Chapter 36 underwater brawl――ちょっとした裏技――
day:8/10/2035 fri.
「外れたか……!」
俺は、一発撃って弾切れになった捕鯨砲を放り捨て、腰から〈ライキリ〉を抜いた。
クロスボウの回収用フロートが浮かび上がった途端、二刀を構えた二号機二型が突っ込んでくる。
〈エクスカリバー〉を〈ライキリ〉で受け流し、前蹴りを叩き込む。
俺は、吹っ飛ばした二号機二型に追撃をかけようと突撃する。
「でえぃッ!」
だが、〈ライキリ〉を受け止められ、二号機二型は胴体にハンドガンを撃ち込んできた。
HPは、一号機二型が残り七割、二号機二型が残り六割強。
「大翔! 座標を送るから支援頼む!」
『OK、どんと来いや!!』
《データリンク開始、敵機位置を送信します》
ハルに予め指示しておいた命令が実行される。
『え、ちょっと、何!?』
星奈のパニクった声。後ろに逃げようとするのを、ワイヤーガンで捕まえる。
「大翔、俺がいる場所にぶち込め!!』
『おう!!』
威勢の良い返事が帰ってくる。よし、問題ない。そのままワイヤーを巻き取り二号機二型を羽交い締めにする。
『ちょ、え!? 待って大和もフレンドリーファイアで……!?』
「そんなこと、問題ない!!」
70mm訓練弾水中仕様が、一号機二型に命中した。そして、貫通判定されたため二号機二型のHPも削り取る。
更にもう一発、着弾する。完全に一号機二型のHPはゼロになり、フロートが展開された。
『こいつでラストだぁッ!!』
そう叫んだと同時に、二号機二型のフロートも展開してしまった。
『「……いや、もうHPゼロなんですけど……」』
俺も星奈も、慌てるのを通り越して呆れてしまった。
「おいおいおい……そいつはナシだろ……」
龍三は、砂浜にひざまずいている〈ソルジャー・シーカー〉のコクピット内で頭を抱えていた。
いや、その戦術、大会で使えないだろ!
そんな囮戦術じゃ全日本バトルノイド・デュエル本戦の、ランダムで決められるルールに対応できない。
去年はたしか、一回戦目がダンス、二回戦目が玉入れ、三回戦目がバスケ、四回戦目でやっとデュエル(IN鳥取砂丘)だった。
一昨年とか水泳で大苦戦したし、水中デュエルをやってもおかしくない。だから警戒して練習してるのに……
あのバカ二人、後で説教するか……
「徹郎、一号機二型と二号機二型が浮上したから回収に行ってくる。モニター頼むぞ」
『へいへい……にしても、その二機は最近損傷しすぎじゃねぇか? 両方とも関節とフレームの損耗具合がひでぇ』
「まぁ、稼働時間があと50時間くらいで定期整備だろうけど、そこまでなのか?」
記憶が正しければ、BNの定期整備は前の整備から合計200時間稼働させたら行うはず。それなのにもう?
『やつらが無茶ばっかするからだ! 特に大和! あいつの立体機動戦闘のせいで肘関節がすぐイカれるし、蹴りのせいで膝の装甲とか足回りがガッタガタになるんだよ!!』
「はいはい……んじゃ行ってくる」
〈ソルジャー・シーカー〉の電源を補助電源からエグゾリウム・リアクターに切り替え、立ち上がらせる。
回収用に持ってきたホバークラフトに機体を接続し、海上を走らせた。
「……男子って、バカなの!?」
鈴はヘッドギア越しに頭をかき、愚痴った。
いや、自爆作戦だなんて聞いてないし!? あれはないでしょあれは! 絶対大会とかで映えることなんてないし!!
幸いなことに、もう大翔の〈ソルジャー・スナイパーカスタム〉の位置は把握済み。冷静になってロックオンする。
ランチャーから訓練用魚雷を発射し、最短航路で突撃。そして、魚雷とは別航路で〈ソルジャー・メイジカスタム〉を航行させる。
うまいこと、魚雷が囮になればいいけど……そう思いながらクロスボウに銛を装填する。
パッシブ・ソナーに着弾音が聞こえる。どうやらうまく当たってくれたようだ。
音の方に方向転換すると、魚雷を食らってHPを残り三割ほどまで減らした〈スナイパーカスタム〉が漂っている。
「これで、トドメッ!!」
レティクルが回転し、緑色の表示が赤く染まる。あたしは、トリガーを弾いた。
だが、銛は外れ、逆に〈スナイパーカスタム〉は撃ち返してくる。飛んでくる銛が、肩に、太ももに命中する。
『お得意の性格の悪ぃストーキングだな!!』
言い返してきた大翔は、更に魚雷を発射する。花弁のような軌跡を描き、四本の魚雷が私に殺到してくる。
「しつこい男子は嫌われるって、相場は決まってるよ!!」
デコイを発射して、そちらの方に魚雷に食いつかせる。十分に回避し終えてから、反撃の魚雷を打ち出した。
『うっせぇ、余計なお世話だ!』
そう大翔は叫び返し、大翔の水中銃が火を吹……かなかった。
『「え?」』
ガシャガシャと銃を動かしているうちに、魚雷が〈スナイパーカスタム〉に命中した。
『なんでジャムったんだよぉぉぉぉっ!?』
ぼふん、と気の抜けた音とともに、〈スナイパーカスタム〉のフロートが展開され、浮上していった。
「あー、大翔もやられたか……やっぱ自爆戦法はまずかったか……」
俺は、ホバークラフトに乗せられた一号機のコクピット内で、麦茶を飲みながらつぶやいた。
まぁ、最初から無理があったんだ。それを大翔が『問題ねぇ、俺がやられる訳ねえだろ?』と強引に押し切ったから実行に移した結果がコレだ。
もうアイツに作戦を立てさせるのはやめよう。アイツはうまいこと狙撃してくれるだけでいい。
にしても、時間差攻撃か……あれは避けるのが大変なやつだ。俺も真似して使ってみようかな?
《大和、少し話してよいでしょうか?》
いきなり画面が点灯し、ハルが話しかけてきた。
「うわ!? ハル、どうした急に!?」
びっくりした……何だよ急に……
《先程の話なのですが、星奈からは快諾していただきました》
……星奈、ちょっと待て、ちょっと話し合ったほうがいいんじゃないのかコレは!?
《ですから、大和の許可が出れば晴れて……》
「はぁ……わかったから、もういい……条件付きで許す」
星奈とハルの二人を同時に相手するのは骨が折れる。あの押しの強い二人を敵に回すのは正直愚かな選択だ。
《条件、とは?》
「学校、そして公共の場では今まで通りに接すること! 他にもなんかあるかもしれんからこの件は後日考える、以上!」
正直、学校のバカどもにいじられるのは嫌だからな。星奈も確実にそこは迷惑するだろうし、そこは確定として。
追加で考えること……なんだろうか?
次回予告
夏休みも終わり、二学期が開始する。二学期は勉強をもう少し頑張ろう、そう思っていた大和だったがなぜか暴徒と化したリア充撲滅委員会に目を付けられて……!?
捕まったらどんな目に合うかわからない、何としても逃げ切れ!
逃亡のchapter37、10月17日、午後六時~七時ごろ公開予定!!
薄氷は、まだ割れない。
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