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シェルフィのお仕事【魔物退治】 【★】

早朝、未明。

満月で明るかった夜空も月が沈んでからは真っ暗で、特に朝日が上がる寸前の今頃は特に暗さが際立っている。


あたし、シェルフィ・ヌディスは、そんな時間にも関わらず緊張に支配されて、暗視機能(ノクトヴィジョン)付きのターゲットスコープ越しに標的を見詰めている。


標的の名前は『アーマードベア』。

真鍮(ブラス)色の体毛と甲殻を持った3メートルはある巨大な熊で、でも動物ではなく魔物に区別される害獣だ。

森の中、それもかなり奥にいる魔物の筈なんだけど、何故か今はその森から出て此方の様子を窺っている。


あたしの後ろにはここいらで唯一の人族の街である『ミスリルウッドタウン』があり、アーマードベアはその濃密な人の気配に警戒しているようだった。

そしてその街の警備役として、魔物を街に近づけるわけにはいかないあたしはアーマードベアにこれ以上は無いってくらい警戒をしているわけだ。


このまま森に帰ってくれれば面倒は無いんだけど、野生動物と違って魔物は何故か外敵には攻撃的な性格で、人の集落を見つけた以上遅かれ早かれ襲って来るのは変わらない。

なら何故、今は警戒だけしてるのかというと、多分だけど朝日の出を待ってるんだと思う。

アーマードベアは熊っぽい外見だけど、金属性質の体毛や甲殻のせいで外気の気温に体調を左右されやすい。

今は初夏に近いけど、この時間だけは異常に冷えこんでいるし、恐らく“外”は零度近いかもしれない。水なら凍ってしまう寒さだ。もしアーマードベアに熊の性質が残っているなら冬眠しかねない状態なのだろうと思う。


なんにしても、あたしにとってはチャンスであり、お仕事遂行のための貴重な準備時間だ。


こうして監視しつつーの段取りを予想しつつーのと考えてる間も、対処準備としての大型バリスタの脚漕ぎ式巻き上げペダルは全開で回している。

女の、しかもまだ女性とは言い難い子供の力じゃ、魔物の装甲を抜ける程の力を出す弓弦を一気に巻くことは出来ない。

だから街の唯一の鍛冶屋、ガチムさんが考案してくれた並列式スプリング射出機構を使うしかないんだけど、一発撃つのに6本のスプリングを巻き上げないといけないってのは、これはこれで重労働だ。


アーマードベアを発見して直ぐ作業を始めたけど、今終わったので9本。

2発分は欲しいから後3本は巻かないとなんない。


……泣ケル。


最悪、奥の手の『75ミリ』を使うかと諦め始めるが、アレは一発のコストが尋常じゃない。アーマードベアはそこそこ高く売れる魔物だけど、儲けとトントンなら正直放っとくほうが楽だ。

別にあたしだけが街を守ってるわけでもなし、だし。


アーマードベアが行動を始めるよりも先に、無事2発分巻き終えれた。

でも僅かにも動かれたので監視兼用でつけてた照準がずれてた。

改めてターゲットスコープの中に収める。


んう、もしかして格闘戦もアリじゃないと不味いかな?


もし2発とも外したら、さすがにアーマードベアもこっちを敵認定して攻撃してくるだろう。

そしたら奥の手の75ミリは木偶の坊だ。

なんせ75ミリの射程はバリスタよりも遠い。

今は同じ射程範囲域なので併用可能だけど、ゼロ距離じゃまったく使えなくなる。


スラッグなショットガンじゃ装甲抜けないだろうしなぁ……。

そしてこれも75ミリ同様コストが大きい。うん節約大事。


でもエンジンかけたらそれこそアーマードベアを刺激する事になる。

そうなったら射撃どころじゃない。


しばらく機内になんか使えそうな物が無いかと探すが、無動力で動作可能な武装はドレモコレモ遠距離仕様ばかりだった。

こんど探すと心のメモ帳に記しとく。


こうなったら射つと同時にエンジンかけるしかないなぁと諦めて、せめて発動失敗にならないよう機内温度の確認。

キャノピー、キャビン、共に室温27度。うん暑すぎる。分かってた。

じゃなきゃあたしは“こんな格好”していない。


駐機姿勢なので外気に晒されてる四肢もそんなに冷えてはいない。だからそう動きに問題は無いだろう。


方向性が決まったので気分的に落ち着いた。

それにもう、そろそろ朝日も上がる時間だ。

アーマードベアが活発化する前に先制した方がいいので、スコープを覗き照準がブレてないのを確認したので撃つ事にする。


ズバァン!


二股ライフルスコープが両目でその間の砲身が鼻、何となく顔に見える砲塔部の、言うなれば唇な位置にある4つ並んだ穴。

これがバリスタの発射口で、今はその内発射可能な2本の片方が勢い良く飛んでいく。


のろのろとしか動かないアーマードベアが、発射の音に驚いて身を起こそうとした。

あたしにとってはラッキーで、肩や背中程硬くない胸の装甲をバリスタからの巨大な、矢というよりは槍な感じの鉄杭が貫く。


これは致命傷だ。

元々は踞ってたから硬めの背甲を傷付けるつもりでの2発と考えてた。

でもこれなら、後は黙ってても出血で逝ってくれる。


だけどさすがに魔物なんだよね。

心臓に当たる魔物の核、これが無事ならホントに血が出きらないと死んでくれない。

というか、血がなくなっても動物的に動けなくなるだけで死んではいないとか魔物狩り専門の採集師さんが言ってたような気がする。


そんなだから、アーマードベアは鈍い動きながらもこっちに怒り狂った突進を仕掛けて来た。

残りの矢も撃つ。当たりかたが悪くて背中の甲殻に弾かれた。


ナチュラルディーゼルエンジンに火を入れようと、リコイルスターターを勢い良く引いて『ドゥルン』とひと鳴かせ。

そのまま『ドッドッドッドッ』と鉄の鼓動が続き、あたしの魔力で補えない強力な力が機体全体に満ちるのを感じる。


ギキイッと少々油の足りない軋む身動ぎをして、あたしのもう1つの身体と言っていい鋼鉄の巨人、『鉄甲姿躰』(キグルミック)と呼ばれるロボットが動き出す。

アーマードベアの動きが遅いおかげで、正座した感じの駐機形態から格闘形態へのモード変更にギリギリ間に合う。


これで、少なくとも操縦席はアーマードベアより位置的に上になるから安心。

あんなのに上から見下ろされたら、それだけで怖いからね。


ガッツン!


爪で引っ掻くように叩き付けられたけど、正面装甲は厚いので問題無し。

出力は……、ちょっと低いかな。

これだと殴って応戦するのもなぁ、何度もやんないとトドメはさせそうもない。

ならと手を開いて、暴れるアーマードベアを赤ちゃんを抱っこして高い高いするように、ほんの少し持ち上げる。


ちょっと馬力足んないから爪先立ちさせるような感じだけど、後ろ足の踏ん張りを効かせれない姿勢だから当たる腕の攻撃もそんなダメージになんないっぽい。


でと、このまま間接をロックして、後は出血しきって動けなくなるまで放置する事にした。


思ったより簡単に終わったなぁ。


出費最小限で臨時収入を得られたので自然に顔がニヤケる。

少々の小金持ちになったところでミスリルウッドタウンじゃ物が無いので意味は無い。でも純粋に懐が温かくなると、意味は無くても変な余裕が生まれるし、珠にくる行商の魔鍛冶師から役立ちそうな物が買える……かもしれない。


持ってて損は無いので、故に善いことなのだ。


気分がいいので今のうちに魔物のチェックをする事にした。

日も昇りきれば交代も来るし、そしたら街に移動して朝御飯やら報告レポートの提出もある。勿論ちゃんと睡眠もとらなきゃなんない。

案外昼間は忙しいのだ。


それに今晩はまた徹夜でお仕事だし。


だから、この束の間の時間を利用するのは当然だと思う。

念のためエンジンはかけっぱなしにして、直接触るのは……、なんとなく危険を感じるから、何か……長物の工具をと見回して、スコップがあったのでそれを使う事にした。


危険という意味じゃ拘束してない下半身を触るのは論外。

もしひと蹴りでもされれば、あたしはそれだけで死ねれるし。


上半身はと改めてペリスコープで見れば、んー……、白眼むいてるし、前肢とダランと下がってるし、たぶんもう血も出きってるから大丈夫そうかな、と思える。


胸部装甲のハッチからツツク分には平気そう。

軽く甲殻を叩いてみれば、その感触で予想もつくかもだし。


アーマードベアは成長によって甲殻の厚さが増えるので、叩いて出る音で何歳かってのご分かりやすい。

鑑定屋には魔物買い取り基準となるサンプル品が色々と置いてあり、あたしはまだ小さい頃に遊び半分で一通り確認してあったりする。

絶対音感とか色の識別眼とか、あたしは結構便利な才能持ちらしいので、今聞く音と過去の記憶の音と聞き比べれば分かる事になる。


だからこそ、こう、ちょっとした我慢が出来ずに確認したくなるんだよね。

いろいろ理屈はつけたけど、結局は、単に臨時ボーナスの価値を知りたいだけ。


浮かれてるのだ。あたしは。


だからまあ、ちょっとした、こんなポカもやらかすんだよね。


ハッチを開けて、途端に機内の熱い熱気が外へと溢れる。

ただでさえ高い温度だったのに、エンジンを駆けた事で機内温度は30度を越えていたのだが、もう慣れきってたあたしはそれを自覚する事が出来なかった。


あまつさえ、湿度も高かったから外気との気温差を感じるにはあたしの周りの空気は濃密過ぎた。


そんな状況で二歩三歩、四つん這いでアーマードベアに近づき、スコップの先で“ツン”とひと突きして『チィィーーーン』と澄んだ音色をたてる最高級品質確実な証を聞き、喜んで上体を起こそうとした時に起きた事実。


凍りかけた装甲板にピッタリくっついて動けなくなった。


スコップを持ってた右手は自由だけと、装甲に直接触れてた左の掌と両足の膝と踏ん張る為の足の指全部。

ああ、完璧に貼り付いてしまった。


あんな熱い環境に一晩中いたのだ。

まともな格好なら完全に逆上せてる。

だからあたしは、ちゃんと適応した格好をしていた。


即ち、『パンツ一丁』。


パリパリと感じる皮膚を通して聞こえる『音』。

熱気はみるみる外気に拡散し、生の素肌を凍らせようとする澄みきった『冷気』。


ああ、地味に自慢な光の加減で緑に輝くお尻まで届く金髪が霜に覆われて白く濁る。


これは、動いたら死ねる。


というか、軽く冷凍されかけてる。


幸い背後のハッチから熱気は溢れ続けているので凍え死ぬ事は無さげだけど、周囲を覆う寒気には些細な抵抗で、寧ろ身体にまとわり付く湿気が即座に凍ってあたしを固める事になってる。


でも、だからといって、あたしに出来る事は無ひ。


精々、身体の芯まで凍らないように動けないながらも全力疾走の如く心臓を動かし続ける事だけだ。


後数分、朝日が昇ってくるまで。


耳に五月蝿く感じる程に鼓動は全開。

鳥肌のたちっぷりも全開。

ついでに意思と関係無くガチガチ鳴り止まない歯の音も全開。


せめて、交代が来る前に動けるようになって 痴女紛いの醜態晒さないで済んだのは幸いだったんだろう。


幸いなのかな?


……。


ひぃぃーん。




初見の人には意味不明な内容を含みますw


もう一つのお話しを書いてると、無性に立体物を作りたくなります。

作るといっても『ガ●プラ』や『ガ●パン』や『艦●レ』なわけで、“組み立てる”と言ったほうが正確なのですが。


で、カタチにすれば当然其なりのスペースを占有し、限り有る部屋の中を圧迫する存在と化すのです。

つまり邪魔物w


そんな邪魔物はプラモからジャンクという存在に変化し、やがては原型すら解らなくなる物体へと変貌します。


この作品は、そんな物体がモデルとなった物なのですww


なので基本的に内容らしい内容は有りません。

敢えて有るとしたら、裸族に近い小娘シェルフィがキグルミックに関係したりしなかったりする日常で無自覚にエロい事をして周囲をヤキモキされる感じです。


基本的に一線は越えないように注意はしますが、まあ、R17辺りまでは頑張る所存w

もしウッカリ越えちゃったらノクターン行きかもしれません。


あとコレ大事。

これは気分優先なので、完全に不定期連載デスw


でわでは。



※以下は2014/11/20付けの追加として。


今話に登場する魔物のイラストを置いておきます。


【アーマード・ベア】

挿絵(By みてみん)


・熊に類似する野獣が素体になった魔獣。

真鍮色の剛毛と甲殻を備え、ほぼ真鍮と同等の硬度の防御能力を有している。

その巨体と防御能力に比例する大重量の身体を動かすために、筋力も尋常ではないパワーとなっている。


しかしその能力も、野獣型の魔物のくくりであり、キグルミック相手には無力に等しいものであった。

合掌。


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