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親友の声

瑞希からのメッセージには、〈話したいことがある。暇なときにでも電話してきて〉とあった。丁度今晩暇だし、電話してやろうかな。


 夜。何気なく瑞希に電話をかける。

『もしもし』

『おお、浩司朗。やっと掛けてきたのか』

『ごめん。昼は学校だったからさ』

 瑞希は今フリーターをやっている。なんでも、お金を貯めて世界を旅したいらしい。前に就職しないのかと聞いたら、そんな社会に縛られて生きるなんてごめんだと言われてしまった。

『突然だけど、今年の学祭行くから。詳しい事教えて』

『は? 本当に突然だな』

『良いじゃん良いじゃん。んで、何処に行けばお前のライブ、見れるんだ?』

『あー……。本当に来るのか?』

 ちょっと照れくさい

『何だよ。照れてんのか? もう何年バンドやってるんだ』

『いや、3年目だけど、身内らしい身内になんて見せたことなかったからな』

『じゃあ、丁度良い機会だ。ちゃんと見てやるよ。それに、あの、お前がお熱の娘も気になるし』

『その話はヤメロ』

 自分でも驚くくらいドスの効いた声が出る。

『なんかあったのか?』

 瑞希の声も何だかさっきよりも神妙になっている。

『何が、か。とりあえず一月以上手料理を振る舞ってもらってない』

『詳しく話せよ』

 ……瑞希なら話しても大丈夫かな。まあ、サークルの連中に話すよりかはマシかもな。

『一回しか話さないからな』

『おう』


 事のあらましを話した。件の日以降の、合宿やその他諸々。今僕が立ち向かっている事。どうしようもないように思えて、どうにも出来ない事を。


『な~んだ、そんなことか。心配して損した気分』

『そんな風に言うなよ』

『だって、別に孕ませちゃったとか、一生残る怪我をさせちゃったとかじゃなく、ただ、お前の思い込みで突っ走った結果、現状に至るんだろ? 相手の気持ちも何も考えず、ただいい人ぶって、後輩すら別に望んでもいないのに、後輩を立てようとして』

 言い返せない。

『それに、相手の子も、お前にわざわざ敵さんの情報をくれたって事は、「私を攫いに来い」って言われているようなもんじゃん。攫いに行こうぜ。もう、後輩に気を遣うな。お前がお前のしたいようにしろよ』

『そんなの急に言われて出来るわけないじゃないか。僕はこれまでの人生、自分をなるべく押し殺して生きてきたんだ。瑞希、お前ならよく知っているだろ』

 涙腺に水が溜まり始める。

『だからこそじゃん。俺は昔のお前を知ってる上で言ってるんだ。今、殻を破れよ。もうお前は自由なんだろ? 誰に気を遣うこと無く、毎日味気ないカロリー補充食品だけ食べてて良い生活してるんだろ? あ、お前は何食べても味気ないか。』

 少し笑った。久しぶりにゆっこの話をしながら笑えた。

『うるさい。気にしてるんだからな』

『じゃあ、尚更だろ。相手の子、ゆっこちゃんだっけ? その子が今のとこ世界で唯一お前に味覚を与えてくれる女の子なんだろ。シャキッとしろよ。自分と後輩と、どっちがよりゆっこちゃんを必要としているか考えろ。取られて良いのか? 本当に良いのか?』

『良くない……。けど、僕のこの気持ちは本当にゆっこに対する恋心なのか? ただ、ゆっこの作る飯に胃袋が反応してるだけじゃ……』

『あああああ。もう、うるせえなあ。ウジウジウジウジ……。昔から”胃袋を掴む”って言葉があるだろ、お前は胃袋を掴まれたんだよ。素直に捕まってこい。逃げんな』

 晴天の霹靂。そうか、もうゆっこに掴まれてたんだ。じゃあ……

『僕、掴み帰すよ。うん、学祭、後輩から掴み返す。うん。うん。何だか希望が湧いてきた。ありがとう、本当にありがとう。じゃあ、またな』

 切るとき、電話口で何か言っていた様な気がしたけど、もう他の事なんか気にしていられるか。

 僕の頭はもう、学祭のことでイッパイだった。

 瑞希に学祭の詳細を伝え忘れていたなんて、当日、瑞希に会うまで気が付かなかった。

又寒くなりましたね。最悪です。風邪引きそう……。でも、このご時世、風邪引いたら、コロナと疑われて、生きづらそうですね。最悪だ…………。

それはそうと、場合によっては来週休載せざるを得なくなるかも知れないので、Twitterを要チェックです!

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