【人】狐疑(こぎ)
人が人を疑う。
そりゃ、そうだろう。
人が狐を疑う。
そりゃ、あんまりだぜ。
人は嘘を吐く生き物だ。
狐も確かに、嘘を吐く生き物だ。
でもな、俺たちは自分のためだけに嘘を吐く。
お前さんたち人間は、自分のためと言いながらも、
他人のために無駄な嘘を吐く。
例えばここに、「愛している」という嘘が在る。
これを、お前さんはどう使う?
俺ならば、俺に向かう愛以外に興味が無いからして、
八面六臂に愛を囁く。
狐を疑って正解じゃないかって?
だから言っているじゃないか。
俺は、俺のために愛を囁くのだ。
こんなにも方向性が明確なのだから、
疑われるのは心外だ。
あぁ、解かっている。
愛とは、他者に向けるべきだと、
そう言いたいのであろう。
それならそれで万々歳さ。
お前さんが如何に、愛を知らぬかが浮き彫りになっただけだ。
〝愛〟とは〝自分〟だ。
〝嘘〟とは〝他人〟だ。
あべこべなのだよ、なにもかも。
目の前に最愛がいるなら、なぜ嘘を吐く?
目の前の他人など、適当な愛を囁いていれば双方満足ではないか。
それだけ。
それだけなのだよ。
だからお前さんは、愛の意味を知らぬと言っているのだ。
〝愛〟とは〝自分〟だ。
〝嘘〟とは〝他人〟だ。
あべこべなのだよ、なにもかも。
いよいよ気付いたかい?
他人の言葉で揺れ動く愛など、
自分自身につく嘘よりも意味がないのだよ。
真に自分を愛している者は、
他人の嘘に惑わされたりなどはしない。
真に自分を愛している者のつく嘘は、
容易に真実へと化けるのだ。
嘘も方便と言い聞かせて生きている。
結局、誰しもが自分すら信じられない。
だから、狐すら疑ってしまう。
臆病風の成れの果てさ。
自信のない自分のために、
他人からの愛が欲しいのだ。
それが例え……嘘だとしても。
狐につままれた気持ちで聞くと良い。
〝愛〟とは〝自分〟だ。
嘘など無いのだ。
お前さんが自分自身を愛したゆえに、
嘘が芽生え、他人が花開くのだ。
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【※この先は、作者による作品解説です。
自己解析・自己考察を含みます。
読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】
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狐の説法という設定から入り、自由気ままに喋らせてみたら、こんこんと説教されました。
ただまぁ、言っていることはあながち間違いではないのかなと、作者も思いますね。
自分自身をしっかり愛せていたならば、他人を疑う理由もないですし、そもそもの興味が薄い。
先ずは狐さんくらい、自分を愛してあげるのも、良いのではないでしょうか。




