Chapter8 Gladiator vs. Sniper, Dual Swordsman vs. Hacker
day:5/7/2035 sat
大翔は、森の藪をかき分け、走っていた。
後ろを追ってくるグラディエータに追いつかれないために。
「くっそ……アイツのせいで全部台無しだ……」
ことごとく張っていた罠をかいくぐってくる。
最初のハッキングを皮切りに、予め仕掛けておいたワイヤートラップやら地雷原やらもすべて、無力化されている。
質の悪いことに、ずっと追いかけ続けてくるから援護射撃が出来ない。
何なんだよ、あの青いやつ……赤よりも随分めんどくせぇ。
『ちょっと! 早く手伝いなさいよ!』
「出来たらもうやってるぜ! なんとか持ちこたえろ!」
叫び返しながら、〈グングニル〉をリロードする。
「さぁ、第二ラウンドの始まりだ!」
狙撃型を追って五分。なかなかアイツも逃げ足が速く、近接戦に持ち込めない。
ああ、アサルトライフルくらい持ってくりゃ良かった……いや、ショットガンのほうが近接戦じゃいいのか?
でもやっぱり……飛び道具使いづらい!
にしても……アイツふざけてるのか? 紫色の機体の方に漢字で『愛羅武勇』やら『夜露死苦』やら。センスは大昔のヤンキーかよ。
こいつにゃぁ銃は……そういやあったじゃん! 固定武装と使えないやつが!
「待てぇぇぇぇぇぇッ!!」
頭部20mmと腕部チェーンガンをフルオートでばらまく。
『待てと言われて待つバカが居るわきゃねぇだろうが、アホ!』
今度は逆に、スナイパーの機体が振り向く。
両肩と胸の装甲が開き、ガトリング砲が見える。
「え……?」
肩の二丁に、胸の二丁、そして頭の二丁。それらが一斉に火を吹いた。
「はぁぁぁぁぁっ!?」
ただの弾幕魔じゃねぇか! 何がスナイパーだ!
必死に弾幕をくぐり抜ける。
「ハル! どこがスナイパーの弱点が接近戦なんだ! 近づいても集中砲火じゃねぇか!」
《あいにく、こうなることは予想していなかったので》
「じゃぁどうすりゃいいんだよ!」
《それは……離れればなんとかなるでしょう》
「離れたら狙撃されるだろ! もっとマシな解決策募集中!」
《…………》
まただ。また都合が悪くなったらだんまりを決め込む。これがハルの悪い癖だ。
そう言えばAIに癖なんてあるのか?
そんなことを思いながら、左腕のワイヤーガンを崖に打ち込む。打ち込んだワイヤーを支えに、壁を走る。
「もう一丁!」
更に、弾幕魔の右肩にワイヤーを打ち込む。
「うぉらぁぁァァァァァッ!!」
〈ストームブリンガー〉を突き出す。肩の関節に命中した大剣は、敵の右腕を奪い去った。
「あーもう、どこ行ったのよ!」
星奈の二号機は、森の中で二刀を構え、左右を見渡していた。
どれもこれも、ソーサラーが消えたせいだ……! ちょこまかと逃げ回って、ほんとどこ行ったの!?
「ったく……迷彩マントなんて面倒なの積んでるせいでどこ行ったかわかりゃしない……こ
れ、やっぱり片方しまったほうがいいかも」
〈カリバーン〉を後ろに仕舞い、代わりに腰の40mmハンドガンを引き抜く。
本来ハンドガンは主兵装ではなく副兵装として、弾切れに備えて持っているもの……なんだけど、私の場合、主兵装が剣だからその心配はない。
問題なのが遠距離での銃撃戦。それに持ち込まれたときに固定兵装しかなかったら不利すぎる。
だから射程は短くても、一撃必殺の遠距離攻撃で、しかもすぐに近接戦に入れるように片手で扱える武器……ハンドガンが必要。
でも……レーダーにも引っかかんない迷彩マント使われちゃ意味がないよ!
「まって……たしかアレの弱点って……」
私は、あることに気づいて林にハンドガンを向ける。
水平に一凪。合計七発の弾丸は、森を鮮やかな蛍光ピンクに染め上げる。その中に混ざる、異物。
けばけばしいピンク色の塗料をぶちまけられた、マントだ。
スクリーンを駄目にしてしまえば、どれほど高画質な映画でも意味はない。
「みーつっけたぁッ!」
「え?」
心臓が止まるかと思った。そう鈴は思う。
とっさにマント越しに『盾』でペイント弾を防いだら、マントにペイントがこびりついた。
それも、よりによって蛍光ピンクの。
もう迷彩もクソもない。そう判断してマントを剥ぎ取り、左腕の『盾』――〈アイギス〉を起動させる。
それは、機関砲と盾をつけた、手甲鉤。
元ネタはイージス艦の〈イージス〉と同じ北欧神話に出てくる盾……らしい。盾じゃないのに。多分名前考えたときにネタ切れだったんだろう。
たしかあれはメデューサの頭をくっつけてるだけで、直接的な攻撃力はなかった気がするんだけどな……? それにこれ、防具よりも武器としての側面のほうが強い気がするし……
聞いた限り、大剣が〈ストームブリンガー〉、双剣が〈エクスカリバー〉と〈カリバーン〉、狙撃砲が〈グングニル〉……開発者はヲタクなのだろうか? ネーミングセンスがない。
「まぁ……あたしも同じようなもんだけど、使わせてもらいますよっと!」
マントを強制排除して、低い姿勢で地面を駆ける。
「もらった!」
左腕のアッパーカット。それが二刀流……仮にコードネームを〈ムサシ〉にしようか。
その機体の右の方の剣に、クローが食らいつく。
ミシミシと、剣から音が立っている。
当然だ。剣の弱点である真横を叩けばどんな名刀でも容易く折れる。
躊躇はいらない。トドメを……
「うあぁッ!」
な、何が起きたんだ……?!
一号機の〈ストームブリンガー〉が狙撃型(っていうかあれどちらかと言うと銃撃型……?)の肩を断ち切った。
それと同時にやつの持っていた狙撃砲が火を吹き、『破損』判定されたため一号機の左腕が使い物にならなくなってしまった。
いや……『火』を吹いたわけではない……?
なんだか、こう……なんて言えばいいんだ? 火ではない。なんだか雷といったほうがいい気がする……?
《状況から攻撃を推測。発射時に発生したプラズマや轟音、そして弾痕からしておそらく電
磁投射砲の類と予想されます》
「電磁投射砲……? なにそれ」
え? プラズマ? 電磁? なにそれ?
《簡単に言えば〈レールガン〉です。弾丸の速度は推定マッハ7。これはこちらの滑腔砲よりも時速約千kmほど上回っています》
〈レールガン〉......! SFのロマン兵器じゃないか!
「え、待って? レールガンってSFの武器じゃなかったっけ?」
《いえ。2030年にすでに実用化されています。現在自衛隊では超極音速ミサイルの迎撃などで……》
「いや、それはいいから! レールガンに弱点とかないの?」
弾幕をかわしながら、マイクに向かって声を張り上げる。
くそ……片腕がもげたから〈ストームブリンガー〉をうまく振れない。遠心力で腕ごと持っていかれそうだ。
《レールガンの弱点は、発射の際に通常の火砲より砲身の消耗が激しいのと、発射に莫大な電力がかかることです。ですから連射には時間がかかると推定されます》
「ホントだな?! ホントなんだな?! 信じるぞ!」
そんなこと言っている間にも、火線はどんどん飛んでくる。
「くそ……どうすりゃいいんだよ!」
もっと……もっと速く動けたら……!
どうも、しろくろねこです。前回のシリアスな過去編からもどりまして、大和たちの模擬戦となっております。
あんまりにもシリアスになりすぎたのは申し訳ございません! 最近のネット小説では軽いものがウケる――そのことは理解しています。ですが、「シリアスな話もやった方が良くないか?」そう思ってやったらああなりました。
では、また来週!




