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あなたに読まれたい  作者: 三軒長屋 与太郎


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18/27

ごめんね


初めまして。

三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。


挿絵(By みてみん)



 私はその日、『ごめんね』とだけ書かれたメモを拾った——


 今考えてみても、なぜこんなものを持ち帰ってしまったのか分からない。

バイトの帰り道、バス停のベンチに、ぽとり……と。

そこそこに田舎だから、私の他に待ち人は居ないし、

そもそもこの風の中、どこから飛んできたのかも分からない。

ただなんとなく……この『誰かに届かなかったごめんね』が、

もしくは『届いたうえで捨てられたごめんね』が、

いたく気に入ってしまったのです。


バスの中でもずっと、拾ったメモを見つめ続け、

小屋のようなアパートに帰ってきた。

小さなテーブルの上に、そのメモを置く……お守りのように。

そしてまた、ずっと見つめる。


頭の中には、様々な人間ドラマが行ったり来たりしている。

ありきたりな恋愛……

それも、若いカップルと、おじいちゃんおばあちゃんとでは、

物語の色味が変わる。

メモに書かれた『ごめんね』を見る限り、

年齢は若そうだ。


次に、友人関係。

職場の同僚でも可。

先輩後輩であれば、年下側から『ごめんね』は考えづらいし、

年上側からしても、男性であれば無理がある。

女性なら……ギリあり得るか。


後はまぁ、家族関連だけれど、

正直これはごめん被りたい。

別に、私の家族関係がうまくいってないとかではなく、

なんだか単純に詰まらない。

せっかくミステリアスなメモを拾ったのに、

〝家族〟となればしっくりき過ぎてしまう。

私はもっと、この一枚の『ごめんね』に、

深く、おどろおどろしい意味を持たせたいのだ。

歴史を含ませたいのだ。


そんな私の理想を裏切るように、

いま一度見直した『ごめんね』は、どこかスッキリしている。

物語に必須な汗や涙……

ましてや、展開を加速させる血痕もない。

「『ごめんね』と書いて提出するように」と、言われて書いたかのような、

凛々しい顔をしている。


私はなんだか、このメモへの愛着心が薄れてきた。

そこで、ぎゅっと目を瞑り、想像してみる。

私が『ごめんね』を書くとしたら……

やっぱりバイト先の同僚か。

菓子折りなんて畏まったものじゃないけれど、

お菓子とかをラッピングして、その中に忍ばせて……。

でもそんなんじゃちっとも詰まらない。

もっとこう、この退屈な日々を払拭させてくれるような……

この一枚が世界情勢を狂わすようなドラマを……。


そうして私は、自分自身の中の『ごめんね箱』を漁ってみる。

今までで、伝えたけど届かなかった『ごめんね』。

そもそも、伝えてすらいない『ごめんね』。

……自分でもビックリするくらいに、『ごめんね箱』の中はいっぱいだった。

掘り返すのが大変なくらいに、びっしりと詰まってた。


 ごめんね——

私はこんなにも、伝えられていなかったんだ——


そう思った瞬間、目の前の『ごめんね』は、

ただの紙切れになった。

さっきまではミステリーで、希少価値があって、とっても神秘的だったのに、

よく考えてみれば、私はもう、たくさん持っていた。

こうも需要と供給が崩れてしまえば、価値なんて創造しがたい。


なんであれば、嫌悪感すらある。

そりゃそうだ……これはバス停に落ちていたメモ。

〝ばっちぃ〟たらありゃしない。

こんなものを、普段ご飯を食べたりなんかするテーブルの上に置くなんて、

私もどうかしてたんだな。


 『ごめんね』を摘まみ上げ、ごみ箱に捨てる。

きっと、私の中に降り積もった『ごめんね』が、

自分勝手なシンパシーを感じただけ。


 『ごめんね箱』を、そっと閉じる。

過ぎ去った過去の『ごめんね』なんて、無意味な産物。

本当はこれもゴミ箱に捨ててやりたいけど、

それをやると、人間としてのなにかを失うのであろう。


 ごめんね——

これからは、そのときに、ちゃんと伝えよう……

メモに書いても、落としちゃったら意味がないから——



お読みいただき、ありがとうございました。

誤字・脱字に関すること、細やかな評価や感想をいただけますと、励みになります。


【※この先は、作者による作品解説です。

自己解析・自己考察を含みます。

読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】











——————————


今作品は「『ごめんね』と書かれたメモを拾う」というワンアイデアから、物語を走らせながら膨らませていった作品です。

ですので、作中で〝私〟が「この一枚の『ごめんね』に、深く、おどろおどろしい意味を持たせたいのだ。」と言ったのは、作者の声ともマッチしています。


なんて作品なので、正直『ごめんね』に対する深い意味は無かったりもします。

ただただ、最後に書かれた『これからは、そのときに、ちゃんと伝えよう』が全てです。

しかし、副産物がありまして、すごく大事にしてたり、ひどく好きだったものが、急に無価値になる瞬間って、誰しもが経験あるのではないでしょうか。

男の子だったら、変わった形の石ころとか。

女の子はちょっとわかりませんが、キラキラのラメのシールとかですか?

とにかくまぁ、書いていてそんなことを思い出しましたね。


そんな感じで、自分の中に芽生えた『ごめんね』も、一度飾ってしまうと、そこからは価値が下がっていくだけで、そしていつか、ごみ箱に捨てるか、心の中の『ごめんね箱』に仕舞われるのでしょう。

だからやっぱり、ちゃんと、そのときに、相手に渡してあげましょう。なんてね——

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