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ぼくをみて。2  作者: 雨宮ツムグ


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1/3

俺だけに

こちらは前作『ぼくをみて。』の続編です!

宜しければ、前作からご覧ください。

既に読んで来たよの方は、御足労いただき誠にありがとうございます!

駅に着くと、恋人の春海は自然と目を覚ます。

相変わらずどういう仕組みなのか分からなかったけれど、二人連れ立って、スクールバスを降りる。

外は、暑さがマシになってきているように思う。

今日も送ってくれる春海と並んで、話すのは、開けたばかりの、ピアスのこと。

「お風呂入る時、気を付けて。忘れた頃に手をぶつけて結構痛いから」

「っふ、確かに忘れそう」

「あと髪拭く時も」

「ああ」

「あと寝る時も」

「……おお」

意外と耳って、いろんなところで、いろんな時に触れているのだなと思う。

失って初めて気付く、ではないけれど。

ピアスとはいえ一応傷なので、気を付けねばと思う。

けれど、それより何より、本当に、開けられたことが嬉しかった。

しかも、思ってもみない、春海とのお揃い。

少なからず痛むのに、お揃いにして開けてくれたことが嬉しかったし、これからどんなピアスを着けるのかも楽しみだった。

一ヶ月はファーストピアスのままの方がいいと、春海が言っていたので言う通りにする予定で。

けれど、本当に楽しみだった。

片耳一つだけピアスの穴がある俺と、三つ開いている春海。

両耳用のピアスを買えば、自動的にお揃いが増える仕組みが、楽しみで、嬉しくて仕方なかった。

思い付いた当初は春海に開けてもらえると思っていなかったし、春海のを開けるとも思っていなかった。

春海のお陰で、凄い経験をしたな、と思う。

もうじんじんとはしなくなったピアスを、そこにあるか確かめる様に、左耳に手をやる。

「こら」

春海に見付かって、直ぐ止められてしまったけれど。

ちゃんとそこにあって、開ける瞬間、好きだと言われたことも覚えている。

「嬉しい」

「……はぁあ」

……いよいよいつもの、監禁したい、すら言わなくなったな。

なんとなく俺の言葉を噛み締めていそうな春海を、呆れながら見る。

春海は困った顔をしてから、笑っていた。

俺はこの傷のお陰で、もう少し、早く大人になることを我慢していられそうだった。

俺と春海の初恋を応援するというファンクラブには、『愛のお揃いピアス!』と、速攻でバレて広まっていた。


ピアスを開けてから、春海は暫くバイク通学を休むとのことで、その間、朝から一緒に登校ができるようになった。

だから駅で合流して、バス停の列にはまだ並ばずに、二人で話していた。

「嬉しい誤算だな」

「……」

緩む頬をそのままに言うと、春海は黙って胸元を押えている。

多分、監禁……と考えているのだな、と思う。

春海は、俺に素直な気持ちを伝えられることに弱いみたいで、だから最近はなるべく、思ったことをそのまま伝えている。

好きだとか、そういう言葉は、俺の中では必殺技、みたいなイメージがあったけれど。

素直な気持ちを俺が言う度に、春海が嬉しそうで、嬉しそうな春海を見る度に、俺も嬉しい。

だから、思った時は秘めずに、伝えた方がお互い幸せだなと気付いた。

自分の気持ちを伝えた方が良いだなんて、自分を偽り、良い子に化けていた『僕』の時は微塵も思えなかった。

皆、自分が言って欲しい言葉『だけ』を求めていたから。

でも春海は、俺自身の気持ちを乗せた言葉に喜ぶ。

思ったことや、感じたことに、蓋をしなくていいのは、こんなにも息がしやすいのだなと、最近よく思う。

「春海、好き」

「……なにぃ」

「ははっ」

春海がよく言う『デレ』ってやつが、多分キャパオーバーしたんだろう。その場にしゃがみ込んで行く春海を見ながら、俺は笑った。

学校へ向かうバスは、まだ来ない。


昼休み、俺は音楽準備室で春海と並んで、お弁当を開ける。

暑さはマシになってきたものの、まだ外を歩けば汗をかくし、これまでの蓄積ダメージで割とバテていて。

お弁当を開けたまま、ぼーっとしていたら、春海から梅干しを口にねじ込まれる。

容赦ないと思いながら齧って、舐めて。

いつ食べても美味しいから凄いよなぁと思っていたら、視界に、そろそろか?って顔をした春海が入ってくる。

だから顔を寄せて、目を伏せる。

春海はちょっと笑ってから、俺から種を舌で回収していった。

あんなに照れていた春海が、今やもうこんなにも手馴れていて。

視線を上げると、まだ種を含んだまま、こちらを見ている春海と、目が合うから。

「ん」

キスのおかわりを強請ると、触れるだけのキスが、幾つか降ってきた。

「素直」

「ん。その方が春海嬉しそう」

「……うん。ちょっと心臓持たないけど」

「ははっ」

笑って、すぐ近くでひそひそと話していた春海から離れる。

手を伸ばすと、優しく春海が握ってくれる。

「最近、よくどきどきさせられる」

「そお?」

「そう」

「俺もずっと乱されてて悔しい」

「いつ?」

「……キス、とか。上手くなり過ぎ」

「ふふ」

握られた手を、春海の親指がなぞるから擽ったい。

お互いどきどきして、どきどきさせられているのは、何か良いなと思った。

夏休み以降、ずっと俺ばかり乱されていたから。

俺も春海を乱せているなら嬉しい。

「でもあんま色気出さないで」

「色気?」

「そう。最近金井くん色気あるよねって、聞く。春海のファンが増えてる」

「ええ」

なんだそれ、って困っている春海。

でも実際、春海は夏休み以降、本当に色気が増していると思う。

多分、恐らくだけれど、俺と、長い夜を越えたから。

後は、大好きなばあちゃんを、そう遠くない未来、失うかもしれないという不安が、どこか儚さを生んでいて。

それが色気として出ているような、そんな感じ。

春海の魅力が増すことは素晴らしいけれど、周りまでメロメロにするのはちょっとダメだろ、と思う。

「俺だけにモテとけ」

「分かった」

「ははっ」

ほんとかよ、って笑って、俺はお弁当を食べ始めた。


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