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特別な話~祝!PV50万記念!イヤッフゥー!~








































「――――――やあ、来てしまったのか。好奇心旺盛な事だ。・・・・・・いや、別に悪口を言っているつもりはない」


 暗い暗い空間の中、黒ローブはただ一人、そこにいる。


 そして、誰も居ない空間の中、ただ一人、話し続ける。


「ここに来てしまったからには、私も話す必要があるのだろうが――――――後悔はしないでくれよ?」


 誰もいないというのに――――――いや、誰も『見えない』というのに、黒ローブは話す。


 聞いてくれる人など、誰もいないのに。























 ゴッ、ゴッと鈍い打撃音が聞こえる。


 少年が、最後に蹴りを放った男に馬乗りになり、その顔に拳を打ち続けていた。


 男の顔は醜く歪み、顔中が複雑骨折している事が分かった。


 少年は、ただ無機質に、無表情に、拳を打ち続ける。


 その瞳には生気と呼ばれるものは感じなく、何かに命令されて行動するロボットのようにも思えた。


 そんな少年を見つめる者が一人。


 突然の少年の変化に驚き、あまりの変化の仕方に怖がり、それでも目を逸らそうとしない勇気。


 いつも少年の周りをうろついていた、少女。


 普段の能天気な表情は強張り、少年を恐れているようにも見えた。


 少年はそんな少女の視線にすら気づかず、ただ男に拳をぶつける。


「――――――もう、いいよ・・・・・・」


 少女は、呟く。


「もういいから・・・・・・」


 少女は、力の入らない身体に鞭を打ち、ゆっくりと立ち上がる。


「それ以上やったら・・・・・・!」


 そして、ふらふらと倒れそうになりながらも、少年にゆっくりと近づく。


「それ以上やったら、その人・・・・・・死んじゃうよ・・・・・・!」


 最後に力を振り絞るように少年の背中に抱きつき、男に振り下ろされる拳を妨害する。


「――――――離せ」


 少年は、その妨害を振りほどこうとする。


 その声は、酷く無機質。


 感情が、一切こもっていない声。


 少女は、そんな少年の声に怯えながらも、少年を離さない。


「なんで、そんな事するの・・・・・・!?もう十分じゃない!」


「・・・・・・」


 少女の問いに対する答えは、沈黙。


「――――――あうっ」


 少年が振りほどこうとする行為に力を込めたため、少女の拘束は簡単に解かれる。


「――――――っ!」


 少女の悲しみと疑問に揺れる瞳を見た瞬間、少年の瞳に生気が戻る。


「俺は・・・・・・一体・・・・・・」


 状況が分からない、といったように辺りを見回す少年。


「誰だ・・・・・・コイツは・・・・・・」


 自分が馬乗りになっていた男を一瞥し、呟く。




 そして。



 自分の、掌を見て。


「誰の血だ・・・・・・コレは・・・・・・!?」


 男達の血と、自分から流れた血で真っ赤に染まった掌を見て、呟く。


「俺は一体・・・・・・何をした・・・・・・!?」


 辺りが、真っ赤な液体で濡れている。


 それは男達に殴られた少年の血であったり、


 男達から流れた血であったり。


「龍ちゃん・・・・・・!!」


 そして、己に抱きつく少女。


 こんな血まみれの身体を気にせず抱きついてくる。


 このままじゃ少女にも血がついてしまうだろうと思い、少女を一旦離すため、少女の両肩に手をおこうとして、



 ――――――殺せ――――――


「・・・・・・っ!?」


 どこからか聞こえてきた声に、思わず耳を塞ぐ。


 ――――――殺せ――――――


「誰だ・・・・・・!!」


「龍ちゃん・・・・・・!?」


 少年の突然の行動に、驚きの声を上げる少女。



 ――――――殺せ――――――!

















 気づけば。













 




 少女の首元まで伸びた自分の腕があって。

































「――――――っ!」


 少年は、その腕を下げ、そしてその場から逃げ出すように走る。


「龍ちゃん・・・・・・?」


 少女は、突然の行動に、ただ名前を呼ぶしか出来なかった。























 ――――――殺せ――――――

 

「うるせえ・・・・・・!」


 ――――――殺せ――――――


「・・・・・・うるせえ!」


 ――――――殺――――――


「うるせえって、言ってんだよ!」


 どこからか聞こえてくる声に、精一杯の罵倒を送る少年。


 だが、この声は、少年以外には聞こえていない。


 何故か?


 少年の頭の中に、直接響くような声だから。


 ――――――殺せ――――――

 

「くそっ!何なんだコレは・・・・・・!」


 少年は、走り続ける。


 途中ぶつかる人など気にもせず。


 少年は、走り続ける。


 雨が当たり、身体がずぶ濡れになろうと気にせず。



 少年は、ただ走り続ける。

















「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・!」


 気づけば、少年は柄の悪そうな男達に囲まれていた。


「おうおうテメェ!よくもうちのかわいい弟分をいじめてくれたみてぇだな!ああ!?」


「兄貴!コイツっスよ!早くやっつけちまって下さい!」


 いつの間に逃げ出したのだろうか、先ほどの男達の中にいた一人が、兄貴と呼ばれた男と会話している。


「おかげでコイツら全員入院だ!治療費どうしてくれんだコラァ!」


 男が少年に向けてがんを飛ばす。



 ――――――殺せ――――――


 少年は、響く声と必死に戦っていた。


 この声に従ってしまえば、本当に何もかもを殺してしまうような気がして。


「何とか言ってみたらどうだ!ああ!?」


 男が、無視をしているように見える少年を怒鳴りつける。



 ――――――殺せ――――――!


 次の瞬間。


 男は、宙に浮いていた。


「――――――は?」


 男はともかく、少年を囲んでいた人たちすら、何が起きたか分からなかった。


 分かった事は、少年が一瞬消えたかと思うと、アッパーを打ち出したような体制になっていて、男が吹き飛んだという事。


「てめっ、よくも兄貴を!」


 男の手下と思われる男が、手に持った金属バットで殴りかかる。


 少年は、それを片手で受け止め、それを折った。


「なっ!?」


「だったらコイツはどうだ!」


 もう一人の男が、違法改造されたスタンガンを手に少年に突貫する。


 少年は、それを先ほどと同じように片手で受け止める。


「へへっ、かかったな!」


 男が、スタンガンの電源を入れる。



 次の瞬間、およそスタンガンとは思えないような電流が走り、それが少年を襲う。


 このスタンガン、最大出力が40万ボルトというふざけた設定になっている。




 が。



 少年は、傷一つつかない。


「コイツ・・・・・・化け物か!?」


「どけ、俺がやる!」


 もう一人現れた男が、手に持った、中に鉄の棒が入った竹刀を振り上げ、少年に襲い掛かる。



 少年はそれをまたもや片手で受け止め、竹刀をへし折り、男の無防備な腹へ拳を一撃。


「――――――ゴふっ」


 男は血を吐き出しながら、雨で濡れた地面を転がっていった。


「コイツ・・・・・・何者だ!?」


「この見た目、この強さ・・・・・・まさか!」


「知っているのか!?」


「間違いない。コイツはおそらく『戦女神』だ」


「なっ・・・・・・!?」


 男達が驚愕する。


 『戦女神』。


 たった一人でいくつもの暴走族を潰し、時にはヤクザの抗争を止め、一説では海を越え外国のとある紛争を止めた。


 その美しい見た目からは想像も出来ないほど残虐な性格をしており、降参を宣言した相手を一方的に殴り続けたという。


 性別は男だというので最初は『戦神』と呼ばれていたが、あまりにも男とはかけ離れた姿をしているので、後に『戦女神』に名を変える事となった。


 最も、名づけられた本人は全く気に入っていないが。


「『戦女神』だと・・・・・・!?」


「俺達はそんな相手に喧嘩を売っていたのか!?」


「むっ、無理だ!勝てっこない!」


「命あってのモノダネだ!俺は逃げるぞ!」


「おいっ、待て!奴に背中を向けては――――――」


 武器を放り投げ、背を向けて逃走する男数名。










 次の瞬間、それら全てが頭から地面にめり込んだ。




 少年が、それぞれに頭上から蹴りをかましたのだ。



 少年は、地面に埋まった男達を一瞥した後、残った男達を見る。





 少年が、歪な笑い顔をした。


























「――――――あ」


 少年が、血に濡れた地面に立っていた。


「ああ・・・・・・」


 やがて、その地面に膝をつく。


「ああああ・・・・・・!」


 彼の周りには、息をしていない事は確定しているであろう、男達。


「ああああああああああああああああああ――――――――――――――――――――――――っ!!」














 この日。







 少年は、初めて。























 二度と償えない過ちを、犯す。











































「・・・・・・ふう。この話はいつしても嫌なものだ」


 黒ローブが、ふらりふらりと歩きながら言う。


「少年の運命が狂った日、と私は呼んでいる」


 ふらり、ふらりと道無き道を歩き続ける。


「少年よ、私の声は届かないだろうが――――――せめて」


 黒ローブが、空間から消える。



 ――――――せめて、強く生きろ――――――







 黒ローブのいた世界が、灰色に染まった。

 ひとまずこれで記念なうな話は終了です。次回からもとの話に戻ります。


 いやあしかしー私は結局何を書きたかったんでしょうねーはっはっは。


 ・・・・・・うん。分かってる。行き当たりばったりなのは分かってるから突っ込まないでくだしあ。


 今回も元ネタは無いです。多分。

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