森の奥のひみつ・4
森の地下には広大な遺跡が存在していた。
暗くて何も見えないのかと思われたが、それぞれの身につけてあった蛍煌石のアクセサリーが仄かに輝きを放ち、辺りを照らしてくれた。
「こんな事もできるんですね、蛍煌石って……」
「マナが豊富な場所に行くとそれを受けて輝くようだ。自分でマナを込めて光らせる事もできるぞ。後は……」
説明しながらオグマは目を閉じ、ブローチに意識を集中させる。
次の瞬間、ブローチの石から蒼白い光線が放たれた。
「どぅわぁ!?」
「あ、すまない」
それはギリギリのところでリュナンの身を掠め、肝を冷やした。
「あ、危なっ……だだだ旦那、気をつけて下さいよぉ……」
「ブローチからは狙いがつけにくいな……」
「……こうか」
――バシュッ!――
デューの腕輪から一閃の光が放たれ、リュナンめがけて駆け抜けた。
「ぎゃあぁ!? 少年、何してんの!」
「オレは腕輪だから狙いつけやすいかなーと……ああ、これは便利だな」
少年はそう言ってリュナンを的に自由自在に光線を撃ちまくった。
もちろん、当たるか当たらないかスレスレの所を狙って。
「しょ、少年ってば、絶対Sっ気あるでしょ!」
「何の事だかわかんねーな」
ニヤニヤ笑いながら狙いを定めるデューの肩を、オグマがポンと叩く。
「デュー、人に向けて撃ったらダメだぞ」
「わかったよ、ちょっと試してみただけだ……さて、遊ぶのはこれぐらいにして、と」
なんで旦那の言うことはすぐ聞くんだ、とリュナンが目で訴えるのを無視して、デューは辺りに視線を巡らせた。
少し先に光源らしきものが見える。
「あそこは……」
「行ってみるのじゃ」
光源の正体は、壁に等間隔でちりばめられた蛍煌石だった。
貴重な石がここまでふんだんに使われている光景に、一同言葉を失う。
……と、その灯りに照らされた壁を見ていたフィノが、驚きに声をあげた。
「こ、この壁画……」
「ん?……これは、昔の出来事か?」
古ぼけた壁画には、地から突き出す牙、倒れる人々、牙に立ち向かう人々が描かれていた。
人々の中には獣も混じっていたり、人のように二足歩行で立つ獣もいるように見える。
(人と、聖依獣……? 確かに共存していた時代もあったと聞くが……)
シュクルは壁画を見渡し、小さく唸った。
「この壁画……占いで視たのと……じゃあ、ひょっとしてこっちに、」
「フィノ?」
弾かれたように駆け出したフィノが、別の壁に描かれた図を食い入るように調べた。
「この絵も、この絵も、これも、見覚えが……」
「フィノ、どうしたんだ?……これは……」
彼女が見ていたのは、先程見たのとは違う壁画。
空の下で人が大地を踏みしめているが、地面の下にもまた人がいた。
「上にある城は……マーブラム城?」
冠を被った人間とともにある城の姿形は、王都に聳えるそれとよく似ている。
「じゃあ、こっちはわしらが住む世界、かの?」
「オレ達が住む世界、って……他にも世界があるのか?」
デューの質問に静かに首を振るミレニア。
「そんなの、御伽噺じゃと思っとった。けど、それなら……」
「上の大地がアラカルティア、下の大地がアラムンド。そう記されているな……だがさっきの壁画では、上下に分かれてはいなかったような……」
壁画を指でなぞりながら、オグマは首を傾げた。
「なんかよくわかりませんけど、そしたら王都の地下に生えてたあの牙って、ひょっとしたらとんでもないもんの先っちょだったりして……」
「そうだとしたら、そんなものが生えてる根本……アラムンドは障気で人も住めない場所になってるだろうな」
王都の地下に不気味に存在していた牙。
あれだけでも身震いするほど厭な気配を感じたというのに、もしかしたらほんの一部でしかないなんて。
考えただけで、リュナンの背に冷たいモノが流れた。
「訳がわからんな……もう少し調べてみるか」
「うむ……どきどき探検隊、なのじゃ」
蛍煌石の灯りを頼りに、一行はさらに奥へと進む。
静まり返った遺跡に響く足音が、不気味さを増していた。




