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腐った乙女と俺様イケメン不良  作者: 真下地浩也
第四章  高校3年生6月
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高校イベントといえば文化祭か?

拓哉視点。

 文化祭なんて俺には縁のないことだと思っていた。


 物心着く前から、俺の親がやくざって理由で、クラスメイトからもその親からも無駄に怖がられたり、疎まれたりした。


 それでも小学生までは何とかなっていたが、中学生になるとだめだった。


 ただそこにいるだけで、周囲から向けられる嫌悪と恐怖の視線に、根も葉もない噂話。


 さらに粋がった他のクラスのやつらや上級生が喧嘩をふっかけてきやがって、売られたそれらを買えば、状況はさらに悪化した。


 そんな俺を誰も必要とせず、むしろ邪魔だと思われていたから、出来るだけ学校に行かなかった。


 それが他校とはいえ、文化祭に行くことになるとは思ってもみなかった。


 しかも、いつもつるんでる湊達だけじゃなくて、地味でチビなあいつと敵対している筧も一緒だとか。


少し前の俺なら絶対に想像もできなかっただろう。


 いや想像だけじゃねえな。

 こうして行こうとも思わなかっただろう。


 ならどうしてここにいるか。


 それは湊達に連れて来られたからだ。


「どうせ暇してんでしょ?だったら付き合いなさいよ」


「拓哉、トマさんのことが気になるのはわかるけど、決めるのはあの人だよ。せっかくだし、気晴らしに行こうよ」


「文化祭は楽しいってハナもいってた。だから拓哉もいこ?」


「姐さんも一緒だから絶対に楽しいですよ!」


 朝早くに家に来たかと思えばそういった。


 暇なやつらだと思ってぼんやり見ていれば、強引に連れ出された。




「だからお前らのような素行の悪そうやつらをいれるわけにはいかん!」


 耳に響く怒鳴り声で今朝から今に連れ戻された。


 清駿高校の校門前で、十数年前までは髪が生えていたと思われる頭はてかてかと光輝き、だるまのような体格の男が俺達の行く手をふさいでいる。


「先生なのに見た目で判断するんですか?」


 筧がだるま男を見下しながら無表情で聞いている。


「お前らのような頭のやつらが何をいうか!いれてほしければ髪を黒くしてから出直すんだな。そしたら考えてやらんこともない」


 俺が誰だか気づいていないようだが、尊大な態度に腹が立つ。


 髪色ぐらいでごちゃごちゃうるせえ。


「すみません。その人達は僕が招待したんです」


 どうしてやろうかと考えていると、テレビでよく見る人気アイドルみてな爽やかな声がだるま男の後ろから聞こえた。


 だるま男は苛立った顔のまま振り返り、すぐに表情を緩めて、まるで上司の機嫌をうかがうように媚びるような笑顔を見せる。

 

 気持ちわりいな。


 男は湊に雰囲気の似た優しそうなやつだった。

 

 いや雰囲気だけじゃねえ。性格も似てるな。

 

だるま男がいなくなった瞬間に罵倒してやがった。


キレイな顔して中々、腹が黒いやつみたいだな。


 そいつのおかげで校内に入ることが出来た。


 まずは春休みに会った、南並と高萩のクラスから行くことになった。

 

 教室が世界的に有名な童話のように飾り付けされていた。


 生徒たちも童話のコスプレをしている。

 

 適当な席に案内され、じゃんけんで場所を決めた。


 甘い物はそんな好きじゃねえからコーヒーだけ頼んだ。


 俺の正面であいつと筧がバカップルのようなことをやり始めた。


 こいつら俺の目の前で何やってんだ?


休日に朝から連れ出された上に、なんでこいつらがイチャついてるところを見せられなくちゃなんねえんだ?


満更でもねえ顔しやがって……。


 怒りでコーヒーの入った紙コップが潰れたが、どうでもいい。


 苛立ちのまま、立ち上がろうとしたが、長澤の言動にやる気がそがれた。


 筧の悔しそうな顔に苛立ちは完全になくなる。


 そんなにそいつが大事かよ。

 その程度の女はどこにでもいるじゃねえか。 


 

 食べ終わった俺達は他の店を見て回った。


 展示から食べ物屋まで、中学とはぜんぜん内容が違っている。


展示やらで明らかに手を抜いてるクラスもあれば、南並と高萩のように細部までこだわった模擬店もある。


それぞれの個性が出ていて、面白くなくもない。


 正義は常に何かを食っていた。

 見慣れてはいるが、よく胸焼けしねえな。


 適当にぶらついていると、蓮のファンにばれてしまった。


 サルみてえな声をあげて、群がってくる女達に苛々する。


 邪魔だ。近づいてくんじゃねえ。  

 殴られてえのか?


 長澤が機転を利かして、さっきまで見ていたロボット研究会の展示室に戻った。


 だが戻る前にあいつとはぐれたようだ。

 待つ奴と探す奴に別れて、探す奴らがそれぞれ出て行った。


 俺は椅子を一つ借りて、適当に座った。


 さっきまでの騒がしさが嘘みてえに静かだ。


「拓哉は探しに行かなくていいの?」


 蓮がスマホをいじりながらそういった。


「なんで俺がそんなめんどうなことしなきゃなんねえんだ」


 窓の外は在校生も部外者も、誰もが楽しそうに笑っている。


 まるで別世界みてえだな。


なんてらしくもねえことを考える。


「高槻さんは友達じゃないと?」

 

 椎葉が不思議そうな顔を俺に向ける。


「友達なんかじゃねえよ」


「じゃあなんで一緒におっと?友達じゃないとやったらこんなとこ来んやろ?お花見ん時も一緒におったし」

 

「ただの他人だ」


「そげんこつない!そげんな人とはこげんなとこ一緒におらん!」


 なまりが強すぎて何がいいてえのかわからねえよ。


「それに向井さんも笑っとった!」


 は?俺が笑ってた?


「高槻さん達と楽しそうに笑っとったんよ!」


 ……俺があいつらと楽しそうに笑ってた?


 目の前が赤く染まる。


何もかも俺の思うようにいってねえのに?


「楽しいわけねえだろが!」


 俺の怒声に椎葉が肩を大きく震わせた。


椎葉を庇うように自由が俺との間に立つ。


 その姿に一気に冷静になった。


 なんで俺はムキになってんだ?


「ちょっと拓哉。嫌なことがあったからって八つ当たりしてんじゃないわよ」


 蓮が椎葉に謝るが、俺はそれどころじゃない。


 普通にしか見えないあいつが笑ったくらいで俺はなぜ苛立った?


 どんな顔してようがどうでもいいだろう?


ああ、あの呑気なやつと一緒にされて腹がたったのか。


一生関わることのねえような地味で普通なやつと俺が同じとかありえねえだろ。


俺と違って、あいつはなにもしなくても普通に生きられるんだからな。


 蓮が何かいいだけな視線を向けてきたが、何もいわなかった。



 

 しばらく経って、あいつは自分でロボット研究会の展示室へ帰ってきた。

  

 おかげで楽しみにしていたらしい『大人気新人歌手の生ライブ』が始まる時間まで余裕がなくなり、全力で走ることになった。


 なんとか間に合ったが、なぜかモデルのアレンに蓮が無理やりライブへ参加させられていた。


 蓮は変なところで面倒見がいいから、はめられたんだろう。

 

 だが、蓮は一度やると決めた仕事は絶対にやり遂げる。


 曲に合わせて踊る蓮はまるでテレビで見るアイドルのようだ。


 ふと、あいつがどんな顔をしているのか、気になって横目で見てぞっとした。


 あいつは始まる前までは気持ち悪いほど楽しみにしていたくせに、今は人形のように無表情だった。

 

 それが好きな芸能人を見る顔か?


 まるで鏡の向こう側を見ているみてえな空虚な目じゃねえか。


 無表情だったのは数秒だけだった。


それからは幻のように他の客と同じように熱っぽい顔で蓮達を見つめていた。


 だが、その顔が忘れられない。


 普通なはずのこいつがどうしてそんな顔をしたのか、全くわからなかった。


高槻は無意識に色々やらかしてます。

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