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04 ゴブリンロード

 なんだ、何が起きた。

 カノンとかいう訳の分からねぇ奴がたった一言、『撃ち放て』と唱えただけで目の前が綺麗に吹き飛びやがった。


「はっ、面白くなってきたじゃねぇか」


 まぁ、いい。こいつの命令を聞くのは癪だが従ってやるとするか。


「おい、チビ行くぞ」

「チビじゃないと言っているだろう」


「この道が閉じねぇ内に行っちまわねぇと、なっ!」


 一気に走り出したのはいいが__なんだ?体が軽い。身体強化か?

 チビも驚いてやがる__ってことはこいつもか。


 後ろに薄気味悪ぃ笑みを浮かべてやがる奴が1人。

 ……あいつ(カノン)の仕業か。


 たった今あんな馬鹿げた魔術を繰り出したばかりなのに、俺等の身体強化をする余裕まであるなんてな。

 あいつは、何者だ?__いや、今はゴブリンロードだ。


「私は左をやる。ナルシストは右をやれ」

「あぁ?誰がナルシストだ、あ?」


 俺の顔が良すぎるからって妬みは良くねぇな。


「……斧術・栗花」


 まじか。あのチビが斧を振り下ろしただけで地面が割れやがった。なんてパワーだ。

 まぁ、肝心のゴブリンロードは防いだみてぇだけどな。


「おい!何防がれてんだ、ちゃんと殺れやぁ!」

「人のことより自分の相手に集中しろ!」


 わーってる、よっ!

 ゴブリンロードが右手の棘付き巨大棍棒を振り回してくる。

 当たったらひとたまりもねぇだろうな。

 ゴブリンロードが交わされた棍棒の勢いを活かしてもう一発横からさっきよりも威力のでかい攻撃が来る。


「どんなに凄ぇ攻撃でも当たんなきゃ意味ねぇよ!」


 横腹に隙!あそこを鎌で一発__。


 ゾワッ__。

 ほぼ、何も考えずにバックステップで距離をとっていた?

 なんだ、今の寒気は。

 ゴブリンロードの攻撃も止まって__いや、ゴブリンロード自体が動かくなってやがるのか。

 周りを確認したかったが、それよりも速くゴブリンロードの攻撃が再開しやがった。

 さっきと同じ大きな横振りか。つまんねーな。

 もっとレパートリーねぇのかよ。


「それはもう見切ったぜ」


 振り終わった瞬間に背後に回りこむ。

 躱されると思っていなかったのかすんなり背後に回れた。

 ゴブリンロードが振り向くよりも速く鎌を大きく横に振り、足の切断を行うと、辺りにゴブリンロードの血が飛び散った。

 そのせいで服が汚れたが、今はそれどころじゃねぇな。


「ウォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」

「痛いか?ざまぁ見やがれクソモンスタァァ!」


 上から鎌を振り下ろす。……左手の盾で防がれたか。


「が、それも想定内だ」

「グォ゙?」


 振り下ろした時の反動で体を宙に浮かし鎌を持ち上げ振り被る。

 ゴブリンの上位互換程度が立派にでけぇ武器と盾持ってんじゃねぇよ。

 使えなきゃ意味ねぇだろうが。


「黒縄地獄」


 黒い残像を残しながら振り下ろした一撃はゴブリンロードの脳天を貫いて真っ二つになっていた。

 普段ならもっと手こずるはずなんだがな……。

 あいつの身体強化のおかげか__?


「終いだ、まぁまぁ楽しかったぜ」


 身体強化はここまで強化されるのか?少なくとも俺の知ってる身体強化は少しステータスが上がるくらいだ。

 チビも終わったみてぇだな__あ?


「おいチビ、なんだそのグチャグチャしたものは。何を持ち込みやがった、てかゴブリンロードどこ行った」

「何を行っているんだ、ここにあるだろう」

「その、グチャグチャしたものがゴブリンロード__だったものか?」


 「あぁ、そうだ。普段鍛えている筋肉を酷使して斧を振りまくっていたらこうなったんだ。はぁ、生き物とは脆いものだ」


 何言ってやがんだこいつ。化け物か?


「おい、変態(カノン)の助けに行くぞ」

「あぁ、了解__ん?」

「あ?どうした、__は?」


 さっきまでいたはずのゴブリンはどこだ?

 それどころか、さっきまであったはずのゴブリンの小屋も、木も、拘束されていた人々も、埃さえも、何一つねぇ。

 カノンは__あそこに倒れてやがる。


「チッ、だから1人はやめとけって行ったんだ!」


 向かおうとした途端チビが俺の進行方向を手で塞ぎやがる。


「おい、邪魔だ。あいつが死んでもいいづてのか?」

「違う。よく見てみろ」

「あぁ?」


「スー……ピー……、スー……」

「……こんなところで寝てるわけねぇし、寝れるわけもねぇんだが、一応聞く。寝てねぇか?」

「あぁ、寝ているな」


「ん__あれ?もう終わったの?てか無傷?ゴブリンロードなのに?キモ」


 もしも、こいつが俺等のゴブリンロードを倒すスピードとよりも速く大量のゴブリンを倒したのなら。


 「「カノン/てめぇに言われたくない」」


 こいつは本物の化け物だ。

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