11.読者 ロスト
「ねぇ、まだ着かないの?」
僕たちは延々と続く山道を歩いている。
本当に延々と続いている、森を爆発させた事なんてもう忘れてしまうくらいずっと歩いている。
「黙ってください、今、私は言い訳を考えています」
言い訳?なんの言い訳だろう、言い訳することなんてあったかな
まぁでも……
「大丈夫、僕は言い訳をするのが得意なんだ」
「……そうですか、そうですね、そうしましょう」
心配なんてしなくていい、何の言い訳かは知らないが、人生なんて意外と何も考えなくても前に進むものだ。
「で、まだ着かないの?歩き疲れた」
「……自分で歩いてないのによく言えますね」
ミラは僕が寝転んで乗っている大きな黒い猫に目を向ける。
そう、僕はデカブツ君、には乗りたくなかったので
僕のペット、いや、使い魔?のレイさんに乗っている。
「いやまぁそうか、じゃあ待ち疲れたんだけど〜」
「……後少し待っててください、暇なのであれば大ユグドラ六法全書もありますが……」
そう言って、ミラはめちゃくちゃ分厚い本を出してくる。
「それは……いいかな」
法律、それは僕が一番嫌いな二文字だ。
知らなくても、生きてるしね。
「そうですか……」
というか、なんでそんな悲しそうなんだ
逆に、それで喜ぶと思ったのか
法律の本で喜ぶ人とかいない、よな?
「私のイチオシの本だったんですけど……」
分厚い本をじっと見つめるミラ
その眼は悲しげで、何処か寂しそうだった。
「……いや、なんか読みたくなってきたな」
僕がいたたまれなくなってそう言うと
「そうですか!面白いですよ」
表情が明らかに明るくなって、僕に本を差し出す
まぁ読んでみると、意外と面白いかもしれないしな
差し出された本を受け取ると、ずっしりと重い
何ページあるんだ、これ
「私のおすすめはですね、1078のページのドジャランゴの扱いのところなんですけど……」
「ハハ、まぁそこまで読めるといいね」
あまり気が乗らないまま、本を開く、まぁ僕は本を読むのは割と好きだし、法律の本は初めてだけど意外と読めたりするんじゃないだろうか……
※
「ねぇミラ、ここの魔術社会論の変形についてなんだけどさー」
※『魔術社会論』魔術を高尚で特別な物であると捉えた前時代の思想に異を唱え、魔術を社会と紐づけていこうと考える論
「ああ、そこは……結構曖昧に書かれてますよね、少し前のページに書かれている、前エルフ王のハーヴァル帝王が出したエーテル管理法があるじゃないですか、それをきっかけに魔術と社会を切り離そうという思想が広まった時期があったんですけど、現女王に変わった時にエーテル管理法が廃止されて、その思想も消えたって話です、まぁ正確には完全に消えたというわけではないんですけど……そこら辺の流れというか、ハーヴァル帝王関係はちょっと色々あって書きづらいんですよね」
※『エーテル管理法』魔力の源であるエーテルを管理するために、魔術を発動するという罪を制定した法律
「色々あった、そこも知りたいんだけど難しいよなー」
「まぁそうですね、女王様に聞けば答えてくれるかもしれません」
「そっか、聞いてみようかな」
……大ユグドラ六法全書、思いの外、面白かった
てっきりただ法律が羅列されているだけの本かと思ったら法律はもちろん、その法律が生まれた経緯や詳細を当時起こった事件や出来事を交えて説明してくれている。
というか、ほぼエルフの歴史だな、第一次エルフ革命とか普通に熱かったし
革新派と保守派の抗争とか
謎の侵入者にユグドラの秘宝が奪われた事件とか
ほんと色んな事件があって面白かった。
これでまだこの本の半分も読めてないというのが信じられない
「……ねぇ、この本、欲しいんだけど何処で買えるの?」
欲しくなってしまった、この本はユグドラについたら返すのだから、自分の分が欲しい
あんなに乗り気じゃなかったのが嘘みたいだ。
面倒でも試してみるのは良い事なのかも
「欲しいのでしたら差し上げますよ」
「え、いいの?……でも悪いよ」
「いえ、この本を気に入ってくれる人はなかなかいないので、気に入っていただけたのなら差し上げます。」
まぁ確かにこの本の良さがわかる人は少ないかもね、面白いんだけどなぁ
気持ちは嬉しいけど、流石にタダで貰うのは悪い
それに……
「でも君が読む分がなくなっちゃわない?」
「ああ、それは本当に問題ないです、私の家にあと3冊あるので」
ガチ勢すぎる……まぁそうなる気持ちもちょっと分かる。
この本は面白い、分厚くてとっつきにくいのがネックだけど
「そうなんだ、じゃあありがたく頂くよ」
何かお礼にあげたいけど、あげるとしたら本だよなー
でも、今、渡せる本がないんだよな
……まぁ考えておいて、帰る時とかいつか渡そう
「さて、着きましたよ、ユグドラに」
「え、早くない?」
「そんな事ないですよ、時間通りです」
僕は自分が思っていたより、本に熱中していた様だ
まぁ結構あるあるではあるんだけど
今まで登ってきた山が小高い丘のように見える
前は、山なんて登らなかったからかな、気づかなかった。
でっかい山をくり抜いてできたような国。
思ったより、というか前来たときとは全く違う
美しく洗練された、石造りの都市
都市を彩る神秘的な空気に潤された植物、先ほどまでの荒れ果てた森とは比べ物にならない
そして、中央に位置する大樹、あれは……
「世界樹、ですね」
「あそこに、あの樹の中に女王様がいらっしゃいます」
樹の中?世界樹の中って入れるのか、というか入っていいのか?
「では、向かいましょう、後少しです」
そう言って、僕たちはエルフの女王にもとへ向かった。
よし、やっと極楽鳥の毛布がもらえる。
大ユグドラ六法全書に出会えただけでお釣りが出たようなものだが、本命はこっちだ。
にしても、極楽鳥の毛布を餌にして釣るなんて、何があるんだろうな
話を聞く気なんてないけど、ちょっと気になる
まぁ軽い話くらいだったら……聞いてみようかな
孤宵です
ここまで読んでいただきありがとうございました、もしよろしければ
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