47 PvP
「『アクアシールド』!」
適当に水の壁を出現させ、飛んできたものを防ぐ。どうやら飛んできたのは炎の球だったようで、偶然相性が噛み合ったため水の壁に飲まれて消える。
そらちゃんとギルガメッシュくんを結界で包むように守り、僕が戦闘の構えを取る。シアンは結界に隠れるようにそらちゃんの後ろでしゃがみ、イエローは子供たちを守るよう姉弟の前に立った。
「なかなかやるネ」
どうやら隠蔽の魔道具を装備していたようで、僕たちの前に一人の男がぬっとあらわれた。宙に違和感は感じていたが、隠れていると分からなかった。なかなか上質な魔道具らしい。
濃い灰色の髪を長く三つ編みにして、頭には赤いキャップを逆さに被った若い男だ。服装はシャツにジャケット、ジーンズとラフな格好をしているが、どうやらその下に薄い金属の鎧か何かを装備しているらしい。
「いきなり攻撃って失礼じゃないのかな。こっちには子供もいるんだし?」
「攻撃するのがおれの仕事なもんでネ。死んでもらおうかネ――『ソフト・モノトーン』!」
男が横薙ぎに両手を振ると、小さな砲台が男の両隣に出現する。
「この魔法は、おれが自由自在に砲弾を撃ちだせるキャノンを具現化する魔法ネ。そして弾丸は、さっきの炎だけじゃないんだよネ。撃つネッ!」
ドンという地響きのような音と共に、キャノンから緑と白の砲弾が弧を描いて僕に迫る。ふむ、風と光か。
ただ、この程度であれば問題なく相殺できる。
「『ウォーターガン・フォール』」
属性、相性一切関係なし。威力が高ければすべてを消せる!
十字状で放たれた水の弾丸は、宙を斬り衝撃波を発生させながら砲弾と衝突し、それぞれを飲み込んだ。だが、
「――爆ぜるネ」
「っわっ!?」
いきなり飲み込んだはずの砲弾が爆発、結界に守られていない僕が吹っ飛ばされる。
「『スラッシュ・リボンズ』!」
「くらえ!」
イエローの右腕がばらばらと水色のリボンに変化し、僕の体に巻きつけて引っ張る。僕はその間に『エクスプロージョン』を放ち、キャノン本体を攻撃した。
「ぐっ……!」
かなり大きめに設定した爆発だったので、キャノンがひとつ掻き消えるだけでなくとっさに発動された敵の結界もかち割って衝撃を与える。
「おまけにどうぞ。『ラグナロク』」
わざと男には当たらないよう、ぎりぎりのラインを狙って少し奥に『エクスプロージョン・ラグナロク』を撃つ。
途轍もない轟音と共に道が砕け、爆風に男が押されて倒れそうになる。もう片方のキャノンもぼやりと陽炎のように消えてしまった。
ぎぎぎ、と男がブリキの人形のように鈍く首を後ろに向ける。そして、背後の惨状を見て地面へ崩れるように座り込んでしまった。
「おー。アップヒルって強いね♪」
「一緒に来てくれて心強いわね」
四人が背後から拍手してくれる。照れちゃうなあ、にゃはは。
僕はゆっくり男の前へ歩いて向かい、少しかがんで目線を合わせる。
「ね」
「っ!?」
地面を蹴って後ろに飛びのこうとした男だが、イエローが再び放ったワインレッドのリボンに左足を引っかけてすっころんだ。倒れた男の顔を覗き込むと、恐怖を顔に貼り付けていた。ま、さっきの爆発ってすごいからね。ちなみに野菜畑は結界を張っていたので無傷である。
「えーと……お名前は? ワッツユアネーム?」
「い、言うわけないネ……いくら化け物が相手でもネ……」
困ったなあ。僕が火を出したり刃物を出したりして脅していると、今度はシアンがこちらへ向かってきた。
「オパール・マクキング」
……情報を取得する魔法かな。僕が別大陸から来たのを調べた時と同じか。
「何の話だネ……!?」
オパールと呼ばれた男はとぼけようとしているが、瞳や表情筋が小刻みに震えているからたぶん嘘をついているんだろう。
「ああ、マクキングって言ったらアルシ帝国の公爵じゃないの。裏で国王を動かしてるっていう噂もあるくらい有力な貴族ね」
「ものしりー!」
ギルガメッシュくんに褒められてシアンは嬉しそうだ。
「だけど……オパールって名前は聞いたことがないわね。隠し子かしら……それとも発表していないだけ?」
「いや」イエローの言葉をシアンが遮った。「ザステルスだ」
ザステルスとはなんぞや。秘密結社か何かだろうか。
「ザステルスって言うのは……マクキング公爵当主が数年前に設置した特殊部隊の事だね。暗殺、諜報、その他なんでも陰で暗躍する大規模な組織らしいよ……スカウトされるとマクキング姓を与えられ、それなりの待遇もある」
「チィ……『ソフト・モノトーン』!」
「わゃっ!?」
いきなり後ろから衝撃を感じ、吹っ飛ばされる。さらにその先でちょうど何かが落ちてきて押しつぶされた。地面が砕ける。
ああ、キャノンを具現化させてその重みを使ったのか……なるほど。
さっと立ち上がって逃げようとしたオパールを、キャノンを投げつけて止める。
「ぐぁっ!?」
倒れこんだオパールは起き上がってこない。どうやら片足が折れたみたいだ。
「公爵直属の特殊部隊がこんなへたっぴな人間なわけないと思うんだけど……」
「そ、それはおれが新入りだからだネ……ふっ、はははっ、お前たち、今死ななくともこれからさらに強い者たちが現れるネ! ザステルスからは逃れることは出来ないネ……!」
魔法で隠しておいたらしく、オパールは右手に何かの小瓶を出現させる。
「後続の先輩方が少しでも楽になるよう……このオパールが最後に! 傷跡を残してやるネ! マクキングの名に懸けてェエエエエエエエエエエエエエ!」
「まずい――」
小瓶が地面に叩きつけられるのと同時、灰色の煙が周囲に立ち込め……僕の体は、靄の中から現れた赤黒い槍に貫かれた。
オパールは前座だった。かわいそうに……まあ、また今度登場させます(大嘘)




