砂海に潜む魔・3
一方は魔方針に、もう一方は神子姫の占いに導かれ、四方が見えない砂漠をしばらく進んでいくと、次第に風が弱まってきた。
「もう少しで、視界がきくようになりそうだな」
辺りが見渡せれば仲間や目的地が見付けられるかもしれない、と淡い希望を抱く。
もちろん、そのぶん魔物にとってもこちらが見付けやすくなるのだろうが。
方位を指す針を見つめながら、デューは慎重に砂を踏み締めた。
「ん? 向こうにうっすらと何か……」
「あれは……はぐれた仲間達だ」
いち早く気付いたのはカッセだった。
弱まってきたとはいえ、まだ遠方はよく見えないこの状況でどれだけ視力が良いのだろうか、はっきりとそう言い切った。
ややあって本当にイシェルナ達の姿がわかると、オグマが僅かに驚いた顔をした。
「すごいなカッセ、よく見えたな」
「見えたのではなく聴こえたんだ」
「こんなに風の音が強いのに? 向こうも騒いでる様子でもないが」
どちらにせよすごいことだと素直に感心していると、三人もデュー達に気付き、笑顔で手を振った。
「半々どころかばっちりだったわね、フィノちゃん」
「いえ、ただ夢中で……二人がいてくれたお陰です」
と、奇しくも強風が止み、距離があっても多少は見聞きできるようになった瞬間、砂の大地が大きく揺れた。
「なっ、なんだ!?」
すかさず飛び退くとその下から現れたのは、先刻一行をバラバラに引き離した魔物。
「おいでなすったみたいですね……もう同じ手にはかかりませんよぐぇっ!?」
斧槍を構えたリュナンを踏み台にして高く飛び上がったのはカッセだった。
小柄な体が宙でくるりと回転し、魔物めがけて飛び道具を投げつける。
「まずは初手を封じる……今だ!」
あの時のように吹き飛ばされては敵わない、と素早く牽制し、着地。
反撃を喰らわないうちに距離を開ければそこにオグマが氷の術をぶつけ、怯ませた。
「さすがだな、わかっていたか」
「恐らくああやって奇襲をかけ、風を起こして獲物を吹き飛ばすのがあの魔物の常套手段だろう。だがあの動作は隙が大きい。初動を潰せばそうそう使えない」
オグマの言葉に、カッセが覆面の下で笑ったような気配がした。
魔物はすぐさまダメージから立ち直り、デュー達一人一人を睨みつける。
予定とは違ってしまったが、それでも引っ込むことがないあたり、小手先の技抜きでも決して弱い訳ではないのだろう。
「……手強い相手には違いない。みんな、気を抜くなよ!」
「りょーかいなのじゃ!」
他の仲間達も次々に武器を構え、戦いの幕が開けた。




