賑わいの裏側・2
王都に立ちこめる障気を浄化した時に、地下で見た巨大な牙。
シブースト村近くのマナスポットで、マナを喰らう魔物と遭遇した話。
一通り聞き終えるとザッハはなにやら真剣に考え込んでいた。
「……おじうえ?」
「あ、ああ、なんでもないよ。そうか、確かに放っておく訳にはいかないね。それにしても、障気を晴らしたのは君たちだったのか」
「兄様からは聞いてなかったのかの?」
「彼は僕のところには来ないからねぇ……王都を救った英雄としてさらに忙しくなったようだし」
巷ではデュー達の事は語られず、トランシュが障気を浄化したことになっているようだ。
ここで名前を出されても困るといえば困るのだが、なんとも複雑な気分になる。
「魔物の狂暴化もおさまらない、安心して街の外に出られない。こんな世の中じゃ彼のような英雄が必要になるんだろうね」
「それであの人気……」
「加えてイケメンで隊長さんときたら、黄色い声援も飛ぶわよねえ」
デューとリュナンとシュクルはほぼ同時に、イシェルナの呟きに「そこかよ」とツッコミを入れた。
「まぁ、あまりフローレットを心配させないで欲しいな」
「そうじゃのぅ」
ふ、と周りの空気が軽く、穏やかになる。
今頃どこかでくしゃみでもしているんじゃないだろうか、と一同笑みをこぼした。
「で、君たちの事情はだいたいわかった。僕で力になれるとしたら……これかな?」
ザッハはそう言うと引き出しから小さな丸い物体を取り出し、ミレニアに手渡す。
それはどう見ても、方角を指し示すコンパスそのもので。
「おじうえ、これは何なのじゃ?」
「それは僕が作った魔学探知機『魔方針』だよ。より濃く強いマナに反応して導いてくれるからマナスポットを探すのに使えるかと思ってね」
再度彼女の頭を撫でてやると、ザッハは微笑みながら語りかける。
「今の僕にはこれくらいしか出来る事はないけど、少しでも君の……君たちの助けになれるように。旅の無事を祈っているよ、ミレニア」
「おじうえ……ありがとう、なのじゃ」
ミレニアの言葉に笑顔で頷くと、そっと彼女を離す。
「さぁ、もう行くといい。オグマ、それにみんなも、ミレニアを頼んだよ」
「……ああ。ザッハも、元気で」
「ありがとうございました、ザッハさん」
そうしてデュー達が出ていって、一人残される部屋の主。
完全に気配が遠のいたのを確認すると、彼は胸を押さえ小さく呻いた。




