102回 あからさまにあやしい言い訳
「わるい、遅れた」
いつもならとっくに作業に入ってる時間にやってきて、頭をさげる。
モンスターを倒しに行ってる者達は既におらず、残ってるのはトシノリと土木作業兼村の防衛で残ってる者のみ。
「どうしたんだ、珍しい」
いつもと変わらぬ調子でトシノリが聞いてくる。
怒るでも叱るでもない、事実の確認をするための声だった。
タカヒロも事情の説明は必要なのは分かってるので、率直に理由を述べようとは思った。
だが、さすがに事を分かりやすくはっきりと伝えるわけにもいかない。
「まあ、それは……」
と何をどう言えば良いのかと考えていく。
まさか、『昨晩、ミオと大変親しい関係になりました』と言うわけにもいかない。
さりとて適当に誤魔化す方便もない。
やむなく出て来たのは、
「色々あったんだ」
であった。
「ふーん、色々か」
トシノリはそう言っただけでそれ以上の追求はしなかった。
他の者達は不思議そうな顔をしていたが、
「まあ、これはここまででいいだろう」
というトシノリの言葉で退いた。
「それよりも今日の仕事だ」
まったくもってその通りなので、それぞれの仕事に向かっていく。
といっても、やることは変わらない。
相変わらずスコップで土を掘って土嚢を作って積み上げるだけである。
それでも少しでも進めるために、タカヒロは遅れ馳せながらも作業を開始していった。
昼になって食事に戻ったタカヒロは、そこでまた追求を受ける事になる。
「嬢ちゃんが休みらしいが、何かあったのか?」
トシノリからの質問に、
「ちょっと体調を崩したみたいだ」
とだけ答えた。
正直に昨夜あった事を伝えるつもりは無い。
だが、それでも何かを察したのか、
「そうか、体調か」
といって黙ったトシノリは、妙な表情を浮かべている。
「まあ、大事にしないとな」
「ああ、無理して働かせるわけにはいかないし」
含む所を感じさせる言い方に、可能な限り素っ気ない言葉を返す。
「とりあえず明日明後日は様子見だ。
復帰できるならそれからで」
「まあ、それくらいはかかるだろうな。
落ち着いたら、ゆっくり仕事をしてもらえば大丈夫だ。
それまでは、うちのに食事の支度とか頑張ってもらえばいい」
トシノリのつれてきた奴隷が、今日は一人で食事の支度とかをしてくれている。
そこは申し訳なかった。
ただ、ミオが休む事を伝えた時に、
「あらあら」
と言って笑みを浮かべた彼女は、
「大事にしてあげてね」
と言ってくれた。
どうも色々と筒抜けらしい。
単にタカヒロが分かりやすいというだけかもしれないが。
ともあれ、ミオが休んだという事はその日のうちに知れ渡った。
何があったのかと心配されたが、翌日には全員ニヤニヤとした妙な笑みをタカヒロに向けていった。
「やりましたね」
「ようやくですか」
「おめでとうございます」
「羨ましいっすよ」
こんな言葉がかけられていく。
タカヒロは事が全て露見してる事を悟らざるえなかった。




