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死なずの魔物使い~失業したからテイムしよ~  作者: 桐谷瑞浪
第一章 魔物使いと幼女神
9/42

#09 ゴブぞう猛特訓

エスカルゴみたいなカタツムリはエスカルゴかもね!

「〈ウナギ食いてえ〉」


 ゴブぞうには本当に返す言葉がない。

 金欠だった事を俺はすっかり忘れていたのだ。


「ご、ごめんよゴブぞう。まとまったカネが入ったら絶対にウナギ食わせてやるから」

「そ、そうだチ。ゴブぞうは立派に戦ったんだから、絶対にウナギは食べれるんチ」


 ゴーレムを倒した日の夜。

 俺たちはこんな感じで、グリーン・ロックにてゴブぞうに謝り倒した。


 すると、またしてもジルに会ってしまったんだ。

 しかも、今日はラパーナも一緒だ。


「やあ、レイジくん。魔物使い、だっけ。中々オリジナリティのあるテイマーの言い方だね」


 うおー、ジル。いよいよもって俺を相当に嫌いだったんだな。

 今のではっきりしてしまったぞ。


「悪いな、今はそれどころじゃない。大切な仲間と話をしているから」


 くー、どうだジル!

 ぐうの音も出ない俺からのメッセージは染みただろう?


 ▽


「ジル様。もうレイじいは私たちのパーティーではありません。時間と労力の無駄はやめましょう?」


 うん、待って?

 レイジでなくレイじいと聞こえたんだけど。俺がパーティーにいた間とアクセントが変わってるんだけど。


「ふっ、ラパーナ。何を言ってるんだ。仮にも追放したのはボクの勝手な判断じゃないか!」

「じ、ジル様……」


 でも、あれれ。なんだ、ジルって俺が思ってたより反省してるみたいだ。

 はあ、俺って本当ダメだな。


 やっぱりジルはAランク冒険者にして自他共に認める勇者。

 俺を追放したのにもきっと深いワケが……。


「すまない、ラパーナ。ボクだって追放しなければならない仲間を迎えたのをとても後悔している」

「じ、ジル様……!」


 なるほど。ならば前言撤回だ。


 ▽


 その後、なんか内輪で盛り上がるだけ盛り上がってジルはどっか行った。


 もうね、鼻ほじりたくなるくらい中身のない薄っぺら~な会話って、本当うんざりするなって学んだね。


 だって俺、鼻ほじってたし。


「〈ウナギ食いたいワルツ〉」


 ゴブぞうはゴブぞうで、ワルツ踊ってたし。


「まだまだチ。まあ魔物にしては三拍子まではかなりのものチよ」

「〈ウナギ食いてえからな。当然だ〉」


 わけわからん。


「レイジさん。なんだか最近、愉しそうですね?」

「ルルエナさん」


 気付けば、やたら近くにルルエナさんのにっこり顔があった。

 ルルエナさんの癖だ。


 そう、別に俺を好きとかではなく、しかしやっぱりその癖によって数々の男性を誘惑してしまっている魔性のスマイルなのだ。


 ▽


「そうだ、ルルエナさん。今度、俺たちのパーティーに入って冒険しませんか?」


 俺はルルエナさんの笑顔にやられた訳ではないが、ダメ元でルルエナさんを仲間に誘ってみた。


 仲間はやっぱり、多いに越した事はない。


 それにテイマーが二人って編成は癖が強く、出来れば違う職業も迎え入れたいというのが事情としてあるのだ。


「ふふ」


 ルルエナさんは笑っただけ。

 うーん、要するにダメって事だよな?


 魔性スマイルで磨かれた人間関係で得た、相手を不快にさせない断り方。


 言ってみればそんな感じなんだろう。


「えっと、じゃあ俺たちのパーティーに入ってくれそうな冒険者、知りませんか?」

「……ふふ」


 やっぱりこれもダメみたいだ。

 そう。まだまだ俺はDランク冒険者。


 流石にCランクはないと、最低限の戦力すら紹介してもらえない。


 つまり、いわばDランクはアマチュア。

 DとCの壁はとんでもなく厚いのだ。


 ▽●○●○


 そして今、俺は斧豚の町に来ていた。


 町と言っても、パープやタムソンみたいに人が暮らしてるわけではない。


 オークという、おもに斧を持ったブタ人の魔物が住み着いている廃墟の町。

 人はいつしかそこを斧豚の町と呼ぶようになったのだ。


「おっ、いるいる」

「どのオーク種も相当にキレてるチ」


 まあ、オークの町なんて呼ぶと人がいると勘違いするだろうからな。

 きっとそんな理由で、そう呼ばれるんだろう。


「ブヒイィ」

「ンブッンブガ八ンッ」


 鳴き声もブタそのもの。

 でもな、オークってなかなか強い魔物なんだ。


 レベルで言ったら15から18くらいかな。

 だからゴブぞうからしたら、ちょうど良い訓練相手ってわけさ。


「よっしゃ。行けるかゴブぞう」

「〈ウナギ食いてえ〉」


 お前、絶対ウナギ食いたいしか言わないマンかよ~。


 ▽


「ンゴッンゴゲ」


 すんげえリアル感あふれて吹き出しそうになるオークの鳴き声。

 ツボらないように俺、必死だ。


「ゴブぞう。【パワーこん棒】で尽きたら即充電な」

「グル!」


 俺が何て言ったか、よく分からないだろう。

 ふふふ。それもそのはず。


 スライムやゴブリン相手なら知力Dだから普通に指示出せばなんとかなるけど、オークあたりからはヒトの言葉に理解力が出てくる。


 指示ですらある程度は業界用語みたいにギュッとしていかないと厳しくなってくるんだ。


「〈ゴブぞうウナギ食いてえアタック!〉」

「〈変な名前の技なのに痛いブヒイィ〉」

「ふむ。レイジもようやくスキルの組み合わせが分かってきたチな」


 ちなみに【パワーこん棒】はお察しの通り、【パワー・チャージ】して【こん棒アタック】だ。


 そして充電とは【書】に戻り、おもにMPを回復する事だ。

 ま、オーク相手だからHPも回復させなきゃだけど、そこは臨機応変だ。


 ▽


 ゴブぞうはオークより格下だけど【パワー・チャージ】がチートじみた強さを誇るためにどんどんレベルが上がっていく。


 だって、二回重ねがけしたらゴーレム倒せたんだぜ?

 その時点でゴブリンの可能性には、俺は気付いてたよ。


 戦略シミュレーションでもたまにあるんだよな。

 序盤の捨てキャラみたいな弱小キャラが、頑張って鍛えたら超・使えるってパターン。


「ゴブぞう。そろそろ休憩しようか?」

「〈ウナギ休憩じゃないなら、オラ、休みはいらねえ〉」

「お前、根性がすげえな!」


 こりゃ、スライムも育てるのが楽しみになってきた。


 さて、そういえばゴブぞうの強さはどんなモンかな?


「【ステータス】」


 ≧

 名前 ゴブぞう

 種族 ゴブリン レベル16

 技能 こん棒アタック、キック、パワー・チャージ

 腕力 C 体力 B

 知力 C 魔力 D

 ≧


 ▽


 おお。

 分かりづらさが前面に出がちなステータス画面だけど、それだけにランクが伸びた時の嬉しさは、ひとしおだ。


 腕力が伸びないようだが、【パワー・チャージ】の効果が知力に依存するならカバー出来そうだ。

 そこは正直、今後の戦い次第。


 だが体力が伸びたのは大きい。

 チビな見た目に反して、持久戦という選択肢が出てくるわけだからな。


「ゴブぞう、成長したなあ!」

「〈ウナギ食いてえ〉」


 不思議と、ステータスを見た後は同じセリフでも違って聞こえるものだ。

 なんていうか、俺も頑張ってウナギ食わせてやろうって、より強く思える。


「ふむ。動きに進歩はないが、打たれ強くなったチねえ」

「はは、マスターにも分かりますか!」


 ステータスが見れないマスターも、ゴブぞうの成長ぶりは実感していたようだ。


 ▽


 いいぜ。

 師匠と共有する、弟分の成長シーン。


 徐々にテイマーとして、魔物使いとしての俺も成長してる気がする。


「ついでだから、オークも封印して昼休憩にするチよ」

「了解です!」


 ゴブぞうって、そう考えたら封印向きだ。

 通常攻撃は確実に腕力依存。だから、少しずつ敵のHPを削るのに向いている。


 腕力が育たないメリットなんて、あるんだな。


「〈ウナギ食いてえ〉」

「ブヒョー」


 オークをサクッと三匹ゲットした俺は、『三匹のこぶた』って童話を思い出した。


(昆布太郎だった俺、なんだか昔のことみたいだ)


 別に今が充実してるからいいけど、なんとなく俺はむなしい気分も味わったような気がした。

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