魔学研究所にて・4
デュー達が魔学研究所に駆けつけると、遺跡のマナスポットで倒した魔物とよく似た生き物が暴れていた。
本能がおぞましいと感じる醜さは似ているが、あの時の魔物より大柄だ。
「王都騎士団は出払っていて、残っている者達では魔物をここに押し留めるのが精一杯なんです!」
「ちっ、何のための騎士団だよ!」
「そりゃ結界の中にまで魔物が来るなんて普通思わないからでしょ」
柄になく憤るリュナンにそれよりも、とイシェルナが拳を構える。
「やっこさん、やる気みたいよん?」
「そうだな。被害が大きくなる前に、始末をつけてしまおう」
「……その後で、おじうえを探すのじゃ!」
殺気に反応した魔物がデュー達の方を向き、問答無用で襲いかかる。
「兵士さん達が消耗していますね……妖精の祈りよ、ここに!」
「拡散する癒しの息吹、羽ばたけ!」
フィノとオグマがすかさず傷ついた兵士達に治癒術をかける。
どうやら致命傷を負った者はなく、大事には到らなかったようだ。
「じゃー遠慮なく、叩きのめしちゃいましょうかしらん!」
イシェルナの蹴りが容赦なく魔物に叩き込まれる。が、あまり効果がないのか怯まず、深入りは危険と判断した彼女はすかさず飛び退いた。
「あらあら、タフねぇ」
「ここはひとつ、まとめて切れ味アップといくかの!」
ミレニアがデュー達にまとめて攻撃力を高める術を唱える。
「よし、いくぞイシェルナ!」
「あらん、強引ね♪」
フィノの光の術で生じた隙に懐に飛び込んだデューとイシェルナが、呼吸を合わせて闘気を放つ。
さながら二頭の獅子が牙をむき一斉に魔物に噛みつくような一撃は、相当応えたらしい。
よろめいた魔物に、早くザッハを助けたいのであろうミレニアが一気に勝負をかける。
「重圧でぐりぐり、押し潰しちゃうのじゃ!」
地が抉れるほどの圧力が魔物を襲い、長い悲鳴にも似た叫びがあがる。
……が、ここからは今まで戦って倒していた魔物と違っていた。
「え……?」
どす黒い魔物の肉体は消え、そこに倒れていたのは…………他でもない、ミレニアが探していたザッハ本人だった。
「お、おじうえ!? おじうえー!」
急いで駆け寄ったオグマが治癒術で回復させると、ザッハはうっすらと目を開ける。
「良かった、おじうえ……でも、どうして……?」
「ミ、レニア……」
「ザッハ、事情は気になるが少し休んだ方がいい。リュナン、彼を運ぶのを手伝ってくれ」
心配そうなミレニアに「大丈夫だから」と笑いかけ、ザッハは二人に運ばれていった。
「…………オレ達は、フローレットの所に戻ろう。いきなりこんな事になって心配してるだろうし、ひとまずザッハの無事を伝えないと」
「そう、じゃの……」
魔物の姿をしていたとはいえ、自分の手で痛めつけてしまった事に気落ちするミレニアの肩にシュクルが飛び乗り、すり寄った。
「……本人が言うのだから大丈夫だ。ゆくぞ、ミレニア」
「うむ……」
応える声は、彼女らしからぬ静かなものだった。




