食べるって性的なそれじゃないから!


「助けるべき、だよな」


 たとえ追放されても、Dランク冒険者でも俺は元・勇者パーティー。

 困った人を見捨てては男がすたる。


「うおがあああ」


 気合いで俺は歩いた。

 クッソ痛いが、不死だからか覚悟さえ決めれば大腸を引きずりながらでも歩けるもんだ。


 なぜ、そこまでするかって?

 だって反射的に俺はそうしてしまうんだ。


 七メートルほど歩き、幼女の近くまで俺は申し訳ないと思いながらも彼女を軽く蹴った。


「うびょ~!?」


 幼女はそう叫びながら意外と即座に起きた。

 もしかして、――昼寝でもしてたか?


 ▽


「ななな、なんですチ。兄たまは何者ですチの?」


 癖の強い口調で俺は幼女に素性を聞かれた。

 こんな枝刺さりまくりのお兄さんに素性を聞けるなんて、大した性格だ。


 女神と同じような金髪。

 ただし髪型はボブとでも言うべき仄かな、おかっぱ風味。

 そして、桃色のドレスの前にエプロンが下がっている。


 そう。彼女こそがミュス・カパキ。

 これから俺のマスターになる天才幼女なのだ。


「トレントたちが元気満々チ。こ、これは雨のせいですチね」

「雨? 雨は確かにどしゃ降りだが……」


 俺には雨とトレントの関連性は見えない。

 いや、うっすらとは感じ取っているが、まさかなが強い。


「たっぷりの雨があれば十秒とかからず動き出す。トレントの生涯は雨天限定の超短期型なのですチな」


 ▽


 詳しい。なんだこの幼女は。

 俺はシンプルにそんな印象を持った。


「な、なあ。そんなに物知りなら、この魔物たちをどうにか出来ないかい?」

「むむ。百歳の新米女神とはいえ、アタチャにタメ口なんて失礼な男ですのチ」


 女神、だって。

 俺は思わず、ゲボボと喀血笑いしてしまった。


「何がおかし……ハッ。なるほどチ、力が封印されたこの姿では……」


 自称女神の幼女はブツブツ呟いていたが、やがて何かしら呪文を唱え出した。


「天地の御霊よ。今こそ我が祈りに応え、えっと、……あれ、記憶まで退行したようだチ」


 露骨に幼女は慌て出した。


「げぼっ……お嬢さん。とりあえず逃げたいから、簡単な魔法を頼む」


 俺が喀血懇願すると、幼女はふと我に返った。


「それもそうっチ。よ~し、出てきてチ。ベビドラ!」


 ▽


「ぎゃるる~」


 ポン、というコミカルな破裂音と共に、手の平サイズの竜が空中に現れた。


 幼女の手には、頭に羽根があしらわれた杖がある。

 そして明らかにベビドラと呼ばれた竜は、そこから出てきたように俺には見えた。


「自己紹介が遅れたチね。アタチャはミュス。そして、この子がベビドラなのチ」

「お、俺は昆布……じゃない、レイジだ」


 なぜかこのタイミングでの自己紹介が終わるや否や、ベビドラはその体躯に似合わないほどの爆炎を吐き出した。


「ぎゃっぎゃおるー!」


 威勢の良い鳴き声だが、豪雨は無情にも炎を鎮めていく。


「ぎゃ?」

「ベビドラ。爪でなんとかするんチ!」


 言われたアホ竜――それがベビドラの【見たまんまネーム】にこの時、決定した――は、爪で俺の周りにある枝を次々に折っていった。


 逃げられればなんでも良い。

 俺のその発想は俺を貫くトレントの枝をひとまず切り、本当にとりあえず逃げるという結末に落ち着いたのだ。


 ▽●○●○


 そしてやがて、俺はテイマーとしての才能をマスターに見いだされていく。


 これはそんな俺が、不死のチートと天才テイマー幼女に恵まれながら、俺を追放した勇者ジルとその仲間たちを超える物語。


 そしてAランクしか知られてない冒険者ランクの限界突破、Sランクを目指す伝説なのだ。

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