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味を味わう物語  作者: 暴走紅茶


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先輩の警鐘

 ゆっこと豊部駅に行ってから早数日。僕の携帯には久しぶりに二つ上の先輩、大森おおもり すばるさんから連絡が来た。昴さんは僕が入部した頃の会長で、本当にお世話になった先輩である。あの頃は毎晩のように飲んだくれていた先輩も、立派に社会人2年目、そこそこ責任のある仕事を任されるようになってきたらしいが、あの頃の昴さんが居なくなっていくようで、一抹の寂しさがあったりする。

 昴さんは、今晩ちょっと話しておきたいことがあるから電話するというものだった。何だろう? 学祭の日程とかかな? それだともう結構遅いよな。

 夜になり、昴さんから着信があった。

『お、久しぶり。元気してたか?』

『まあ、ぼちぼちですね。昴さん、学祭来てくれるんですか?』

『あ~。行けたら行く』

『それ、来ないやつじゃないですか』

『いや、良い意味でだよ?』

『楽しみにしてますね』

『期待しないで待ってな』

『どっちなんすか』

『ははは』

『で、何か要件とかありました?』

『あ、ああ。そうだった、ダカちゃんに聞いたんだけど』

 まさか? あの人もう喋っちゃったのか。人を散々連れ回しといて……

 昴さんが言うには、昨日ダカさんから連絡があり、詳しくは聞いてないけど、またサークルが恋愛でごたついているという事、どうもその中心には僕が居ることを聞いたようだ。

 それで電話か。

 昴さんがサークル内恋愛を心配しない訳がない。彼は、あの代『空白の世代』という現在部員が0人の代、僕の一つ上の代。その代が空白と呼ばれてしまう原因を見た人であり、彼自身は自分が会長の時にその事件があったせいで、その事件は自分のせいもあると思い込んでいる節がある。

 きっとダカさんに言われて何かしらの危機感を覚えたのだろう。それで、連絡を取ってきたという訳か。

『それで、要件は何ですか?』

『別に大仰な事を言いたいわけじゃ無いんだけどね。ちょっと気をつけてほしくて連絡をしたというか』

『はあ』

『コジローは空白の世代が何で空白になったか知ってる?』

『一応は。確か、痴情のもつれですよね』

『まあ、そんな所なんだけど。折角だから警鐘もかねて、少し話しておくね。

 あの代は五人居ただろ? その内三人、ここでは彼らを尊重してA・B・Cとしようか。AとBはCが好きだった。それで、Bは、みんなにCが好きなことを公表してたからいいもの、Aは何食わぬ顔でずっとその事を隠してて、あまつさえBの恋路を応援すらしていた。実際は水面下で過度なストレスを抱えていたみたいだけどね。でも、Bも奥手でなかなかCに対してアクションを起こさなかったんだ。だからAも安心してBを応援する振りができたし、Cも気づかないふりをして同期として仲良くしていた。

 それでも、あるとき、Bがアクションを起こすらしいという話が伝播した。Aは焦ったし、Cは困った。CはもともとBと付き合う気は無かったからね。それでも同期仲やサークル仲を気にすると、Bをそんな無下にするわけにもいかない。それでCはAに頼った。CはAの好意に気がついて居なかったからね。だから仲の良いAを相談相手にした。相談相手に出来た。

 Aは戸惑ったが、これはチャンスじゃないかと思った。そして、AとCは相談会を開く度に親密になり、結局くっついた。そしたら、分かると思うが、Bは激怒したんだ。

 そりゃそうだよね。みんなBがCを好きな事は周知の事実だった訳だし、知ってて、応援してくれてたのに、Aは裏切った。BはあからさまにAをハブりだした』

 その辺は覚えている。確か、入部して二ヶ月くらい経った時にそんな雰囲気があった気がする。

『あの代は何というか、陰湿なやつが多いというか、会話が苦手なやつが多いと言うか、みんなAを悪者にした。Aは居づらくなって、部を去ろうとした。CもAが辞めるなら一緒に辞めるという。ABC以外の二人はCのバンドメンバーだった事もあり、Cがサークルを辞めるなら、一緒に辞めて外でバンド活動をすると言った。勿論僕は止めたけどね。力及ばず四人はサークルを去った。Bも気まずくなったのか、直に辞めてしまったよ』

 僕は1年生だったから、詳しくは知らなかったけど。

『そんな事が……』

 それに、今の話、Aが僕、Bを雅也、Cをゆっこに置き換えられる。昴さんは僕に、僕たちにあの代と同じ蹈鞴を踏ませない為、こんな警鐘を。

『うん。俺ももっとちゃんと止められたら良かったんだろうけどね。それか、もっと早くにその状況を知って居られたら……』

『昴さんは悪くないですよ』

『みんなそう言うけどさ』

『だって、辞めて救われるなら、それは彼らにとって十全だったと言えるんじゃないですかね』

『コジロー……。なんか悪いね、俺が慰められちゃってら』

『はは。でも、ありがとうございます。僕、まず何をしなくちゃいけないか分かりました』

『それなら良かった。頑張ってねとしか言えないけど』

『はい。ありがとうございます』

 僕がゆっこに思いを伝える前にしなくちゃいけない事。

 僕は雅也に、もう君を応援できないと言わなくちゃいけない。

 でも、いつどうやって言えば良いんだろうか。

 学祭が終わるまでにそんなタイミング、あるのだろうか。

 僕の心にまた一つ不安が増えたまま、学祭までのカウントダウンは、刻一刻と進んでいくのだった。

最近暖かいのか寒いのかよく分かりませんね。

これじゃあ、体調を崩してしまいかねません。

みなさまお体にはお気をつけて。

それでは、また来週。

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