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Chapter7 Memories of that day

day:10/16/2032 sat.

 三年前。

 多分、あの日からだ。彼が致命的に変わってしまったのは。


「大和〜! 早く着てよ、新冊が全部売れちゃうから急いで!」


「いや、僕を連れて行く必要ないよね?」


 その頃、私の記憶が正しければ、大和は自分のことを『僕』と読んでいた……と思う。

 少なくとも『俺』ではなかった。そして、()()()()()()()()暮らしてはいなかった。()()()()()()()()()()

 その日は確か……私の好きな小説の最終巻が発売された日だっけ?

 そんなこんなで私は大和を連れて隣町の本屋に行って、バスに乗って帰ろうとしたんだったはずだ。

 今思えば、あれが致命的だったのだろう。




「お、お前ら手を上げろ! し、しし死にたくなけりゃぁ俺の言うことを聞け!!」


 バスの中で、銀行強盗が被ってるようなマスクを付けた、でっぷりと太った中年男性が声を上げた。

 手にしているのは……川のボストンバッグと……拳銃?


「無駄な抵抗をやめて、大人しく投降しなさい!」


 外で警官がメガホンで声を上げる。


「う、うううるさい! おまえらが、お前らがいるからいけないんだ!」


 デブがエアガン(?)を、外の警官に向ける。

 銃口から火がほとばしり、爆発音がバスの中で響いた。

 幸い……弾は一発も人間には当たらなかった。撃たれた三発の内、一発は明後日の方向へ飛び、一発はパトカーのヘッドライトを砕き、一発は止まっていた車のタイヤを駄目にした。

 だが、私は震えた。初めて、生まれて初めて死の恐怖にさらされたのだから。


「あれは……おもちゃじゃない……!」


 横で、顔を真っ白にした大和が呟いた。ガチガチと歯がなっている。


「おい! 今すぐ動かせ!」


「ひ、ひぃぃッ!」


 銃を突き付けられたバスの運転手は、あわててバスを走らせる。道路が古いのもあって、ひどい揺れだ。

 後ろではファンファンとサイレンが響いていた。



 後々知ったことだが、あの拳銃はデザートイーグルとかいうらしい。アメリカで作られている拳銃だそうだ。

 そんなことはどうでもいい。重要なのは、こんな田舎にそんな武器を持った銀行強盗犯が現れたことが問題だったのだ。

 犯人はバスの運転手に拳銃を突きつけ、逃走経路を指示する。


「なんだか……違和感がある」


 大和は小さく呟いた。


「え?なんで?」


「何だかチグハグな気がするんだよ。拳銃をどこからゲットしたかわかんないけど、そこそこ何かしらの力があるってことだよね? なのにこんな犯行……」


 その時、バスが悪路のせいで、激しく揺れた。犯人のバッグが開き、中のものが飛び散る。


「「あ……」」


 そこにあったのは、札束。一万円札がたくさんある。だがしかし、それだけではなかった。

 いかにも危なそうなカプセル薬。、そして大振りなコンバットナイフ。

 それらも、床にばらまかれた。



「ねぇ、おじさん? コレ落としたよ」



 三歳くらいの女の子がカプセルを拾い、犯人に渡そうとする。



「や、やめろ……!」


 大和が止めようとした瞬間……


「み、見ぃたぁぁなぁぁぁぁッ!!」


 犯人は、目を血走らせて引き金を引いた。

 弾丸は……命中した。いや、命中してしまった。バスの中で、赤黒い、熱い液体が飛び散る。


「…………!」


 声にならない、か細い悲鳴。それを残して、少女は倒れた。


「こ、こうなったらお前ら皆殺しだぁぁッ!」


 犯人は、拳銃を乗客――と言っても、女の子の母親と、私達二人だけだった――に向ける。

 拳銃を、大和に向ける。

 大和は……弾丸に当たらなかった。撃たれる寸前に、しゃがんだのだ。大和の頭の代わりに、バスの座席に貫通痕(かんつうこん)ができる。

 私は見た。その時、彼の目が……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 大和は落ちていたナイフを引っ掴み、駆け出す。

 犯人は銃を撃とうとした。だが、撃たれる前に懐に入った大和が、手首を斬りつける。


「ギャァァァ!」


「うるさい、黙っていろ」


 大和が、小さく、低く、冷たく言い放つ。

 犯人は痛みのあまり銃を取り落とす。その銃を、大和が拾った。大和は両手で無造作に、冷徹(れいてつ)に、躊躇(ちゅうちょ)なく引き金を引く。

 重い爆発音とともに射出された弾丸は命中した。そして大和は反動で吹っ飛び、座席で頭を打って気を失った。

 ぽとり、と大和の手からデザートイーグルが落ちた。


 警官がバスに突撃してくるまで、私は動くことは出来なかった。



 後日、このニュースは日本中に報道された。

 流石に大和の名前は伏せられていたが、まぁ多数の死者が出た事件で、犯人が最終的に死亡したとなれば話題性は十分だったのだろう(当時の私にはそんなことは1mmも理解できなかったが)。

 犠牲者の名前には、あの女の子だけではなく、大和の家族――父親、母親、兄の名前もあった。運悪く襲われた銀行に居たそうだ。

 また、この事件が有名になった理由には後二つある。

 まず一つ目は、犯人の男が重度のドラッグ中毒者だったこと。こちらのほうが世間で騒がれたが、私としてはどうでもいい。

 次の二つ目――それは、大和がそれまでの思い出を失ってしまったこと。

 あの一発の銃弾が、

          彼を殺してしまった。


 みなさん、ここまで読んでくださりありがとうございました! しろくろねこです!


 本日、PCを起動してPVを見ると……知らぬ間に200を超えていました。本来面倒くさがりの私がおれなかったのは、皆さん方のおかげです!


 今回、だいぶダークな内容になってしまいました。大和に対して、星奈があのような行動をとるのはこう言った理由があったのです(結果的に大和の過去がだいぶひどいことになってしまったので、そこはマリアナ海溝よりも深く反省しております)。


 四月から書き始め、五月から投稿を始めた『ミッション・レコード』も、もう六話。現在「投稿分」+「書き溜め」=約六万文字となっています。


 ここからも安心して、読み進めてください! それではまた今度!(できたら評価もくださいっ! 現金な願いで申し訳ございませんがっ!)

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