03 戦闘開始の合図
「てめぇ、索敵魔法使えたんなら言えや」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇよ」
あら、それは失礼。
「……ん?」
「どうしたんだ?もしや、足を痛めたか?」
「疲れたとかぬかしやがったら切るぞ」
「その大鎌で__?じゃなくて、敵の数なんだけど」
「なんだ?30より少ないのか?」
「その逆」
「多いの」
「群れは多い方が私は嬉しいぞ!沢山戦えるからな」
脳筋すぎない?確かに沢山いたほうが楽しいけど。
「多分だけどこの数は群れじゃないと思うんだよね」
「あ?どういうことだ」
「まぁ、見てみればわかるよ。どうせもうすぐ着く」
この辺だと思うんだけど__見つけた。
「……おい、これは__」
「うん、ゴブリンの村だよ」
「ナルシスト、カノン、あれを見ろ」
「誰がナルシストだこのチビ!……は?」
2体のゴブリンが運んでくる檻の中には人がいた。
「ゴブリンは人間をペットとして飼うやつも少なくない」
「おい、ゴブリンは何体いる」
怒っているのか。
正直、こんなのも何とも思わない血も涙もない奴だと思っていたから意外だ。
「残念だけど、わかんない」
「あ?索敵魔法使えるだろうが」
「数が多すぎて数えるの面倒くさいの!」
索敵魔法は術者にしか見えない地図の上に黄色い点が魔物の数だけ現れる。
黄色い点は強ければ強いほど大きくなり、タップすれば種族名がわかる優れものだ。
こういうのはちゃんとしている術者なら数えるんだろうけど、私は面倒くさいからやらない。
「それに見て、あそこにゴブリンロードが2体いる。珍しいね」
「あぁ?!クエスト内容はゴブリン討伐だ、ゴブリンロードがなんでいやがるんだ」
「もしや__クエスト内容の偽装、ってことか?」
「鋭いねアリス」
数が多ければ多いほどクエスト報酬は上がっていく。
売るものもなく、自給自足で生活しているあの村じゃ金がないのも理解できるが__。
これは最悪、命にも関わる。
魔物の強さはランク付けされている。
E-からS+まであり、ゴブリンロードの強さはB-。
中規模パーティーが、2つあってようやく勝てるぐらいだ。
「おい、どうする」
「とりあえず先にゴブリンを_いや、ゴブリンは私が全て受け持つ」
「あ?てめぇ、こんな時に何冗談抜かしてんだ」
「雑魚だけでしょ?余裕、余裕」
ゴブリンのランクはD-。そんな雑魚にこの私が負けるわけなくない?
10分で終わらせてやるよ。
「……ならば、私達はゴブリンロードか?」
「おい、てめぇ本当に数えられねぇ程のゴブリンをこいつに殺らせる気か?こいつが強いかもわかんねぇんだぞ?」
「索敵魔法が使える魔術師は上位の者だと聞く。大丈夫だろう」
「……わかった。だが、それでこいつが死にそうになっても俺は助けねぇ」
どうぞお好きに。
ゴブリン相手に殺られそうになったって言われるぐらいなら死んだほうがマシ。
「じゃあ私が最初に道を作るからその間にゴブリンロードがいる場所まで攻めてね」
「あぁ、了解した」
「俺に命令すんじゃねぇ」
「3秒後に打つ。任せたよ?ノエル、アリス」
二人が静かに頷く仕草がかっけぇ。
頼りになる感半端ねぇ。
……1、0。戦闘開始。
『撃ち放て』
途端、私の目の前に大きな魔法陣が出現し、炎が光線状に放たれた。
「……良い眺め」