表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死なずの魔物使い~失業したからテイムしよ~  作者: 桐谷瑞浪
第一章 魔物使いと幼女神
10/42

#10 試練の予感

クール・アズ・アイス。

 ゴブぞうのレベルが二桁台になった辺りから、冒険が始まってきたなって気分が高まってきた。


 ただな。

 魔物には、それ自体にランクがあるって話を前にしたよな?


 つまり、ゴブぞうがどんなに強くなっても、ゴブリンって実はランクDの魔物。

 鍛えに鍛えてようやくランクCの魔物に勝てるかどうかなんだ。


「も、もしかしてレイジさん。知らなかったのですか?」


 ん?

 ああ。俺は今ちょうどルルエナさんから、その事実、厳しい現実を知らされたばかりなのさ。


「でも、テイマー職ならそれがセオリーって気がしますし。少しずつ強くなっていければ良いと思ってますから!」


 我ながら自信が付いてきて、頼もしい返事が出来るようになってきた。

 底辺メンタルからナイス・ガイ。まさにそんな具合に、精神が成長したかも。


 ま、強いて言うなら、ステータスには精神なんてパラメータはないのが難点だな。


 ▽


「あっ、それとレイジさんにお知らせがあります」


 ルルエナさんが、とんでもなく愉しそうだ。


 なんだろう、もしかして俺が実は好きで、ルルエナさんがプレゼントという神展開だろうか。


 だとしたら俺は、俺は……。


「じゃーん、Cランク魔物のリストを作ってあげましたよ」


 お、おお。

 予想とは、かけ離れた展開だがこれはこれで神。


「あ、ありがとう……ございます」


 いやあ、なんか照れるなあ。

 ていうか、ルルエナさん俺が好き説はあるんじゃないか?


 だって、リストを作ってくれるなんて好きとイコールだろ。多分。


 ▽


 まあ、だが仮にルルエナさんの気持ちが俺にあるとしたって、俺の現状はDランク冒険者。


 甘めに見てもCランクであろうルルエナさんの思いを受け止めるには、俺も最低でCランクになっておかないと。


 ……って、やっぱりそういう意味か!


 つまり「早く私に釣り合う男になってね、愛してる」という意味だ。

 なるほど、なるほど。


 じゃあ、愛のためにオーク・ロード狩りに行くぜ。


「マスター、何をぼうっとしてるのですか。Cランクに上がるための狩りに出発しますよ」

「なんなのチ。急にやる気を出すなんて、気持ち悪い弟子チね」


 ふっ。マスターはまだ新米女神。

 愛を知らないとは、女神とは言え哀れだな。


 ちなみに、なんでオーク・ロードかってCランク魔物だからだぞ。


 微妙にまだ説明しきってなかったが、Cランクに上がるにはCランク魔物の魔核が必要なんだ。


 要は、上がりたいランクの魔物の魔核。

 それがランクアップには必須ってことさ。


 ▽●○●○


「よし、着きましたね」


 斧豚の町。

 この間、ゴブぞうが特訓した町だな。


 で、この中にオーク・ロードがいる。


 ただ、このエリアには珍しいCランク魔物だからか、実質的には斧豚の町のボスである。


「ふむ。レイジよ、地下に向かうチ」

「ぎゃるる~」


 マスターがとっくにベビドラを召喚していたので、俺も慌ててゴブぞうを召喚した。


「ゴブブゴイブエ」


 なんか心なしか「ウナギ食いてえ」に聞こえる。戦力だから声を大にしては言えないけど、ぶっちゃけキメえ。


 まあ、とにかく俺たちは地下に向かうことにしたんだ。

 オーク・ロードは斧豚の町の地下ボスが狩りやすい。そんなルルエナさん情報のおかげさ。


 ▽


 そういえば、ゴブぞうをなんで斧豚の町まで出さなかったのか、気になるかもな。


 それはな、消耗をケチったのだ。


 斧豚の町は、歩いてだとパープから二時間ほどと遠いために魔物にも盗賊にも襲われやすい。


 でもな、俺は金欠なんだ。


 だからなんだと思うかもしれないが、ゴブぞうを回復するためのスゴい回復薬とか、ヘビや毒グモからの毒を中和するための毒消しなんていちいち買ってられない。


 な、意外とまともな理由だろ?


 まあカスっぽい理由なのは、これから俺が冒険者ランクを上げて地道に稼いでいけば、少しずつ改善していくだろう。


 カスっぽいだけで、戦いをサポートしてやれるようになりたい気持ちはホンモノなんだからな。


「うおらあああ」


 俺はマスターを両手で抱きかかえながら、あらゆる攻撃の盾になりつつ走るというカオスな戦法でいつもフィールドを乗り切る。


 だってベビドラって、意外とどのスキルもMP使いがちなんだ。


 ▽●○●○


 斧豚の町の地下に来た。


「くっせえし」


 くっせえ。

 そう、地下に入って第一の印象は、その壮絶な悪臭だ。


「ふむ。慣れれば大丈夫チ」


 マスター、慣れません。


「くっ、ま、まあオーク・ロードをサクッと倒してしまえば、……!」


 俺は絶句した。


 オーク・ロード。俺が思ってたよりずっとデカい。

 おかしい、ゴーレムよりよっぽどデカいぞ。


「ま、マスター。コイツ、Cランク魔物ですよね。デカ過ぎませんか?」

「知らんチ。それより気付かれたチよ」


 ゴーレムはせいぜい二メートルだったが、オーク・ロードは五メートルくらいある。


 普通のオークや、魔法を使う亜種であるオーク・メイジは二メートルもないくらいだから、倍以上の身長差だ。


 ▽


「ブギウゥガビャヤヤヤ」


 鳴き声もどこかアンデッド感あふれてるし。


「行けるか、ゴブぞう」

「〈ウナギ食えるなら行ける〉」

「食えねえけど行け!」

「〈けっ〉」


 作戦は【パワーこん棒】でMP切れたら充電。つまりいつものパターンだ。


 ゴブぞうも把握しているようで、言われずとも二回重ねがけした【パワー・チャージ】状態でオーク・ロードが着ている鎧を壊しにかかった。


 そうなんだよな。流石に相手の背が高くて、顔を狙えるほどジャンプ出来るはずもないゴブぞうでは地道に装備破壊していくしかない。


「〈ウナギウナギウナギウナギ〉」


 怨嗟がえげつねえな、ゴブぞうよ。


 ▽


 しかも、えげつねえ怨嗟の割に、やっぱり鎧だから固いみたい。


「〈うう。ウナギ……〉」


 やべえ。もう俺いじめっ子じゃん、これ。


「うーん、魔力が育たないからMPももうカラっぽいしな。これは困ったぞ」


 仮にここから一度、退却して育成をやり直したとしても【パワー・チャージ】次第だ。


 知力依存なら、いつかはオーク・ロードを倒せるだけの攻撃力になるだろうけどな。


「はあ、なんだかテイマーは頭を使う職業だな」


 これが、いわゆる脳ミソ筋肉の戦士系なら思考停止で稼ぎしての無限ループなのに。


「〈ごめんな、ご主人様〉」


 謝りながら、ゴブぞうは【書】に帰った。

 うわあ、俺のアホ。


 ゴブぞうがいる前で言ってはならない言葉が分からないなんて。

 俺はとても反省した。


 ▽●○●○


「はあ、マスター。これからどうします?」


 オーク・ロードは動きが鈍い。

 だから地下から出るのは難なく可能だ。


 しかも、出入口は狭くてヤツは俺たちを追えないらしい。


「ふむ。レイジよ、ゴブぞうには、実はまだ隠された戦い方があるんチ」

「えっ、マジすか?」


 ポクティさんと言いマスターと言い、どんだけでもゴブリンに詳しいのな。


「だが、そのためにはな、とんでもない試練を乗り越え、ゴブリン装備を手に入れねばならないチよ」

「ご、ゴブリン装備ですって?」


 なんだか専用装備って強そうな感じあるよね。

 これは期待して良さそうじゃないか?


 ▽


 ゴブリン装備。

 それを手に入れるには、初心者の洞くつを下りた先にある〈初心者の試練〉を乗り越えないとならないらしい。


「またあの場所ですか。正直、飽きてきましたけど」

「まあ、そう言うなチ。ゴブリン装備のあるなしでは、これから先の戦いが変わるはずチ。それとも……私が信じられませんか?」


 うん?

 心なしか、マスターが幼女でなく一瞬だけ女神に見えたような。


「と、とんでもないです。俺がマスターを信じない時なんて、ほぼありません」


 ほぼ、とか言ってしまったが、マスターはにこりと微笑んだ。

 もう元通りの幼女にしか見えなかったけど、俺、頑張っていつか女神に戻ったマスターと冒険したくなってきた。


 そのために、ゴブリン装備を絶対に手に入れてみせる!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ