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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第二章 新大陸

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51 コモン

 シアンが矢、槍、弾丸に対して「遠距離武器」と叫ぶと、


「チッ……」


 それらはすっと消え去ってしまった。


「アーマルコライトの魔法『スペシャルズ』! 共通点のあるもの三種を具現化させるけど、その共通点を見抜かれると消滅するんだ!」

「なるほどね……」


 試しに先ほどの鉄塊へ向かって「鉄であること」と呟くと、針と焼き鏝ごと空気へ溶けて消えてしまう。

 面白い魔法だ。じゃあ僕も使ってみようかな。


「『スペシャルズ』。……暗闇、苦しみ、そして死!」


 一気に周囲が暗く染まる。魔法の効果範囲は狭く設定してあるから、そらちゃんたちは大丈夫だろう。


「馬鹿な……!」


 アーマルコライトは暗闇の中狼狽えているようだったが、すぐに対処に回れたのはさすがは精鋭だけを集めたザステルスの一員と言ったところか。


「人々が恐怖するもの……!」

「ご名答だね」


 闇が晴れ、敵の姿が現れる。若干手が震えているのは『スペシャルズ』で生成した苦しみの効果かな。

 どうやら、死は強すぎたのか発動までに時間がかかるようだ。


「見た相手の魔法を模倣できる能力か……この情報は確実に持ち帰らなければならないな……」

「はたして生きて帰れるかな?」


 相手の剣はとてつもなく強いが、傷ついても回復できるし、僕の剣で弾けば問題はない。

 問題は、アーマルコライトは『スペシャルズ』の本来の持ち主であり、こちらは付け焼き刃だということ。敵はおそらく法則性を見つけ出すのが得意だろうが、こちらは相手の具現化させたものの共通点を見つけ出すのが難しい。まあ、シアンやイエローに見つけてもらえばいいのだが。


「ドリル、短剣、剣山!」

「金属――うわっ!?」


 放たれた鋼のドリルが僕の胸を貫く。おかしいな、金属だって言ったはずなのに。


「ひとつ言っておこう……『スペシャルズ』はもし共通点を言い当てられたとしても、こちらが設定したものと違えば消えることはない……」


 回復しつつ短剣と剣山を真っ二つにする。


「えいっ。じゃあ合金とか?」


 僕がそう言うと、その予想は当たっていたらしくドリルや短剣の残骸などはすっと消えていく。こりゃまた、厄介な仕様だ。

 だけど、僕もそれを使うことができるというのは強い。


「くらえ『スペシャルズ』、銅、銀、金!」


 形もいくらか操作できるようで、三種の金属は最初に僕が喰らった針のような形状になってアーマルコライトへ飛んで行った。


「金属か……いや、違う……!?」


 消えると思っていたはずの針が消えず、慌てて飛びのいて躱すアーマルコライト。元居た場所を三種の針がソニックブームを伴って飛んで行った。


「正解はね、みっつとも十一族元素ってことだよ」

「なんだそれは……っ!?」


 知らないでも当然か、科学の発展した地球で言われていたことだから。

 僕もあんまり覚えているわけじゃないけれど、周期表を書いた時に銅、銀、金は十一族という列に並ぶのだ。すごいでしょ。……まあ、それ以外はキセノンとアンチモンくらいしか知らないけど。

 シアンが目をぱちくりさせている。もしかしたら彼女は周期表について知っているのかもしれない。


「これで魔法は互角かな……あとは、剣術?」

「……」


 苦々しい顔のアーマルコライトだが、すぐに切り替えて攻撃を仕掛けてくる。さすが、速い。


「とりゃーっ!」


 アーマルコライトの剣を受け止めた直後、魔王剣をぐるんと回転させて敵の剣ごと床にめり込ませる。

 即座に僕は剣を抜いて相手の剣だけを岩石で封じようとしたのだが、すぐ反応されて失敗に終わった。


「『スラッシュ・リボンズ』!」


 腕をリボンに変えて変則的な軌道から攻撃を仕掛ける。


「盾、甲冑、剣!」

「わわっ!?」


 剣が盾で防がれた挙句、いきなり体が重くなり、視界も少し塞がれる。甲冑を着せられたみたいだ。


「えー……」

「騎士の使う物!」


 シアンの助け舟で障害となる甲冑は消え去るが、かなり隙ができてそこを狙われ、右腕を斬り飛ばされてしまう。

 すぐ回復できたのはいいが、僕の剣が遠くに行ってしまった。なんとか両手を魔力で覆い、素手で剣を受け流す。


「……回復封じの魔剣でも必要そうだな……」

「そんなものほいほい用意できるの?」

「当然だ……」


 とりあえず隙を突いてアーマルコライトの頬に一発パンチを入れることに成功する。感触がもろ岩石だったし、全く効いた様子もないが。

 となると……実力は拮抗しているわけだ。まあ、崩落とかを気にしなくていいならこの狭い空間でラグナロクを撃てばいいのであるが。

 助けがあればやりやすそうだ。そこで、僕はひとつのことを思い出す。


「……そろそろ、出てきていいんじゃない。ジークフリートくん」

「きづいてたのか」


 賭けでもあったが、僕の声に応じて視界の端でカウボーイハットのクールなガンマンが姿を現す。同時に、僕があげた銃の狙いを一瞬で定めて引き金を引いた。

 剣を構えて銃弾を斬り裂こうとするアーマルコライトだったが……


「剣であること」

「がはっ!?」


 剣はあっけなく溶けて消え、アーマルコライトは銃弾をわき腹に食らって吹っ飛んだ。

 もくもくと煙が立ち込める。


「このだんがんのわるいところは……しばらくしかいがふさがれるところか」


 なんと、この短期間で渡した銃に対応したスペシャル弾丸を開発したらしい。

 少しすると煙は晴れ、ひびの入った壁にもたれかかるアーマルコライトが姿を現す。銃弾を受けた脇腹はごっそりと抉れていて、もうまともに戦闘ができる状態ではないようだ。


「……せめて、情報だけでも持ち帰らなくてはな……」


 最後の力で強行突破か、と僕が身構える。


「――焚火、煙草、そして煙幕」

「わっ!?」


 一瞬で白い煙が空間を埋め尽くす。

 静かな足音が聞こえ、そして次第に離れていく。

 くそう、逃げられたらしい。


「煙を発生させるもの!」


 シアンがそう声を上げて煙が消滅したころには、もうアーマルコライトの姿はなかった。

 ちなみに、斬り飛ばされたお昼ちゃんの腕やらなんやらはぼわーって消えます。さすがに、グロい断面の腕が転がったままではないです。

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