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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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35 カムフラージュ

「なかなかいい采配だね」


 とりあえず昼くんを褒めておこう。自分がメドゥーサ――カプチーノ・アグーレーと戦うのが一番いい。彼女の事だからおそらく何も考えずに適当にぶつけたのだろうが、最良の組み合わせになってくれた。

 たぶん、勇者たちは勝って生き延びるだろう。彼らはルミネア出身とはいえ才能の塊だ。魔王を倒して秘宝を奪い、元居た世界へ帰るのが目的だそうだが……帰すのは惜しい。なんとか、誰かが説得してくれないだろうか。


「そうね。四天王最強の私があなたと戦うのがベストよね」


 そして、自分は死ぬと思う。そういう運命らしいし、計算上では確実に相打ちだ。

 まあ、自分が死んでも特に問題はない。四天王は全滅するから昼くんの邪魔はさせないし、ギルドの仕事も溜まっている物は全て片付けてきた。世界を救って死ねるなんて、かっこいい死に方だとは思わないかな。


「ちなみにね、四天王は全員自分が最強だと思ってるんだよ」

「それくらい知っているわ。でも、実際は私が最強なの」


 カプチーノは髪が蛇でできているメドゥーサという種族で、じゃらじゃらと宝石の装飾品を大量に着けている。肌の色は黒めで、瞳は紫。口元からのぞく牙はするどく、噛みつけば毒を注ぎこむこともできるようだ。

 メドゥーサたちは固有魔法とは別に、種族としての特性を持つ。目を合わせた生物を石にするものだ。魔法をかき消す術を持たない勇者が戦っていれば、メドゥーサの特性ですぐやられていただろう。


「ご希望の武器は?」

「あら、決めさせてくれるの? じゃあ、ショートソードがいいわね」


 鋼のショートソードを創り出す。何の魔法もかかっていない一般的な代物だ。切れ味も抜群というわけでもない。

 自分が剣を構えたのを満足げに頷くと、次はカプチーノが両手に一本ずつ大きな斧を握る。それぞれ緑と紫の色をした金属で、切れ味強化や回復封じなどの基本的ながら有用な魔法が掛かっている。


「それじゃあひとつ言っておくよ。君はこの戦いで死ぬ運命なんだ」

「面白いこと言うじゃない」


 いまいち信じていない。まあ、それは当然だが。


「スィシエンの『ヒドゥン・プレミアム』……あれは目に見えなくとも裏で働き、事象の発生を操る。それと同じような感じだね。運命は、決まってるんだ」

「それを信じると思うかしら? もし真実だとしても、運命を捻じ曲げるための努力なら惜しまないつもりよ。魔王様の手を煩わせるのはできるだけ減らしたいし」

「すごい忠誠心だ」

「魔王様はすごいお方だもの」


 ――来る。

 自分が剣を掲げると同時にカプチーノが突っ込んできて、ちょうどうまい具合に剣と斧が衝突した。


「不意打ちかな?」

「勝てればいいのよ。勝負ってのはそういうもの」


 そうは言いつつも、動きを読まれたのが少し悔しいらしい。表情が少し硬いね。


「自分はきちんと情報を把握してる。そういう小細工は通じないよ」

「驚きね。……でも、知っててもどうしようもない事だってあるのよ?」


 こちらを見るカプチーノの目が赤く輝いた。

 これがメドゥーサの特性。目を合わせたら石化する、たいていの人間は。


「な……なんで効かないの!?」

「教えてあげよう。自分の魔法を……『オール・アバウト・イット』!」


 がん、と鈍い音を立ててカプチーノの斧が地へ落ちた。


「この魔法は平均を適用する魔法。今、君に『人間の女性の腕力の平均』を適用した――重たい斧は支えきれないようだね、その華奢な腕では」


 出し惜しみなんてすれば大凶だ。どうせ最善の結果でも自分は死ぬ運命なのだし、最初から全力で行かせてもらう。


「……すごく優秀な魔法じゃない。でも、分かってるんでしょ? こちらには魔法をかき消す用意がある! 『インヘイル』!」


 カプチーノの両手に魔力の渦が出現し、自分の『オール・アバウト・イット』を吸い込んだ。すぐに地面に突き刺さっている斧を拾い、こちらへ突っ込んでくる。

 魔法が使えないけれど、そんなのは些細な問題だ。


「自分は地の力も強いんだ」


 単純な腕力だけで、カプチーノの斧を弾き飛ばす。よろめいた隙を突いて、そのまま顎を蹴り上げた。


「ぐっ……『ホット・ポット』!」


 ぐぐぐっと体が内側から爆散しそうな感じが一瞬だけする。

 ええと、『ホット・ポット』は……なにかに閉じ込められている物を、強制的に外側へ引きずり出す魔法。血液を外に出そうとしているわけか。


「『インヘイル』」

「なっ!?」


 お得意の魔法を消し去られると、カプチーノは驚きつつ後ろへ引く。あえて自分はそれを追わない。


「えーとね。『魔王軍の上層部の「インヘイル」のレベルの平均』を自分に適用したから……ま、それなりに熟練の『インヘイル』を使えるわけだね」

「化け物ね……!」

「こっちからすればメドゥーサこそ化け物さ」


 とにかく力で責め立てる。

 だが、やはりただの鋼では、四天王が使うような特上の品に敵わない。鋼のショートソードは根元からぽっきり折れてしまった。破片が自分の右肩に刺さる――ものの、それはすり抜けるように地面へ落ちた。


「な……!?」


 カプチーノはさっきから驚いてばかりだね。ふふん、自分の魔法がそれだけすごいってことだ。


「一般人はみんな、肩に剣が突き刺さっているということはほぼない。だからその平均を取ってダメージを無効化したわけ」


 ホンズェロン・ロロロカットと戦った時にダメージを無効化したのもこれ。魔法が使える状況では、あらゆる攻撃は自分に通用しない。魔法が使える状況ではね。


「『インヘイル』!」


 かなりの魔力をつぎ込んだ、強力な『インヘイル』が放たれる。こちらの中途半端な『インヘイル』では上書きできそうにないね。

 まあ……それ以上にこちらが魔力をつぎ込めば、意味ないんだけど。


「『ザ・クラフトライン』!」


 ぺたりと手のひらを当てた紫の斧が大きな石ころ――たぶん鉱石――になってごろりと転がる。


「それはガブザの……!? コピー能力を持っているのはあの猫の子じゃ!?」

「ふふ、驚いてくれたね。でも、昼くんの真似事は……かなりきつかったみたいだけど」」


 無理してガブザ・ピエトロの魔法をコピーした代償として自分の右腕から血が噴き出た。

 これだ。強力な能力には、代償がつきもの。この戦いに全力をつぎ込めばその代償で自分も死ぬ……そういうわけだ。


「今、自分に『ガブザ・ピエトロの平均』を適用した。だから『ザ・クラフトライン』を使えるんだ」

「どこまでも化け物……! ああもうっ、せめて相打ちにまでは持っていってみせるわっ!」


 右足に魔力を纏わせ、袈裟斬りを狙った斧を横から弾く。


「『オール・アバウト・イット』! 確実に……とどめを刺すっ!」


 自分の左腕が破裂した。でも、シナリオ通り。

 本来この世界の生物ではないゆえに平均を取得できなかったけど……命という大きな代償と引き換えに、コピーする。


「借りるよ勇者! 『インペリアル・コート』ぉおおおおおおおおおおおおお!」


 右足、左足が爆散する。

 残った右腕で――カプチーノの全身を爆ぜさせることに、成功した。

 周囲の黒い空間が、水が雑巾に吸われるようにすぅっと消えていく。


「……最後の仕事だね……」


 残った右手に、魔法で一枚の円盤を生成する。

 結果は、最高の筋書き通り。あとは……雄太郎か、アイがこの円盤を拾ってくれれば、いいけど。

 ……先ほどまで激しく耳を打っていた自分の鼓動も次第に聞こえなくなり、意識は闇へ沈んでいった。

 ラリル・ロフトヴァイン、死亡。お昼ちゃんの次に好きなキャラだったので、作者も泣きそうです。

 いちおう『オール・アバウト・イット』の補足をしておきますと、

 ・これまで様々な情報を取得していたのも『オール・アバウト・イット』。平均を取得する全段階で世界中の生物の情報を取得する過程を踏みますので、魔法を中途半端に発動させることで様々な情報を得ていました。お昼ちゃんや勇者たちは異世界人だったので情報の取得ができず、かなり警戒していました。

 ・平均を取る範囲を狭めるとラリルくん自身も大きなダメージを受けるようになっています。『魔王軍全体』の平均を取るなら無傷ですが、『ガブザ・ピエトロだけ』の平均を取ろうとすると本編でもあったようにダメージを受けます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポが良くて読みやすいですね。 [一言] ラリル君死んじゃったよ…。能力の内容すごい難しいですね。
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