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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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32 強行突破だーッ!

「あれだよあれ」


 しばらく魔王領上空を飛び続けていると、大都会の中に大きな空間が空いている。そしてその中心に、ぽつんと大きな城が見えた。ようやくの魔王城だ。

 魔王城は、その名に恥じずとにかくでかい。面積は東京ドーム百個分くらい。……たぶん。

 高さは東京の高層ビル……には届かないけども、かなり高い。さらには城の周囲に物理的・魔法的な各種トラップが張り巡らされていて、しかもよく観察してみれば城自体がひとつの魔道具のようだ。これは攻めにくそうだ、歴代の勇者たちもかなり困っただろうね。


「自分が先に行って道を作っておく。それじゃ」

「あ、ちょ!」


 僕が制止するよりも早くラリルくんがゴンドラから飛び降りる。そのままダッシュで門のすぐ近くに行くと、屈強な門番二人を軽々しく放り投げて大きな扉を破壊。そのまま城の中へ入っていった。


「オレ達も早く向かうべきだな。高度を落としてくれ」

「はいはい……」


 雄太郎の指示に従ってゴンドラを地面に降ろす。爆ぜた。


「がっ……! 地雷か……!」


 ゴンドラの中にまだいたアイは無事だったが、雄太郎は早々にダメージを受けて血を流している。とりあえず回復させた。

 ゴンドラをかばんへ押し込んでから、僕たちも城内へ侵入した。

 魔王城内は、典型的と言うべきか黒を基調としたちょっぴりホラーな感じのする城だった。

 ルミネアの城のように豪勢な装飾もなされているが、陽の光もあまり差し込んできておらず全体的に薄暗い。そしてあまりにも広いので部屋の奥が見えないほどだ。


「狼藉も――」

「てやぁーっ!」


 斬りかかってきた魔人兵士を掴んで放り投げると、あとふたりの魔人を巻き込んで倒れこむ。ナイスピッチ!


「早かったね」ラリルくんが僕の方へ手を振る。「もうすぐ四天王が来る。三人まとめてね」


 もう四天王かあ……対応が早い。うーん、それとも魔王城に着いてるから四天王が来るのは普通なのかな。どちらにせよ一般の兵士では僕たちには敵わないからね。

 奥の扉が三つ同時に開き、そこから三人の魔人が現れる。その圧倒的な気迫に僕たちはやや押され、魔人の兵士たちは敬礼をすると遠くへ行った。


「早かったな、勇者御一行よ」


 透き通った肌を持つ初老の魔人が剣を地面に突き立てて言う。身長は二メートルどころか三メートルくらいありそうだが、筋肉という筋肉はあまりない。まあ、僕みたいにパワーが出せる例もあるからひとくくりにはできないけれども。


「突然のことでびっくりしたけど……あなたたち、佇まいだけで分かるわ。まだその強大な力に、技術が追い付いていないみたいね」


 メドゥーサというんだったっけ、髪の毛がたくさんの蛇でできた美女だ。ピアスにネックレスなどの宝石を用いた装飾品をこれでもかと言うほど着けている。少し首を揺らすだけでもじゃらりと音がした。……うるさくないんだろうか。


「徹底的に叩き潰させていただきます。卑怯とは言わないでくださいね」


 周囲にバチバチと火花が舞っている血色の悪い青年が両手を宙にかざし、魔法を構築しだす。


「……なるほど。こりゃ卑怯だね」


 ラリルくんが苦笑したその次の瞬間、複数のドームが現れて僕たちを飲み込んだ。




 ……あれだよ、あれ。名前なんだっけ、既に死んだ四天王のスクィリアが言ってた……そう、『晦冥の闘技場』。僕はまたその中にいる。

 だが、敵も味方もいない。ただ暗いだけで、本当に何もない。どういうこと?

 疑問に思っていると、すぐに先ほどの青年の声が響いてきた。

『これからこのフィールドを用いて、あなた方を三対一で徹底的に潰させていただきます。順番待ちの列でお仲間がやられるまでの間、しばらくお待ちください』

 うわ。卑怯だ。

 要するに、これは待合室で順番が来れば四天王の三人が一気にここへやってきて倒そうとしてくるらしい。

 でも、どうしよう。魔力で吹き飛ばすこともできなくはないけど、かなり頑丈に構築されているから僕の魔力をほぼ使い切る結果になってしまう。そんなことをすれば、へばっている間に一般兵に倒されるのがオチだ。


「ラリルくん。聞こえてる?」


 僕は一縷の望みをかけてラリルくんへテレパシーをつないでみた。ザザザとノイズが入ってくるけども……よし、何とかつながったみたいだ。


『なに? 状況確認なら、あとでやってよ。今自分が戦ってるんだから』

「あ、それはごめん」


 ラリルくんは大きなため息をついた。


『前渡していたでしょ。魔道結晶に刻んだ魔法を使ってこのフィールドを破って。ついでに全員分ね』


 あ……そういえばそんなの貰ってたね。僕はかばんからそれを取り出すと、思いっきり握りつぶした。

 フィールドがばらばらとちぎれ、崩壊する。

 みんなも驚いた様子で城内へ戻ってきたが、それと同時にラリルくんが叫んだ。


「再展開される前に張りなおして! きみは魔王のとこへ行くんだ!!」

「あいよっ!」


 僕は自分以外を一対一でぶつけるように『晦冥の闘技場』を創り出す。

 アイと血色の悪い青年、雄太郎と高身長の老人、そしてラリルくんとメドゥーサ。特に考える暇もなかったものの、まあいい感じの采配ではないだろうか。

 驚きつつも食い止めようとする兵士たちを蹴散らし、僕は城の最奥部へ突っ込んで行った……。

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