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31 スタンピード

「なんっで!てめぇは!そんな大事な事を!今伝えるんだぁぁぁぁぁぁ!」


 のどかな昼下がり、人が行き交う道にノエルの(叫び声)が響いた。

 何だ、何だ、と周囲の視線がノエルに集まる。


「ちょっとノエル、うるさぁーい」

「てめっ__誰の所為だとっ__! オラァ!何見てんだ?見せもんじゃねぇぞ!」


 ノエルの殺気を帯びた目に、虫のように群がっていた人々が、四方八方に掃けたいった。

 商店街での大声、歩行者への威嚇。

 配慮に掛けたノエルに、虚の目をしたアリスが告げた。


「ノエル__迷惑、という言葉を知っているか?」

「てめぇは殺されたいようだなぁ?」


「何故、そんなに慌てているんだ? 珍しいな」

「チッ__逆に、何でてめぇはそんな静なんだ? 世紀の大災害、()()()()()()()()()()んだぞ?」

「先程カノンから聞いた。 弱い魔物が8割を占めるらしいではないか。 ならばそう焦る事でも無い」


 斧を一振りしてスパッだ、とアリスはパフェを頬張りながら、隅々まで手入れされた自分の戦斧を一瞥した。


「お前なぁ……雑魚は雑魚でも1000や2000いれば十分な脅威になるんだぞ?」

「残念ながら、私は量より質派だ」

「てめぇ……さっきパフェ頼む時、量は少ないが世界でも認められてる絶品パフェか、量の多いちょっと微妙で有名なパフェで迷って、後者を即決してたじゃねぇか」


「それとこれとは話しが別だ」

「一緒だよっ!」

「仲良いねぇ〜? 2人の世界はいっちゃって!」


 ドォォォン!


「っ、なんだぁ!?」


 慌てる者、パフェをひたすら頬張る者、ニヤつく者、そんな混沌とした(カオス)空間は、空気を振動させる爆発音によって壊された。


「爆発があったのは西の正門か」


 まさか、とノエルとアリスはカノンを見た。

 カノンは驚きつつも、2人の疑問に答えるように頷く。


「スタンピードだ」

「おい! さっき、7日後に来るって言ってたじゃねぇか!」

「予知だって、そんな正確なもんじゃないんだよ」


「っはぁ?!」

「何千年、何万年ある過去、未来。 森羅万象をその身に宿し、有象無象の歴史の中から近々起こる事を視る、それが予知」


「予知は神の理を背く行為だ。 当然、エネルギー消費が激しいし、細かく絞ろうとすると寿命を持っていかれる」


 これがカトリーナの限界だよ、とカノンはどこか遠くを見つめながら呟いた。

 その声色は感情を感じさせない、いや、色々な感情が混じっりあってよく分からなくなった無の声だった。


「だから使いすぎるなとあれほど……」


「カノン、哀愁を漂わせるのは後だ。 西に、向かうぞ」

「うん、ごめん。 じゃあ行こうか!」

「ふむ、競争するのはどうだ?」

「てめぇはバカか? 俺には翼があるんだぞ?」

「そんなこと言ったら、私は魔術で飛べるもーん」

「む?! わ、私は、鍛え上げた足の筋肉があるぞ!」


 疎外感を感じたアリスが必死に絞り出した答え。

 それが何気に一番速いのでは、とカノンとノエルはアリスの筋トレメニューを思い出しながら渋い顔をした。


 空を飛んでいるのに、負けたら面目がつかない__!

 カノンとノエルの考えがピタリと一致した瞬間だった。


「いや、今から大量の魔物と戦うんだ。 全力すぎると体力の消耗が激しいからな? な?カノン?」

「そそそ、そうそうそう! 急ぎつつ温存しながら向かうってのが一番いいんじゃないかなー、」

「む?そうか? とりあえずはやく向かうぞ」


 そうしてアリスは西の正門に向かって走り出す。

 それにノエル、カノンと続く。


「「あぶねぇ……!!」」


 3人の内、2人が安堵がため息をついている事はこれから何十年も秘匿される事実となった。

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