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ストップ!会長!  作者: ふみわ
始動、或いは女王の誕生
3/8

超能力、或いは都合良いもの

もの凄く遅れました。

ごめんなさい。

「俺が会計・・・・・・ですか?」

「ええ」


 にこりと人の良さそうな笑みのまま、夜子は頷いた。

 その腕にはミャーと鳴いている三毛猫が抱かれている。

 一見、美少女と猫という大変微笑ましい絵面だが、しかし夜子という少女の人となりを骨の髄まで知ってしまっている塁一にとっては全く笑えなかった。


(どー見ても、魔女と人質だろ・・・・・・)


 内心そう呟きつつ、声には出さない。

 というか、口にしようものなら言い終わる前に魔女に肘鉄を食らう。

 塁一は夜子を止めるのを早々に諦め、享に同情した。

 一方、魔女の本性を知らない哀れな生け贄こと、享は──


「でも、俺、まだ一年ですし。役員は──」

「そんなことないわ。新入生の貴方は知らないでしょうけど、先代の生徒会長は一年から会長を勤めていらっしゃったのよ」

「そうなんですか? 一年から会長なんて、凄い人だったんですね」

「ええ。とても立派な方だったわ。事務的に役目を果たすだけの生徒会にメスを入れ、生徒会を生徒を思いやる組織に作り替え、実力があれば誰でも参加できるようにした──私が一番尊敬している方。私もあの方のように徹底的な実力主義の生徒会を作りたいと思ってるの。その為には貴方の力が必要なのよ」

(う・そ・を・つ・けぇえええ────っっっ!!!)


 塁一は心の中で力一杯言った。

 先代生徒会長が一年から三年間勤めたのも、森明高校生徒会の仕組みをすっかり変えたのも事実だ。

 しかし、夜子が先代会長を尊敬していたなんて、青天の霹靂。つーかデタラメだ。嘘だ。虚言だ。

 塁一は知っている。何せ、彼は入学して一年と数ヶ月、夜子に振り回され、ほとんど学校生活を共にしていたのだ(まぁ、出会ってからほぼ一緒にいるが)。

 表面上は優しい先輩と先輩を尊敬する可愛い後輩に見えた事だろう。しかし、事実は全く異なる。

 夜子は学校の支配者たる生徒会長に憎悪どころか殺意を抱いていた。一度、隙を見て抹殺しようとしたぐらいだ(そして、例によって塁一も片棒を担がされた)。

 そして、会長は会長で恐るべき洞察力で夜子の本性を見抜いていた。

 会長が卒業するまで、表向きは平穏に過ごせたが、会長に勝てなかった夜子にはまだ遺恨が残っているし、塁一もある意味で夜子より暴君だった彼のことはあまり思い出したくない。

 なのに、平然と会長を尊敬しているなどと言う夜子は本当にいい面の皮だと思う。


「俺は・・・・・・」

「本庄君。生徒会入りは貴方にとっても理はあるのよ」

「え?」

「猫だな」


 塁一が代わりに答えると、享が体をすくませた。どうやら、無断飼育が校則違反なのは知っているらしい。


「その通り。本庄君、君が生徒会に入って私に協力してくれるなら、この猫──ニー君のことは私から先生方に言って、学校で飼えるようにしてあげるわ」

「ほっ、本当ですか!?」

「二階堂夜子に二言はないわ」

「本庄、夜子は約束は守る奴だ。安心しろ」


 援護──のつもりは塁一にはなかった。真実を言ったからだ。夜子は必要に応じて嘘を吐くし、平気で他人を踏み台にする人間だが、それでも塁一が誇れる彼女の美徳は約束を反故にしないということだ。ちなみに何故塁一が誇るのかというと、夜子が自分の人間的な美徳に無頓着だからである。


「すみません・・・・・・うち、両親が猫アレルギーで・・・・・・こいつの面倒をこれからも見られるなら──」


 生徒会に入ります──的な雰囲気だったその時、事件は起きた。

 一瞬、捕らえた獲物を前に舌舐めずりする百獣の王的一面を見せた夜子にビビったのか、ニーが夜子の腕から逃げ出した。そして──


「「「あ」」」


 ひょひょいっと学校敷地を取り囲む柵を飛び越え、道路に出る。

 その時!

 一台の軽自動車が普通に走行してきた。


「やべぇ!!」

「あら、大変」

「に、ニーっ!!!」


 ニーが轢かれる! と思ったその時、なんかニュートンの万有引力の法則が局地的に変化した。いや、なんかニーだけが浮いていた。物理的に。


「「はい???」」


 夜子と塁一の思考、一時停止。

 横を向くと何やら享が手を出していた。掌が光っている。ついでにニーも似たように光ってる。


「あ゛!」


 享の顔がしまったとばかりに青ざめる。

 それを見て、塁一が呟く。


「念力・・・・・・?」


 言った瞬間、隣の夜子がニヤリと笑うのが見なくても分かった。

次も更新は遅れると思います。

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