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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第二章 新大陸

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57 ディレクター・クェド

 そんなこんなでまた数戦した後、次の相手はクェドらしい。……クェドってあのクェドか。僕を案内してくれた心優しい紫髪少女である。強そうだったし、大会の古参らしいし。


『準々決勝の試合は――アップヒル対クェド・ファイナラ!』


 クェドは相当ファンが多いらしく、観客席は満員だ。

 それぞれの初期地点で向かい合ったクェドは僕に向かって軽く手を振る。


「けっこう早く当たったッスね」

「だね。僕も手加減はしないから!」


 僕は『スペシャルズ』のダイヤとミスリルの剣を持っているが、クェドは何も持っていない。魔法で何か作り出すのだろうか。

 試合開始のブザーが大きく鳴る。僕が駆けだした瞬間――


「『ディレクターズ・カット』!」


 カチンと大きな音が響き、僕は強制的に初期地点に戻っていた。


 直後に迫ったクェドの殴打を横に躱し、魔法で反撃しようとするも、再びカチンと音が鳴る。


「ぐぁっ!」


 魔法を強制的に解除されてできたほんの一瞬の隙を突かれ、腹部にドロップキックをもらい吹き飛ばされてしまう。


「……!?」


 クェドは余裕の笑みを浮かべて佇んでいる。よく見ると、その右手には黒い塊を握っていた。

 ……あれは、カチンコ? 映画監督が撮影の時にカチンとならすあの黒いやつだ。


「アタシの魔法は『ディレクターズ・カット』。具現化させたこれを鳴らせば対象の行動を無理やりなかったことにできる魔法ッス」


 観客席からクェドのファンが大きな声援を送る。さらには聞いたことがないクェドの応援歌らしきものまで演奏され始め、クェドが人気なのがよく分った。ちなみに本格的な楽器を使ってのオーケストラもどきの演奏である。


「どうッスか? 勝てるッスか、これでも」

「もちろん」


 とは言えどもかなりまずい状況なのは間違いなかった。


 一定のダメージを受けると強制的にゲームオーバーになってしまうこの試合で、回避行動を満足に取ることができないというのはとても重大な問題である。


 ついコピーしそうな癖が出そうになるが、とりあえず適当な魔法を放ってみる。


「『エクスプロージョン』!」


 爆発を発生させるのを中断させるほどクェドはすばやくカチンコを鳴らせないようだが、魔法は事前に察知されて躱される。


 すぐ蹴りを放ってきたクェドを結界で受け止めてバランスを崩させる。


「おっ!?」


 それでもカチンと音を鳴らしつつもう片方の足で僕の顎を狙ってくる。


「よーっと!」


 剣を前に突き出すと、クェドは足を引っ込める。その隙を突いて僕はクェドの頭へ頭突きをぶち込んだ。


 その勢いのまま高圧の水を宙から出現させ、クェドを吹っ飛ばす。


「カットカット!」


 だが、吹き飛ばされつつ鳴らしたカチンという音ですべてが巻き戻る。……今は、僕が頭突きする直前か!


 若干突き出した頭をひっつかまれ、僕を全力で地面に叩きつけるクェド。


「がはっ!?」


 芝生と土の地面が岩石になったような衝撃を感じ、パラパラと土埃が舞う。


「――螺旋かいだぁん!」

「うわ!?」


 僕が『スペシャルズ』を発動すると、土からとても高い螺旋階段が五本も飛び出てくる。

 クェドは躱そうとしたもののそれに巻き込まれ、十メートルほどの上空に吹っ飛ばされてしまう。


 残り二つは夢中だったので何を指定したのか分からないが……おっと、どうやら、レールと新幹線だったらしい。


 空中にレールが猛烈な速さで敷かれ、落ちてくるクェドを狙い撃つように時速三百キロで白い新幹線が迫る。


「『ウォーターガン』!」


 僕がカチンコを正確に狙い撃って吹っ飛ばす。クェドの手から離れたそれを見て僕がにやりと笑う、が……

「カットッスよ!!」

「!? がっ!」


 あれ……?


 カチンコはきちんと吹っ飛ばしたはずでは。ああちくしょう、螺旋階段も新幹線も消滅している。


 どうやらクェドはわざわざカチンコを鳴らさずとも『カット』の一言で巻き戻しが行えるらしい。


 吹き飛ばされて壁にぶつかるのを風魔法でダイナミックに阻止し、上空に巻き上がる。その勢いを使ってライ○ーキックをぶち込もうとするが、すっと避けられ剣での戦いにもつれ込む。

 それにしても新幹線をぶち込むの、割と楽しかったな。


「もうあれは勘弁して欲しいッスよ……はあっ!」

「っ」


 胸ぐらをつかまれ、地面に叩きつけられる。瞬間に僕がクェドの首を掴み、お互いに反対方向へ吹き飛ばす。


「『エクスプロージョン』!」

「カット!」


 戻るのを見越して足に力を入れておいてよかった! 僕の蹴りはまっすぐクェドの首へ突っ込んで行く。


「『エクス――」


「カットッス!」


「――プロージョン』!」


 そして、赤い爆発が周囲を飲み込む。ふぅ……偶然うまくいったらしい。


『勝者! アップヒル!』


 ようやくか……無性に長かった気がする。


 奥で倒れているクェドが僕を見てにやりと笑うと、すぐに体が消えていった。スタジアムがある程度の歓声に包まれたのは、やっぱり僕にもファンは出来たのかな。

 ちょっと解説。

 巻き戻されたとしても、巻き戻された時間にしていた行動へ戻るだけなので、前もって爆発を仕掛けておけば攻撃が可能という算段です。

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