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101回 昨夜の翌朝

「…………ん」

 目が開く。

 頭はまだ半分寝てるが、一応は睡眠から覚めていく。

 そしてすぐに違和感に気づく。

(なんだ?)

 妙に気分が爽快だった。

 体も軽い気がする。

 いったい何で、と思う前に、その違いとなる原因と接してる事に気づく。

 同じ布団の中に、自分以外の何かがいる。

 それと肌が触れあってるのを、頭が理解するより心が察知する。

「あ…………」

 昨夜の事が頭の中に次々に浮かび上がってくる。

 ミオに襲いかかり、そのままアレヤコレヤをいたしてしまった事を。

(という事は……)

 目を、肌に触れてる温かくて柔らかくて気持ちのいいものへと向けていく。

 剥き出しの肩、ほっそりとした首筋、可愛い寝顔。

 掛け布団から胸元から上だけをのぞかせたミオがそこにいた。



(さて、どうするか)

 やってしまった事は変わらない。

 今更それを無かった事にしようとも思わない。

 ましてや、ミオを捨てるなんて想像の埒外である。

 どうするかと考えるのは、これから先、ミオと共にどうしていくかという事である。

(まあ、とっくに一緒に暮らしてるし、特に変わる事があるわけでもないだろうけど)

 基本的には今までの延長という事になるだろう。

 そう考えれば大差はないような気がする。

(まあ、こういう関係になったっていうだけだし)

 それはとてつもなく大きな違いだとは思うのだが、だからといって生活全部が変化するほどでもないはずである。

 ミオに変な気遣いをしなくて済むかもしれないというだけで。

(こうなってるのに、気遣いも何もないしなあ)

 タカヒロとしての結論はそこにいきついた。



(ま、寝ててもしょうがないから起きるべ)

 今日も仕事がある。

 さっさと起きて行動しなくてはいけない。

 まだ寝てるミオを起こさないように気をつけながら、タカヒロはゆっくりと静かに布団から出ていく。

 だが、すぐにその腕をミオの手が掴んだ。

「ん?」

 まさか起きてるとは思わなかったので意表をつかれた。

 小さくて細い指がタカヒロの手を掴んではなさない。

 振り払おうとおもえば簡単にできるのだが。

 なぜだかタカヒロはそうしたくはなかった。

 むしろ、このままそうさせていたい。

 しかし、仕事がある。

「…………おはよう」

 まずは声をかける。

 返事はない。

 だが、気にせず次の言葉に移行する。

「起きてるんだろ」

「…………」

 相手は無言のまま。

「そろそろ起きないとまずいんだが」

「…………」

「まあ、寝ててもいいけど。

 とりあえず、俺は仕事があるから」

「…………」

「行かないとまずいからさ」

「…………」

 無言のままのミオは、決して指を解こうとはしない。

 タカヒロの腕というか手首を掴んだまま、顔を布団の中に埋めている。

 剥き出しの肩などは見えているが、表情は見えない。

 いったいどんな顔でタカヒロを止めてるのか分からない。

 分かってるのは、このままでは仕事に遅れるということ。

「なあ、ミオ」

 ふりほどくのは簡単だが、出来れば向こうの意志で手を離してもらいたい。

 そう思って声をかけてるのだが、ミオは一向に反応しない。

「ミオ…………」

「…………」

「いい加減、もう行くぞ」

「…………もうちょっと」

 ようやくミオの声が聞こえてきた。

「ん?」

「もうちょっと……このまま」

「…………」

「…………」

「いや、だからな」

「…………」

 握られた部分にぎゅっと力が加わる。

 それでも大した事はないが、タカヒロの言葉を制するには充分だった。

「もうちょっと……」

 そのおねだりにタカヒロは呆気なく負けた。

「はいはい……」

 しょうがなく、本当にしょうがなく────と自分に言い訳をしながら、ミオに覆い被さる。

 ついでに、伏せていた顔を無理矢理表に出す。

 ぎゅっと目をつぶるその顔はとてつもなく真っ赤になっていた。

 それを見てタカヒロは、考えるのをやめた。

 覆い被さりながら口を重ねていく。

 タカヒロの腕の中でミオが硬直したが、今度はすぐに柔らかくなっていく。

 次に腕がタカヒロにまわされる。

 指よりもしっかりととらえたそれを、タカヒロは無理にひきはがそうとはしなかった。

 これくらいの表現なら問題は無いと信じている。

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