陸を離れて・4
マンジュの里、宿屋にて。
ミナヅキの計らいに助けられ、ミレニアとシュクルを休ませた一行は、それぞれ思い思いの場所で里を満喫していた。
「ここは景色が美しいな……」
宿の中庭にある池の水面に空が映りこむ。
色づいた葉が風に舞うさまを眺め、オグマはほっと一息つく。
「ほーんと、こんな所をいい人と歩けたらロマンチックよねぇ」
「っ!」
いきなり現れた美女に慌てて振り向くと、呆れたような顔をされた。
「ミナヅキさんの時はともかく、あたしの気配に気付かないなんてらしくないわね。最近ぼーっとしすぎよ」
「す、すまない……」
自然の色彩がイシェルナの美貌をより魅力的に見せているが、オグマはただ目をふせ、顔をそらすだけ。
彼女はゆっくりとオグマに近寄ると、覗き込み、
「王都でのこと、引き摺ってるの?」
そう、尋ねた。
黙っているのは、図星を突かれて否定が出来ないから。
「どうしても話せないのかしら?」
「まだ、わからない事が多すぎる。彼は一体何者で、どうして襲ってきたのか…」
墓地でのことが甦り、刺された箇所に左手を添える。
(あっさり動きを読まれたこと、向けられた憎悪……向こうは私をよく知っているようだが、私にはまったく覚えがない。誰なんだ、一体……)
思考を巡らせていると、ぷに、と頬を指先で押され我に返る。
「またぼーっとして、周りを置いてってる」
「あっ、す、すまない……」
「謝ってばっかりね」
ズバズバと指摘される度に長身がどんどん縮こまっていく。
イシェルナは溜め息を吐くと苦笑の混じった笑顔で、
「いじめてごめんなさい。それじゃ、また後で」
とだけ残して、踵を返し去っていく。
一人残されたオグマが俯き視線を落とすと、水鏡に映った自分と目が合った気がした。




