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Chapter 35 The Sea, the Sky, and...――海中戦闘練習――

 あのディベートから数日。俺達は、海にいた。

 あのシリアスなディベートから帰還して、俺達を待っていたのは、『海で水中戦闘の練習するから、荷物をまとめろ』というメール。

 ……いや親切にありがとう、と言うべきなのは分かるけど、分かるけども! 星奈以外のパイロット全員(アメリカで療養中の光莉先輩含む)からメールが一気に来るのは何故なんだ!!

 ネイビーブルーの海パン、サンダルという出で立ちで、俺は砂浜の上に突っ立っていた。BN五機の輸送が遅れたため、俺達パイロット(+ハル)は海で遊ぶことになった。

 見てみると、龍三先輩はなんか遠くで高速クロールして、鈴は砂で城を作って、大翔は……なんか水鉄砲に水を入れて、凶悪な笑顔を浮かべてグフフフ……と笑っている。


「ん? 大和も遊ばないの?」


 後ろから声がかかったので振り返ると、そこには星奈がいた。


「まぁ、さっきちょっと泳いでもう満足かな……ん? 俺『も』ってどういう事?」


「ほら、あっち」


 星奈が指を指したほうには、護岸ブロックの上に腰掛けているハルがいた。


「別に水に入れないわけじゃないけど、沈むし砂まみれになるから嫌だって言ってあそこ陣取ってるんだよね……」


「あぁ……そういうことか」


 本人曰く、『生活用ボディは完全防水、完全防塵で地球上のあらゆる環境に適応している』らしい。

 深海に行っても大丈夫かどうかは知らんけど。

 突如、バッシャァァァァァァン! と水面を叩く音が、耳に届く。


「何だ!?」


 慌ててそちらを見ると、砂の城を水鉄砲で破壊した大翔が、鈴のドロップキックを顔面に受けて海にダイブしたようだった。







 一時間後、俺達は着替えて、水中用の総重複(俺と星奈はいつもの耐Gスーツ)になり、BNを輸送してきたトレーラーの前に並んでいた。


「よし。じゃあ今回の演習のルールを説明するよ」


 龍三先輩がズボンのポケットからメモを取り出し、読み上げ始める。


「チーム分けは、男子と女子で分かれてくれ。僕は参加しない。

 ルールはほぼ通常のデュエルと同じだけど、今回はHPがゼロになった場合、フロートが起動して強制的に機体を水面まで浮上させる。

 フィールド外に出てしまった場合も、フロートにより緊急上昇がかかる。回収は僕がやるから安心しておいてくれ。それじゃ、各自、乗り込んで!」


 そう言われて、俺達はそれぞれの機体に駆け出していった。

 見てみると一号機二型からはアークジェットが取り外され、その代わりに背中に大型のスクリューが装備されていた。

 ――あれじゃ、〈ストームブリンガー〉は、使えないな。まぁ水中じゃまともに振れない気もするけど。


 走りながらヘルメットを被り、背中のハッチからコクピットに滑り込む。

 イグニッションスイッチを押し込み、水中用のプログラムを走らせる。

 今回使える武器は、水中用のクロスボウが一丁、ハンドカノンが二丁、そしてダガー二本に〈ライキリ〉。


 本来メインアームにしている〈ストームブリンガー〉と〈ムラマサ〉は、水中では水の抵抗が激しすぎるから使えない。

 というか〈ストームブリンガー〉はフロートで回収するには重すぎるから、回収ができなくなるし。あれでも切れないようにするために軽量化しているらしい。

 パチリ、パチリとスイッチを弾き、準備を終わらせる。最後にヘルメットを被り、気密を確認してからバイザーを下ろす。


「ハル、行けるか?」


 ハルを呼び出し、問いかける。


《リアクター安定域。スクリューとのリンク、確立。システムオールグリーン、出れます》


「よし、じゃあ大翔、先に潜って指定ポイントに行っておくぞ」


 無線で、恐らくまだ準備中の大翔に呼びかける。


『あぁ頼むわ! 今やってる水中用バリスティック・データのダウンロードがあと二分くらいで終わるから、終わり次第俺も追いかける!』


「わかった。それじゃドルフィン4、出るぞ」


 トレーラーのロックを解除し、駐車場のアスファルトを一号機二型は踏む。

 立ち上がり、フェンスやブロックを破壊しないよう細心の注意をはらいながら、海に向かって歩く。


「うわ、砂のせいで思ったより滑る……」


 今まで、俺が戦った場所は森林や土のグラウンド。正直砂浜や砂丘、雪上のように滑るような場所は初めてだ。

 転ばないように慎重に機体を操り、やっとの思いで水のあるところまで入る。周りに人はいない。やっと自由に機体を動かせる。

 操縦桿とペダルに呼応し、一号機二型は水底を踏みつけ走り出す。

 だが。


「うおぉッ!?」


 思ったよりも砂がゆるく、派手にすっこけた。






 少し経って。俺と大翔は、海中の指定されたポイントまで到着した。

 カメラ越しに見てみると、〈ソルジャー・スナイパーカスタム〉も、多少武装が変化している。


 象徴的な武装である〈グングニル〉二丁は水中用の特殊砲に交換されて、両肩にあった〈トライデント〉は魚雷ランチャーになっている。

 この二つが外された理由は、水中じゃ撃てないから。水は空気の800倍の密度があるせいで、銃弾は数mで失速してしまう。


 ……待てよ、俺達水中じゃ大分弱体化しないか!?


 例えば星奈の〈テンペスト〉、〈サイクロン〉といった粒子加速砲は水中のエネルギー減衰のせいで使えないだろうし、あの翼は空中用で水中じゃ身動きが取れない。


 鈴もお得意の無人機を出して行う多方向同時攻撃は水中じゃ封じられるし、ミサイルも水中用のものにしないといけないだろう。


 光莉先輩の〈ブリューナク〉の放電攻撃も、自機まで巻き添えになるから多分無理だろう。

 龍三先輩は……格闘攻撃、水中で効果あるのかなぁ……


 ……やっぱ、BNは『陸戦』がメインなんだから、陸で戦うべきでしょ……


『それじゃ、演習を開始する!』


 龍三先輩のコールと同時に、火器管制システムのロックが解除された。


「行くぞ! 援護頼む!!」


 ペダルを蹴り、スクリューを始動させ加速する。


『オウ! 任せとけ!!』


 大翔の頼もしい返事を聞き、更に加速する。追加装備のソナーの反応からして、星奈達は三時の方向からのスタートのようだ。

 相手は陸よりかは弱体化しているが……油断は厳禁。それは俺達にだって言えることだ。


《大和、申し訳有りません。多少質問があるのですが……》


「ハル? どうした急に?」


《大和、あなたは星奈に告白され、OKを出しましたね?》


 !? 何言い始めたんだこいつは!?


「え? そそ、それがどうした?」

 

《私が聞きたいのは、私の立場です》


「はぁ?」


 訳が分からない。こいつは何を言い始めてるんだ?


《いえ、私は現在大和の部屋に住んでいます。そして大和は星奈と付き合っています》


「ま、まぁそれが現状だけど……それで?」


 なんか、嫌な流れだ……


《つまり、私は大和と星奈の『子ども』という認識でよろしいでしょうか?》


 …………

 こいつ、なんで今そんな事言い始めるんだよ……!


「知らん! 星奈に聞いてくれ!!」







 星奈は、鈴の〈メイジカスタム〉からデータリンクで送られてきたパッシブ・ソナーのデータを参考に、注意深く移動する。

 ソナーは、だいたいこの辺りからスクリュー音を捉えたはず。

 空だったらフェーズドアレイ・レーダーが使えるのに、水のせいで電波が飛ばないから外付けのアクティブ・ソナーを使わないといけない。

 あーあ、面倒。アクティブ・ソナーは超音波を照射し、跳ね返ってくる音で敵を探すタイプのソナーだから、こっちの居場所を相手に伝えてしまう。


《距離23、方位265に反応あり》


 〈ミカン〉からの報告を受け、反応があった方向に方向転換する。

 腰の後ろのハンドガン二丁を抜き、スライドの溝同士を引っ掛けてリロード。

 目を皿にしてスクリーンを見回し、どこに居るか探る。

 キラリ、となにかが光ったように見えた。私はそこの画像をズームさせる。ズームした画面に映し出されたのは、クジラも殺せそうな大きい銛を装填したボウガン。

 

「見つかった!?」


 まさか、拾ったのは相手のソナーの音!?

 こっちが気づいたときには、もう向こうは位置を掴んでたってことだったの!?

 舌打ちしながら飛んでくる銛を紙一重でかわす。視界の端に、役目を終えて会場に浮上する大砲が見えた。

 フロートの後ろには、大和の一号機二型が〈ライキリ〉を抜き、静かに構えていた。


「……やっぱ、そうでなくっちゃね!」


 私も〈エクスカリバー〉を抜き、一号機二型に突撃した。





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